スマホ発のバーチャルライブ配信アプリの魅力を深堀りする特集「IRIAM」。

第1回では、取締役・事業部長の真辺昂さんと、マーケティング部の部長をつとめる村山秀幸さんが登場。VTuberでもメタバースでもない「IRIAM」の魅力と、それを発信する工夫について語ってもらいました。

第2回では、真辺昂さんとVRSNSを拠点にメタバース文化の魅力を発信するバーチャル美少女ねむさんが邂逅。

「IRIAM」(ライブ配信)とVRChatをはじめとするVRSNS(メタバース)は両方、バーチャルな空間で行われるコミュニケーションを楽しめる一方で、その設計思想もコミュニティの肌感もまったく異なります。

2つのバーチャル空間の共通点と差異に触れながら、「IRIAM」というサービスの設計思想をはじめ、バーチャルなコミュニケーションが抱える課題や必要なルールづくりについて、語り尽くしてもらいました。

取材/文:ゆがみん 編集:小林優介 写真:稲垣謙一

リアルとバーチャルでは、ルールが違う

──「IRIAM」とメタバースについて考えるためにも、まずは現実世界ではなくバーチャルな空間で行われるコミュニケーションについてお聞きしたいと思います。リアルとバーチャルは対立する概念のように言われることも多いですが、お二人はどう考えていますか?

真辺昂(以下、真辺) 今ってもうリアルかバーチャルかというような対立軸は薄れていて、どのアカウントにリアリティを感じるかという差でしかないのかなと感じます。

ただ、リアルとバーチャルでは、そのアカウントに対する「制約」が大きく異なりますよね

株式会社IRIAMで取締役/事業部長をつとめる真辺 昂(まなべ こう)さん

真辺 例えば、リアルな身体には、肉体・重力などの物理的な制約や、見た目などの社会的な見え方についての制約がありますし、多くのSNSのアカウントにおいては非同期なコミュニケーションが主流で、フォロワー数などの数字で見られてしまいやすい……というように。

初期のTwitter(現X)が投稿に設定していた140文字という制約が人々の創造性を引き出していたように、それぞれの制約だからこその良さがあると思います。

──ねむさんは、リアルとバーチャルの関係をどう考えられていますか?

バーチャル美少女ねむ(以下、ねむ) 「メタバース」って「メタ(meta)」は超越、「バース(universe)」は宇宙という意味です。私は「複数の現実を自在に切り替える」というのが、メタバースの特徴だと思っています。

メタバース文化エバンジェリストとして活動する、バーチャル美少女ねむさん。当日は、VRプラットフォーム「Resonite」の中からZoomを通じて対談に参加してくれた。

ねむ かつては一つの自分、一つの世界しか選ぶことができなかった。それが今はいろいろな世界に別々の自分を持てるようになって、自由に切り替えられる。

その中では、真辺さんの言う制約も切り替えることができるんですよ。なので、私もリアルとバーチャルは対立するようなものではなく、切り替えられる世界の一つひとつという認識です。

私はメタバースの中で5000時間過ごしているんですが、VR空間での生活が長くなってくると、現実って制約が多くてめちゃくちゃ不便なんです。メタバースの中なら空も飛べるし、ワープだってできるのに。

でも逆に、たまに現実で歩いて移動すると“目的地に行くために時間を消費する不便さ”やその過程がむしろ愛おしくもなる。5000時間過ごしてみて、改めて現実は現実で大事だと思うようになりましたね。

話しながら、その体勢のままでワールドを飛び回るねむさん

「IRIAM」が人型のアバターを重視するのは、“しっくり感”のため

──コミュニケーションと制約の話が出ましたが、「IRIAM」では、サービスを設計するにあたって、どのような制約を設けているのでしょうか?

真辺 「IRIAM」では、コミュニケーションの価値をより感じられるデザインを意識しています。

コミュニケーションの大敵って「距離感」なんです。例えば今も、僕が会議室にいてねむさんは仮想空間にいますが、これって色んな意味で距離感がありますよね。

もし同じVR空間にいたら、ねむさんとの精神的な距離ってぐっと縮まると思うんですよ。VR空間なら、実際に手を繋ぎあったりとかもできますしね。

見えている相手に目を合わせようとすると、カメラからは目線が外れてしまう。そうした細かな違いが、距離を感じさせてしまう

真辺 だから「IRIAM」ではなるべく距離感をなくすことを意識しています。特にこだわって設計しているのが「リアルタイム性」で、IRIAMの通信にはラグが感じられません。

あとは、ライバーさんの身体と画面を、親密な距離に留めることも意識しています。例えば、メタバースっぽく、広い空間があって好き勝手に歩けるみたいな体験はできません。

その点、VRSNSはアバターの自由度もワールドの自由度も、制約が取り払われ過ぎていてすごいなと思います(笑)。そういう自由を得たときに、人はどういうコミュニケーションをとるようになるんですか?

ねむ VRSNSでは「なんでバーチャル空間でも人間でいなければならないんだ」という理由で、犬として生活している人もいるくらいです(笑)。実際に四足歩行をしていたりして、本気で犬としてコミュニケーションを取っている。

とはいえ、そういう人が多数派というわけではないです。

私は、人型が多数派なのはみんながコミュニケーションをしにバーチャル空間に来ているからだと思っています。人間にとっては人間の姿が一番しっくりくるし、コミュニケーションがしやすいんですよ。

VRSNSでは主観視点だと自分の腕や体が見えるし、それが没入感や自分がそこにいるという感覚(リアリティ)を生んでいる。自由であっても人型を選ぶ人が多いのは、この姿を我々の魂が求めているんじゃないかと思います。

真辺 自由度があってもそうなるんですね。実は「IRIAM」でも、使えるのは人型の「日本的なキャラクター表現」のみという制約にしているんです。

ほんとは映画『サマーウォーズ』のように、人型以外の多様性を取り入れたい気持ちはあるんですが……今はまだ見送ってます。

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プロフィール

真辺昂

真辺昂

株式会社IRIAM 取締役/事業部長

早稲田大学基幹理工学部数学科中退。しばらくのフリーター期間を経て、編集者としてwebメディアの編集やIPコンテンツのメディアミックス、ゲームベンチャーの立ち上げなどを経験。2018年には、立ち上げメンバーの一人として『IRIAM』に参画し、DeNAのグループ入り後も引き続きプロダクトオーナーを務める。

バーチャル美少女ねむ

バーチャル美少女ねむ

VTuber / 作家 / メタバース文化エバンジェリスト

メタバース原住民にしてメタバース文化エバンジェリスト。「バーチャルでなりたい自分になる」をテーマに2017年から美少女アイドルとして活動している自称・世界最古の個人系VTuber。VTuberを始める方法をいち早く公開し、その後のブームに貢献。2020年にはNHKのテレビ番組に出演し、お茶の間に「バ美肉(バーチャル美少女受肉)」の衝撃を届けた。ボイスチェンジャーの利用を公言しているにも関わらずオリジナル曲『ココロコスプレ』で歌手デビュー。作家としても活動し、自筆小説『仮想美少女シンギュラリティ』はAmazon売れ筋ランキング「小説・文芸」部門1位を達成。フランス日刊紙「リベラシオン」・朝日新聞・日本経済新聞など掲載歴多数。VRの未来を届けるHTC公式の初代「VIVEアンバサダー」にも任命されている。

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