ミュージックビデオやバーチャルYouTuber(VTuber)、ゲームなど、2Dイラストをシームレスに動かして立体的なアニメーションにする表現技術・Live2D。そんな様々なシーンで活用される技術を使ったオリジナル作品のクオリティを競うコンテスト「Live2D Creative Awards 2022」が開催された。
年に一度の祭典でグランプリを勝ち取ったのは、オーストラリアのクリエイター・Kuroama(クロアマ)さん。応募作品では新機能を効果的に活用し、表情豊かで一挙手一投足が魅力的なLive2Dモデルを披露した。Kuroamaさん制作のLive2Dモデル
前年の「Live2D Creative Awards 2021」に影響を受け本格的な制作をはじめたというKuroamaさんは、Live2Dのみならずイラストレーションや動画編集など、様々なクリエイティブに取り組むマルチな才覚の持ち主。
グランプリ受賞を記念して、新たなクリエイティブの最先端を征くKuroamaさんが見据えるシーンの未来や、Live2Dならではの表現の魅力についてうかがった。
取材・文:オグマフミヤ 編集:恩田雄多
Kuroama とても嬉しかったです。すごく忙しい時期だったんですが、もう作業が手につかないほどで、受賞のメールを見たときは部屋中を走り回りました(笑)。
──審査員からのコメントでは「様々な機能を利用してつくられている点に魅力を感じました」と評価されていましたね。
Kuroama 新機能を使いこなすのは難しいですが、新しい可能性を試すこともできます。まだ誰もやってないことに挑戦できますし、新しい機能を駆使しての制作はとても楽しかったです。
──グランプリを受賞された作品は、豊かな表情の変化がとてもチャーミングなキャラクターです。どのようなイメージで制作されましたか?
Kuroama ワイルドさとサイバーな雰囲気をミックスするようなイメージで制作しました。最近トレンドであるサイバーパンクなテイストもちょっと意識しています。
キャラクターデザインそのものは、イラストレーターとのコラボレーションで制作していて、僕の方ではLive2Dで表現したときに伝わりやすいように微調整しました。
アワードで評価していただいた、フードやマスクの着脱といったアイデアも加えています。 ──グランプリ賞品の中に「賞金50万円」がありますが、使い道は考えられていますか?
Kuroama すごい大金なので具体的な使い道は慎重に考えたいです。たとえば「Live2D Cubism」のサブスクリプションであれば20年以上は使えますから(笑)。貯金も考えつつ、今後の活動に役立てたいと思います。
──アワードへの参加を通じて印象に残ったことはありますか?
Kuroama 今回の私の応募作品は制作にとても時間がかかったので、もっともっと効率的に制作したいと思いました。興味深い映像作品もたくさんあったので、今後はそういった作品に使われていた技術や表現にも挑戦してみたいですね。
Kuroama 一番最初にLive2Dを触ったのは2018年頃です。でもその頃は、まだ英語のチュートリアルや情報が少なかったので、すぐ挫折してしまいました。でも一昨年の「Live2D Creative Awards 2021」の作品を見てとても刺激を受け、またやってみようと思ったんです。
そのときはもうたくさんチュートリアルが揃っていて、次に何をやればいいか迷うことはありませんでした。基本を学んだあとは、他のクリエイターの作品を見て参考にしましたし、質問をすればすぐに返してくれるとてもフレンドリーなDiscordサーバーがあったので、そこでの交流もとても助けになりましたね。
──Live2D制作において影響を受けたクリエイターや作品はありますか?
Kuroama Live2DクリエイターでLive2Dのチュートリアル動画なども制作しているBrian Tsuiさんにはとても影響を受けていますし、彼の動画から僕自身多くを学んでいます。
彼のYouTubeチャンネルには、過去に手掛けた作品も紹介されているんですが、それらもとても参考になりました。ほかにも乾物ひものさんやKira Omoriさんなど、様々なLive2Dクリエイターの方々を手本にしています。Brian TsuiさんによるLive2Dモデルのワークフロー
乾物ひものさんによるハウツー動画
──ちなみにLive2Dでの制作を始める前はどのような活動をされていたのでしょう?
