2020年8月。“モテたい”を原動力に活動を続けてきたピコピコ系ミュージシャン・ヒゲドライバーさんの結婚発表にいてもたってもいられず、取材させていただいたあの日から5年。ヒゲドライバーさんは2025年、活動20周年を迎えられました。

声優の小澤亜李さんとのご結婚、そして第一子のご出産。この5年で、ヒゲドライバーさんの生活は目まぐるしく変化している……ように感じるが、実際のところどうなのか? ヒゲドライバーさんも小澤さんも精力的に活動されており「ヒゲ家はいったいどうなってるんだ⁉︎」という疑念が沸き始めた頃──20周年インタビューの場が実現。

今回はなんとスペシャルゲストとして小澤亜李さんも登場。お二人の対談は、KAI-YOUとしてはご結婚以前の2017年以来。そして、ラジオでのゲスト出演はあるものの、夫婦対談は今回が初めての試み

2人の現在のライフスタイルや“ヒゲドライバーの妻”だからこそ見えるヒゲ像、そしてご自身のお子様に託すことになる、世界の未来についても語り合ってくれました。

取材・文:ミクニシオリ 写真:山口雄太郎 編集:新見直

目次

結婚と出産。ライフステージの変化がヒゲドライバーにもたらしたもの

パパになったヒゲドライバーさん

──改めましてヒゲさん、20周年おめでとうございます!

ヒゲドライバー ありがとうございます。毎回言っている気がするんですけど、5年ってあっという間ですよね。2020年以降はライフステージの変化もあったし、いつの間にか子どもも今年で3歳ですよ。

──前回のインタビューでは結婚直後ということで、それが「ヒゲドライバー」に及ぼしたことを軸に語っていただきましたが、今回はやはりお子さんの誕生が「ヒゲドライバー」に及ぼした変化がテーマになるでしょうか。

ヒゲドライバー そうですね、子どもの存在はかなり大きいと思います。印象的だったのは、ちょうど子どもが生まれるくらいのタイミングで『デリシャスパーティ♡プリキュア』のお仕事をいただいたことでしたね。自分のつくった曲が、子どもたちに聴かれるんだっていうのを強く意識しましたね。

ヒゲドライバー作編曲の「デリシャスパーティ♡プリキュア」エンディング主題歌

──2024年には『わんだふるぷりきゅあ!』の主題歌も担当されてますよね。実際、曲づくりにおいても、これまでとは違った手順や工夫などがあったのでしょうか。

ヒゲドライバー そもそも子どもが生まれてからは、自宅のリビングで恒常的にお子様ソングが流れるようになったわけですよ。子どもと一緒に食事しながら、自分の耳にも子ども向け楽曲の編成やら歌詞やらが耳に飛び込んできて、正直「めっちゃいい曲だしいいこと言ってるじゃん」なんて思うようになりまして。

『おかあさんといっしょ』のような教育番組で流れる曲を改めて聴くと、子どもが本能的に歌えて踊れる曲調で、しかも歌詞にも愛情が詰まっていたりするんです。

──大人になって『アンパンマンのマーチ』を聴いてみると、その深さに感動しちゃうみたいな話ですよね。

ヒゲドライバー そうなんですよ。プリキュアの楽曲に向き合ったこと、子ども向けの楽曲と触れ合ったことは、自分にとっていい経験でしたね。自分自身も昔からキャッチーな楽曲づくりを意識してきたし、万人に聴いてもらう音楽のありようを再考できたのは大きかったです。

──人生のステージと、音楽家としての成長のタイミングもぴったり重なったと。

ヒゲドライバー タイミングはよかったなと思いますが、どちらかというと子どもに成長させてもらっているんだと思います。今なんて曲ができたら、世に出す前に自分の子どもに聴かせたりもします。

──お子さんが一人目のリスナーになってくれている。

ヒゲドライバー 子どもって正直だから、テンションがブチ上がって踊り出すこともあれば、めちゃめちゃ無反応なこともある。子どもの持つセンサーは僕ら以上に本能的で感情的だと思うし、そこに引っかかるかどうかは一つの大事な指標なんじゃないかと思っています。

ヒゲドライバー作曲の「わんだふるぷりきゅあ!」エンディング主題歌

──「いいメロディーとは何か?」というのは、ヒゲさんがずっと追求されてきた一つの命題でもあると思うのですが、お子さんの存在によって向き合い方も変わりましたか?

