2017年のVTuber黎明期に誕生したバーチャル配信アプリ「IRIAM」。

1枚のイラストをもとにアプリ側が自動でモデルを生成することで、初期の参入コストを下げ、誰でも自由に、好きな姿で配信することができます。

サービス開始から7年弱を経て、「IRIAM」は新しい技術に関心のあるコアな層が集うだけでなく、若い世代が寝ながらバイトの話をするなど「日常の居場所」という側面も持つように。タレントを発掘し育てる大手VTuber事務所のような形ではなく、誰でも自由に楽しめる場を目指し、運営を続けています。

今回は、リリース当初から「IRIAM」に携わり、現在は取締役と事業部長を兼任する真辺昂さんと、マーケティング部の部長をつとめる村山秀幸さんの2人による対談を実施。

「IRIAM」サービスの原点から「コミュニティの支援者」というビジョン、「コミックマーケット」への出展まで、開発/マーケティング双方の視点から語り尽くしてもらいました。

取材/文:ゆがみん 編集:小林優介 写真:宇佐美亮

きっかけは「ミライアカリ」──未来を感じたクリスマスの夜

──「IRIAM」のサービス開始は2017年12月、まさにVTuberブームの夜明けのタイミングでした。当時のVTuberの盛り上がりはどのように見ていましたか?

真辺昂(以下、真辺) 「IRIAM」をリリースする前、我々はバーチャルYouTuber四天王と呼ばれたVTuberの1人・ミライアカリさんをプロデュースする会社でした。

その中でも印象深かったのが2017年のクリスマス配信──配信自体の盛り上がりもすごかったんですが、想像を超える額のスーパーチャットをいただきまして。Googleからも「何か異常が起きているかも」って連絡が来るぐらいだったんです。

株式会社IRIAMの取締役と事業部長を兼任する真辺 昂(まなべ こう)さん

真辺 その盛り上がりは、ミライアカリさんのタレント性だけに依存したものではなく、「キャラクターであること」によって引き出されているものに見えました。

それを見て「一部の才能を持つ人だけでなく、普通の人でもキャラになることで自分の可能性を解放できるようになる」という確信を持って、「IRIAM」が構想されていきました。

──キャラクターであることのどこに、生身の人間よりも可能性を感じたのでしょうか?

真辺 人間は人間に対して、必ずしも好意的な感情だけを持つわけではないし、例えば現実の人間に「可愛い」って言うのはちょっとハードルが高いじゃないですか。でも、キャラクターに「可愛い」って言うのは変なことではないし、もっと簡単な気がしませんか?

現実でぶりっ子メイドキャラとして振る舞っている人がいたとしたら、見る人によっては反感を買うかもしれない。でも、それがキャラクターなら、そういう“キャラ”として受け入れられやすい。

その環境を提供できたら、誰でも自由で解き放たれたコミュニケーションができるようになるし、その分価値が生まれやすくなると思ったんです。

そういう経緯もあって、今の「IRIAM」の根幹になってもいる、タレントとしてのVTuber/キャラクターIPではなく、多くの普通の人たちの可能性を引き出すというビジョンが生まれました。

村山秀幸(以下、村山) 「IRIAM」は今、「自分でいるより自由になれる」というキャッチコピーを採用しています。

「IRIAM」のマーケティング部部長をつとめる村山秀幸さん

村山 視聴者が「かわいい」と言えるだけでなく、キャラクターを通せば、配信する側も「自分はかわいい」と自然に思えるようになる。

ライバーもリスナーも、ある意味で同じキャラクターのファンとして、自分のなりたい/見たいキャラクター像を描いていく。それって理想の姿ですよね。

「面白い人じゃなきゃ成立しない」タレントビジネスは目指さない

──村山さんは2024年から「IRIAM」に参加されたと聞いています。「IRIAM」のどのような点に、魅力を感じたのでしょうか?