Kuroama 現在僕は25歳ですが、元々アート系の学校に通っていて、そこでデザインなどを学んでいました。その後は、映画やCMなどの商業向けの映像制作をしていたんです。
でも、制作物に対して自分でコントロールできる領域が少なかったので、イラストレーターとしての仕事をはじめました。ゲーム用の1枚絵、いわゆるガチャイラストなどを制作していて、『リーグ・オブ・レジェンド(League of Legends)』のようなタイトルのイラストを描いたこともあります。
Live2Dを制作するようになったのはその後ですね。表現の自由度がとても高いので、それゆえの難しさもあるんですが、イラストや映像制作の経験で学んだスキルはとても役立っています。
──応募作品の動画でのプレゼンテーションも見事でした。そういった面でも前職での経験が役立っているのでしょうか?
Kuroama 映像の仕事をしていた頃は最初の5秒でのつかみが肝心だったので、どうすれば人の興味・関心を抱かせられるかについて研究していました。加えて、クライアントへの説明やプレゼンも担当していたので、それらの経験が役に立っている気がします。
近年はTwitchでの配信もしているので、アドリブの話術も身についたのかなとも思いますが、こうして褒めていただけるのはとても嬉しいです(笑)。
自分の生い立ちとして、母親がアーティスト(芸術家)、父親がエンジニアだったので、アートと技術を組み合わせるLive2Dクリエイターである自分のスタイルにも、影響を及ぼしているかもしれません。 ──広く創作に携わってきたKuroamaさんですが、特に好きなクリエイターはいらっしゃるのでしょうか?
Kuroama キム・ジョンギさん(※)やピーター・モールバッハーさん(※)など、挙げればキリがないほどに多くの、クリエイターの方々から影響を受けています。
※キム・ジョンギ:“世界一絵が上手い”といわれるイラストレーター/漫画家。2022年10月逝去。
※ピーター・モールバッハー:世界的なイラストレーター。『Magic: The Gathering』にもアートを提供している。
──自身へのインプットとして特別に意識してることはありますか?
Kuroama TwitterやYouTube、Twitchなどで他のクリエイターの作品を見るのはとても刺激になります。音楽からインスピレーションを受けることもあるので、制作中は必ず音楽を流しています。行き詰ってしまったときはハイキングをしてリフレッシュもしますよ。
Kuroama とても素晴らしいと思います。自分の姿を自分の思うようにコントロールできますし、様々なアイデアが活かせるので、いろんな表現が見れるのはすごく興味深いですね。
トラッキングして配信するソフトウェアもどんどん新しいものが出てきていますし、今後は顔の表情だけでなく、ハンドトラッキングを駆使した人たちが増えていくかもしれません。今よりもっと多様な表現が生まれるようになってくれたら嬉しいですね。
──Kuroamaさんの考えるLive2Dでの表現の魅力はどのような部分にありますか?
Kuroama Live2Dでの表現には物理的な制約もありませんし、シンプルでとても奥深い。アイデアがあれば自由に具現化できますし、つくりたいものをつくりたいようにつくれるのはなによりの魅力だと思います。
──Kuroamaさんがそうであったように、今回の「Live2D Creative Awards 2022」に刺激を受けてLive2Dをやってみようと思うクリエイターが出てくると思います。そんなこれから始める人たちに向けたアドバイスはありますか?
Kuroama まずは最初の作品を完成させてみてほしいです。初めての制作物をつくり切ることはとても難しいと思いますが、それさえできてしまえば、次からはスムーズにできると思うので、楽しみながらチャレンジしてほしいですね。 ──Live2Dクリエイターとして今後はどのような作品に関わっていきたいですか?
