アメリカで感じたVTuber文化の違い……夜はパーティーで大盛り上がり?
──この夏はアメリカのVTuberイベント「OffKai Expo」にも出展していましたね。そちらも海外のコミュニティを意識して参加されたのでしょうか?
真辺 そうですね。アメリカでもとにかく現地コミュニティの支援を重視していました。
アメリカのリアルイベントって、参加者が交流を重視しているので、昼のブース出展は割と流していて(笑)。友達と会ったり、夜のパーティーに参加したくて来ていることが多いんです。
日本から参加する企業はそれを知らずに夜はホテルに籠もってしまうので、現地のコミュニティとの温度感のズレが生まれていたんですよ。
真辺 「IRIAM」のUSチームは現地コミュニティの解像度を持つことに徹底的にこだわっているので、「むしろそういう場を支援した方が喜ばれるんじゃないか」というアイデアが出たんです。
そこで実際に夜のパーティーやライブイベントなど合計37箇所を支援しました。パーティ会場で、直接日本酒と「めぐりズム」を差し入れたり(笑)。
現地メディアから「採算度外視」とか「ナンバーワンの企業」と言われるくらい反響も大きかったんですが、やはりコミケの経験で、「喜んでもらいたい」という我々の姿勢は伝わるんだという手応えを持てていたのが大きかったですね。
「OffKai Expo」参加者にめぐりズムと日本酒を差し入れた「IRIAM」USチーム
──実際に交流していて、日本のVTuberコミュニティと違う点はありましたか?
真辺 身バレに対するセンシティブさは、日本に比べてUSのVTuberさんはおおらかなところがあります。身バレを気にせず、気軽にリアルでファンと交流している方も多くいらっしゃるんですよね。
あとは、キャラを知っていたら本人が判別できるくらい、その両者が似ている人は多めかもしれません。もちろん人によりますが、日本に比べて、いま既にある自分の個性をさらに表現するものとしてキャラ表現がある印象です。
コミュニティから掲示板まで、海外のVTuberコミュニティを徹底してリサーチしてからイベントに臨んだという真辺さん
村山 海外進出の第一歩としてアメリカを選んだのは、我々にとっても大きな挑戦です。
アメリカ現地でも日本のコンテンツは一定の人気があるとはいえ、すでに成立している巨大な文化圏もある。やはり新規参入は難しいんです。しかも、VTuberや配信活動に関して「ここを押さえればOK」という代表的なメディアがなく、コミュニティも分散している。
丁寧にコミュニティとの距離を近づけ、長期的にサービスを育てていくしかないと覚悟しています。
それでも、2024年11月のUS版リリースから順調にユーザー数を伸ばせているのは、真辺さんたちがコミュニティを徹底的にリサーチしている賜物だと思います。
東海オンエア・てつやも唸った「IRIAM」の新しい体験
──最近では東海オンエアのてつやさんを起用してのコラボレーションも印象的でした。これまではVTuberとのコラボが多かったように思いますが、どのような理由で起用されたのでしょうか?
村山 実写の顔を出している方が「IRIAM」で配信するのは初だったので、社内でも議論がありました。
それでもてつやさんにお願いしたのは、「日本のトップ動画クリエイター・てつやさんでもこんな体験したことないでしょ!」っていうのを知ってほしかったからなんです。
動画でも配信でも、ゲーム実況のように話題やテーマがないと喋り続けることって難しい。でもリアルタイムでレスポンスがある「IRIAM」ならそれができるんです。
村山 結果として様々な反響があったんですが、何よりてつやさんに面白がっていただけて良かったです。コメントもギフトも、もうとんでもない量が来て(笑)。
実際に体験して、てつやさんからも「これは新しい体験だ」とおっしゃっていただけました。今まさに別のプラットフォームで活動している人にも、「IRIAM」は新しい体験として楽しんでいただけるんだと、手応えを感じましたね。
VTuberでも、ストリーマーでも、メタバースでもない「IRIAM」という概念
──最後に、今は配信やVTuberシーンも上位層が固定化してきたような状況があるとおもいます。そんな中で、「IRIAM」の今後の展望を教えてください。
村山 「スマホゲームってどんなもの?」と聞かれたら、3行で説明できるし、みんなの中でもある程度の共通認識があるじゃないですか。
「IRIAM」はまだ、そうやって簡潔に説明することができません。「VTuberみたいなもの」「ライブ配信みたいなもの」「メタバースみたいなもの」と言うことはできるけど、実際にはそのどれとも同じではない。
まだまだ「IRIAM」が目指しているビジョンや概念が、言語化されていない。
「IRIAM」の価値観と、みなさんがイメージするVTuberやライブ配信との差分を、きちんと表現し伝えていきたい。「自分でいるより自由になれる」ことの価値を、着実に広げていきたいですね。
真辺 現在、ユーザー層はとても若くなっていますし、これからもライブ配信やキャラクター文化を楽しむ人はどんどん増えていく。その地殻変動がゆっくり起きていると思います。
そうした方たちを対象に、キャラクターを通じたポジティブなコミュニケーションを広げていきたいですね。
「IRIAM」というサービスを下支えする2人が、どう考えてサービスを運営しているのか、余すところなく語っていただいた
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