村山 サービスが開始した当時、僕は別の仕事をしていて「IRIAM」の存在自体を知りませんでした。ライブ配信という形態自体、実はあまり馴染みもなかった。なので、チームに加わる直前に「IRIAM」を含めて色々なアプリを触ってみまして。

その中で「IRIAM」が圧倒的に優れていると感じたのが、配信者が本当に楽しそうに喋っているという点だったんです。「年齢や外見を脱ぎ捨てた世界って自由なんだなぁ」と率直に感じたのを覚えています。

これは僕の持論なんですが、容姿に恵まれてる人も、そうでない人も、外見を理由に大変な思いをすることがたくさんあると思うんです。どんな外見でも不自由がある。そのしがらみを脱ぎ捨て、自分が好きな見た目でリアルタイムで喋って楽しめる。そんな理想を実現しているサービスだというのが、当時「IRIAM」に感じた第一印象でしたね。

──ただ話すだけでなく「リアルタイム性」が高いことは重要な要素なのでしょうか?

村山 普通の配信だと、ライバーさんが何かを話してからリスナーさんがリアクションするまでに時間差(ラグ)があります。その間を埋めるためには企画や台本、実況する対象としてのゲームなどが必要になってきますし、準備も大変です。

その点、「IRIAM」ではライバーさん側の発信とリスナーさんのリアクションにラグがほとんど生まれないようになっています。例えば、リスナーさんが配信に来ると「○○さんが入室しました」とアナウンステキストが流れます。

「IRIAM」では、コメントやギフトを含めて、ユーザーからのリアクション手段が豊富にある。

村山 それにライバーさんが反応すると、リスナーさんからもすぐに返答があって、そこから自然に会話が繋がっていく。

好きな見た目で、思いつくままに会話が転がる。まさに僕らが目指す“自由なコミュニケーション”がそこにありました。

───「ラグのなさ」はIRIAMの代名詞ですよね。

真辺 リアルの会話って、レスポンスが0.6 秒遅れるだけでも違和感があるんです。

だからこそ、配信でも自由なコミュニケーションを追求するためには、即時のレスポンスを実現したかった。ライバーはかわいい存在として話し、リスナーはかわいい存在に話しかけられる──そんなラグのない「コミュニケーションそのもの」を価値の中心にすることにこだわっています。

どうしてもタレントコンテンツになると、コミュニケーションよりもコンテンツの価値やパフォーマンスが指標になってしまう。「面白い人」じゃないと成立しないんですよ。

「IRIAM」が目指すのは、あくまで誰でも自由に配信できる場所

真辺 我々は芸能事務所でもないですし、キャラとコミュニケーションすること自体の価値を前提としたサービスを設計しています。

例えばInstagramやXだと、自分が有名人でもなければ、何か投稿しても全然レスがつかないなんて当たり前じゃないですか。YouTubeの有名人のライブでも基本的にはコメントへのレスはもらえません。

でも「IRIAM」に入ってコメントすると人間的なリアクションが100%もらえます。密で確実に、すぐレスポンスが来ることは、既存のSNSにはない強みだと思っています。

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プロフィール

真辺昂

真辺昂

株式会社IRIAM 取締役/事業部長

早稲田大学基幹理工学部数学科中退。しばらくのフリーター期間を経て、編集者としてwebメディアの編集やIPコンテンツのメディアミックス、ゲームベンチャーの立ち上げなどを経験。2018年には、立ち上げメンバーの一人として『IRIAM』に参画し、DeNAのグループ入り後も引き続きプロダクトオーナーを務める。

村山秀幸

村山秀幸

株式会社IRIAM マーケティング部部長

TOKYO2020招致やモンスターストライク等、国民的プロジェクトのプロモーションに携わり、PONOS・ドリコムでは全社マーケティング責任者として「にゃんこ大戦争」「Wizardry Variants Daphne」などを推進。2024年よりIRIAMにジョイン。

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