Kuroama 長期的な計画を立てても変更しなくてはいけなくなることが多いので、どちらかというと短期的な目標を達成しながら、結果的に自分の行きたい方向に進んでいけたらいいなと思っています。
今まではひとりで制作することが多かったので、今後はいろいろなクリエイターとコラボをはじめ、チームでも制作してみたいですね。動画やゲームなど、ジャンルにこだわらず様々なことに挑戦したいです。
年に一度の祭典でグランプリを勝ち取ったのは、オーストラリアのクリエイター・Kuroama(クロアマ)さん。応募作品では新機能を効果的に活用し、表情豊かで一挙手一投足が魅力的なLive2Dモデルを披露した。
グランプリ受賞を記念して、新たなクリエイティブの最先端を征くKuroamaさんが見据えるシーンの未来や、Live2Dならではの表現の魅力についてうかがった。
取材・文:オグマフミヤ 編集:恩田雄多
目次
最先端のLive2Dクリエイター・Kuroama
──「Live2D Creative Awards 2022」グランプリ受賞おめでとうございます! まずは受賞しての感想を教えてください。Kuroama とても嬉しかったです。すごく忙しい時期だったんですが、もう作業が手につかないほどで、受賞のメールを見たときは部屋中を走り回りました(笑)。
──審査員からのコメントでは「様々な機能を利用してつくられている点に魅力を感じました」と評価されていましたね。
Kuroama 新機能を使いこなすのは難しいですが、新しい可能性を試すこともできます。まだ誰もやってないことに挑戦できますし、新しい機能を駆使しての制作はとても楽しかったです。
──グランプリを受賞された作品は、豊かな表情の変化がとてもチャーミングなキャラクターです。どのようなイメージで制作されましたか?
Kuroama ワイルドさとサイバーな雰囲気をミックスするようなイメージで制作しました。最近トレンドであるサイバーパンクなテイストもちょっと意識しています。
キャラクターデザインそのものは、イラストレーターとのコラボレーションで制作していて、僕の方ではLive2Dで表現したときに伝わりやすいように微調整しました。
アワードで評価していただいた、フードやマスクの着脱といったアイデアも加えています。 ──グランプリ賞品の中に「賞金50万円」がありますが、使い道は考えられていますか?
Kuroama すごい大金なので具体的な使い道は慎重に考えたいです。たとえば「Live2D Cubism」のサブスクリプションであれば20年以上は使えますから(笑)。貯金も考えつつ、今後の活動に役立てたいと思います。
──アワードへの参加を通じて印象に残ったことはありますか?
Kuroama 今回の私の応募作品は制作にとても時間がかかったので、もっともっと効率的に制作したいと思いました。興味深い映像作品もたくさんあったので、今後はそういった作品に使われていた技術や表現にも挑戦してみたいですね。
「最初の5秒が肝心」Live2Dで活きる映像制作の経験
──ここからはKuroamaさんのパーソナルな面もうかがいたいです。Live2Dでの制作歴はどのくらいですか?Kuroama 一番最初にLive2Dを触ったのは2018年頃です。でもその頃は、まだ英語のチュートリアルや情報が少なかったので、すぐ挫折してしまいました。でも一昨年の「Live2D Creative Awards 2021」の作品を見てとても刺激を受け、またやってみようと思ったんです。
そのときはもうたくさんチュートリアルが揃っていて、次に何をやればいいか迷うことはありませんでした。基本を学んだあとは、他のクリエイターの作品を見て参考にしましたし、質問をすればすぐに返してくれるとてもフレンドリーなDiscordサーバーがあったので、そこでの交流もとても助けになりましたね。
──Live2D制作において影響を受けたクリエイターや作品はありますか?
Kuroama Live2DクリエイターでLive2Dのチュートリアル動画なども制作しているBrian Tsuiさんにはとても影響を受けていますし、彼の動画から僕自身多くを学んでいます。
彼のYouTubeチャンネルには、過去に手掛けた作品も紹介されているんですが、それらもとても参考になりました。ほかにも乾物ひものさんやKira Omoriさんなど、様々なLive2Dクリエイターの方々を手本にしています。
Kuroama 現在僕は25歳ですが、元々アート系の学校に通っていて、そこでデザインなどを学んでいました。その後は、映画やCMなどの商業向けの映像制作をしていたんです。
でも、制作物に対して自分でコントロールできる領域が少なかったので、イラストレーターとしての仕事をはじめました。ゲーム用の1枚絵、いわゆるガチャイラストなどを制作していて、『リーグ・オブ・レジェンド(League of Legends)』のようなタイトルのイラストを描いたこともあります。
Live2Dを制作するようになったのはその後ですね。表現の自由度がとても高いので、それゆえの難しさもあるんですが、イラストや映像制作の経験で学んだスキルはとても役立っています。
──応募作品の動画でのプレゼンテーションも見事でした。そういった面でも前職での経験が役立っているのでしょうか?