ヒゲドライバー 子どもという新しい判断材料のおかげで、研究がグッと前に進んだ感じはあります。この5年で言うと、男性アイドル楽曲のお仕事も増えて、メロディーだけじゃなくて、作詞への向き合い方にも変化があったかも。

自分の人生をひっさげて、日本の王道アイドルに楽曲を提供する

──男性アイドルグループでいえば、これまでも超特急さんの楽曲をご担当されていたと思いますが、2021年からはSUPER EIGHTさんの楽曲も手がけるようになっていますし、Aぇ! groupへの提供曲も2024年のCDデビュー時に新録版が収録もされていました。よりヒゲドライバーとしてのフィールドが広がっているように感じます。

ヒゲドライバー Aぇ! groupSUPER EIGHTの楽曲をやった時には、これまでとも違う反響がありました。楽曲の届き方、広がり方がすさまじく、彼らはJ-POPの王道ど真ん中を行くアーティストでもありますから、プリキュアをやった時ともまた違う向き合い方をする必要がありました。

ヒゲドライバー作詞作曲のAぇ! group「Firebird」

──作詞のテンションや方法も違うものですか?

ヒゲドライバー もう、全然違いますよ。僕がやってきた曲って、アニメ曲も含めて、どちらかと言えば男性向けあるいは男女向けだったし。そういう意味では今まで以上に女性が多く聴いてくれる楽曲であることを意識しました。世の中の女性がどんな曲を聴きたいのか、どんな歌詞に震えるんだろうかという目線で、かなり勉強しました。

──それって実際、どうやって勉強するんですか?

ヒゲドライバー 女性のリスナーが多い男性アイドルの楽曲を聴いていたら、すごくキザなセリフが多いことに気づいたんですよね。こんなこと日常会話で言ったら絶対クサいって思われるだろうなというような歌詞も、彼らの歌声に乗せてみると、意外とちょうどいい塩梅になる。

──楽曲を聴く側のニーズとしても、男性アイドルならではという部分もあるかもしれないですね。

ヒゲドライバー 女性は、心のどこかで王子様を求めているという側面もあるのかもしれません。推しに対しては手の届かないような、少し非現実的な理想を持っていて、身近な存在の異性に日常的にかけてほしい言葉とは違うものを欲しているのかもなあ、と。

ヒゲドライバー作詞作曲のSUPER EIGHT「サタデーソング」

──今は距離感も変わりつつあるとも思いますが、特にSTARTO所属のアーティストはいわゆる握手会のようなものもほぼなくて、「手の届かない存在」であってほしいという感覚は強くありそうですよね。

ヒゲドライバー 遠い存在だからこそ、憧れのアイドルであり続けてほしいという願いがあるのかなと思います。だから歌詞も、自分の日常的な感覚の延長では書かないし、やりすぎかなって思うくらいの王子様感を上乗せしました。

──今までヒゲさんの中にはあんまりなかった感性ですか?

ヒゲドライバー 自分の中には素材がないから、架空のキザなホストをイメージして、その人が女性にかける言葉ってどんなだろう……とか想像してみたり。

──それって、かつての福岡でのホスト時代の経験※も活きてるってことなんですか!?

ヒゲドライバー いや〜〜〜それが、別に活きてないんですよ(笑)! 結局、僕はクサいセリフを言えるタイプじゃなかったから、ホスト時代もそんなことはできていなかったです。だけど確かに、あの当時周囲にいた、売上をあげているホスト仲間たちを思い浮かべながら作詞することもありますね。

かつてヒゲドライバーさんは、初めてちゃんと付き合った彼女に「いい人すぎる」という理由でフラれた反動で、「男らしさとは何たるか」を学ぶために夜の世界に飛び込んだ過去が。詳しくは過去のインタビューを参照

──強引な良い方をすれば、ヒゲさんが経験してきた一つひとつが、ここに来て音楽に昇華されていっていると。

ヒゲドライバー そう、なのかなあ(笑)? 売れている=モテるホストには高嶺の花というか、簡単には落とせない雰囲気があって。あの時関わった人たちが、自分の中の「キザな男像」の礎になっている部分はあるかもしれません。

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