Kuroama 映像の仕事をしていた頃は最初の5秒でのつかみが肝心だったので、どうすれば人の興味・関心を抱かせられるかについて研究していました。加えて、クライアントへの説明やプレゼンも担当していたので、それらの経験が役に立っている気がします。
近年はTwitchでの配信もしているので、アドリブの話術も身についたのかなとも思いますが、こうして褒めていただけるのはとても嬉しいです(笑)。
自分の生い立ちとして、母親がアーティスト(芸術家)、父親がエンジニアだったので、アートと技術を組み合わせるLive2Dクリエイターである自分のスタイルにも、影響を及ぼしているかもしれません。 ──広く創作に携わってきたKuroamaさんですが、特に好きなクリエイターはいらっしゃるのでしょうか?
Kuroama キム・ジョンギさん(※)やピーター・モールバッハーさん(※)など、挙げればキリがないほどに多くの、クリエイターの方々から影響を受けています。
※キム・ジョンギ:“世界一絵が上手い”といわれるイラストレーター/漫画家。2022年10月逝去。
※ピーター・モールバッハー:世界的なイラストレーター。『Magic: The Gathering』にもアートを提供している。
──自身へのインプットとして特別に意識してることはありますか?
Kuroama TwitterやYouTube、Twitchなどで他のクリエイターの作品を見るのはとても刺激になります。音楽からインスピレーションを受けることもあるので、制作中は必ず音楽を流しています。行き詰ってしまったときはハイキングをしてリフレッシュもしますよ。
興味深いVTuberシーン「自分の姿を思うようにコントロールできる」
──Live2DはVTuberシーンでの活用も印象的です。大きなムーブメントとなっているVTuberシーンについての印象を教えてください。Kuroama とても素晴らしいと思います。自分の姿を自分の思うようにコントロールできますし、様々なアイデアが活かせるので、いろんな表現が見れるのはすごく興味深いですね。
トラッキングして配信するソフトウェアもどんどん新しいものが出てきていますし、今後は顔の表情だけでなく、ハンドトラッキングを駆使した人たちが増えていくかもしれません。今よりもっと多様な表現が生まれるようになってくれたら嬉しいですね。
──Kuroamaさんの考えるLive2Dでの表現の魅力はどのような部分にありますか?
Kuroama Live2Dでの表現には物理的な制約もありませんし、シンプルでとても奥深い。アイデアがあれば自由に具現化できますし、つくりたいものをつくりたいようにつくれるのはなによりの魅力だと思います。
──Kuroamaさんがそうであったように、今回の「Live2D Creative Awards 2022」に刺激を受けてLive2Dをやってみようと思うクリエイターが出てくると思います。そんなこれから始める人たちに向けたアドバイスはありますか?
Kuroama まずは最初の作品を完成させてみてほしいです。初めての制作物をつくり切ることはとても難しいと思いますが、それさえできてしまえば、次からはスムーズにできると思うので、楽しみながらチャレンジしてほしいですね。 ──Live2Dクリエイターとして今後はどのような作品に関わっていきたいですか?
Kuroama 長期的な計画を立てても変更しなくてはいけなくなることが多いので、どちらかというと短期的な目標を達成しながら、結果的に自分の行きたい方向に進んでいけたらいいなと思っています。
今まではひとりで制作することが多かったので、今後はいろいろなクリエイターとコラボをはじめ、チームでも制作してみたいですね。動画やゲームなど、ジャンルにこだわらず様々なことに挑戦したいです。
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