ディズニー映画やそのキャラクターをモチーフにした新作トレーディングカードゲーム(TCG)『ディズニー・ロルカナ・トレーディングカードゲーム』(『ロルカナ』『ディズニーロルカナ』)が、1月25日、ついに日本でも発売される。
第1弾のセット名は『THE FIRST CHAPTER 物語のはじまり』──まさにここから、ディズニーキャラクターたちによる、新たな物語が展開されていく。
『ディズニー・ロルカナ』第1弾セット『THE FIRST CHAPTER 物語のはじまり』製品たち
すでにブームとなって久しいTCGという“遊び”。
特に2024年は、毎月のように新しいタイトルが登場した。かつては一部の好事家によるマニアックな趣味という印象も強かったが、活況が続き、市民権を大きく得ることになった。そんな中でリリースされる『ロルカナ』はすでに北米やヨーロッパを中心に人気を集めるビッグタイトルだ。
カードゲームとしての奥深さと戦略性を備えながら、世界中で愛されるディズニーキャラクターたちが織りなす魅力的な世界観を持つ本作。
その日本での展開を担うのは『デュエル・マスターズ』や『WIXOSS(ウィクロス)』などの販売でも知られるタカラトミー。そのタカラトミーにて、日本へのローカライズ/開発を統括する和田寛也さんと、プロデューサーとしてマーケティングや展開に注力する富田逸人さんに話を聞いた。
左:和田寛也さん 右:富田逸人さん
数あるTCGの中で、『ロルカナ』はどんな魅力を持ったカードゲームなのか? 日本展開では何を目指すのか?
取材/執筆:太田知也 編集:米村智水 写真:寺内暁
目次
ディズニーキャラクターとカードゲーム文化の幸福な出会い
──今回の取材も兼ねて、『ロルカナ』遊ばせていただきました!
和田/富田 ありがとうございます! どうでしたか?
──とても面白かったです。『ロルカナ』の魅力はキャラクターIPとカードゲーム文化の交わるところにあると思いました。少しプレイしただけでも、TCGとしての奥深さや戦略性の高さはすぐにわかります。それに、世界的な広がりのあるディズニー作品がモチーフになっているのもあって、ディズニーのキャラクターでデッキがつくれるだけでも嬉しい!という人たちもたくさんいそうです。
和田 ありがとうございます。まさにフレーバー(世界観や物語)とゲーム性の一致が、『ロルカナ』の醍醐味なんです。
このゲームでは各プレイヤーは魔法使いである「イルミニア」となって、「グリマー」という「キャラクター」や「アイテム」を呼び出していきます。もう少し深堀りしていくと、「キャラクター」カードには大きく分けて3種類あるんです。
──それぞれのカードタイプについて教えてください。
和田 まず「ストーリーボーン」というキャラクターは、原作となる映画作品からそのまま飛び出してきたような描かれ方をしています。劇中の衣装をそのまま着ていたり、カードに書かれているフレーバーテキストも劇中のセリフを引用していたりします。
次に「ドリームボーン」はカードゲームである『ロルカナ』独自の設定が反映されているもので、例えば海外ですでに発売している《ANNA ― True-Hearted》は『アナと雪の女王』の主人公・アナが騎士の姿になったカードです。これは原作にはない姿ですね。
最後の「フラッドボーン」は、『ロルカナ』の世界観とも関わっています。
魔法のインクが暴走して、洪水(フラッド)が発生したというストーリーが展開されるんですね。『ロルカナ』の世界が水浸し──というよりインク浸し──になってしまい、グリマーたちがその氾濫したインクに触れることで化学反応のようなものを起こして「変身」してしまうというのが、「フラッドボーン」の物語背景です。
異なる「ボーン」によって同じキャラクターでも様々な姿が楽しめる!
──ディズニー映画をモチーフとしながらも、『ロルカナ』独自の物語や設定にもワクワクさせられます。「変身」もゲーム内のキーワードのひとつでしたよね。
和田 そうですね。「フラッドボーン」のキャラクターは、特定のキャラクターのうえに重ねて「変身」できるという能力を持っています。
通常であれば〈5〉コストや〈7〉コストといった重ためのカードとなるところが、2枚分のキャラクターを用いることで、通常のコストの支払いよりも軽くなって場に出ることができるんですね。
例えば、『リロ&スティッチ』に登場するキャラクターである《スティッチ ― あたしの犬》は、《スティッチ ― ロックスター》に変身できちゃいます! 通常の姿のスティッチが、ギターを持った『ロルカナ』独自のスティッチ(「フラッドボーン」キャラクター)になることができるんです。
このように、うまくゲームをプレイすれば、「ストーリーボーン」の上に重ねて「フラッドボーン」になるという流れが自然に生まれてきます。
言い換えると、好きなキャラクターをデッキにたくさん入れることに対して、ゲームシステムがインセンティブを用意してくれているんですね。スティッチが好きなプレイヤーは、自然とたくさんデッキに採用することができます。
TCGの競技プレイヤーから、ゲーム開発者への転身
──開発を担当する和田さんと富田さんは、お二人ともTCGプレイヤーとしてのご経験をお持ちと伺いました。『ディズニーロルカナ』に関わるまでのご経歴をそれぞれお聞かせください。
和田 カードゲーマーとビジネスパーソン、2つのキャリアがありまして……。
タカラトミー・和田寛也さん 好きなディズニー作品は『リロ&スティッチ』。好きなキャラクターは「スティッチ」!
──カードゲーマーのほうからお願いします!
和田 私は社会人になってからカードゲームをはじめました。学生時代は主に音楽活動をしていましたが、就職を機に何か新しいことをはじめたいと考えていたんです。そんなときに出会ったのが、『マジック:ザ・ギャザリング』でした。
特に印象的だったのは「ゲームをプレイして世界を見よう(Play the Game, See the World.)」というキャッチコピーです。国内の予選を勝ち上がっていくと世界規模の大会に招待されて、そこでは賞金を獲得できるチャンスもあるうえ、渡航費の支援を受けられるといった制度があったんですね。つまり、ゲームを真剣にやると海外に行ける──そんな体験に魅力を感じて、2007年の4月からはじめました。
TCGのプロプレイヤーとして活躍していた時代の和田さん(画像は『マジック:ザ・ギャザリング』公式サイトより)
もっとも熱心に取り組んでいた時期は、年に7回、飛行機に乗って海外の大会に参加していました。アメリカ、カナダ、ヨーロッパ、中国、シンガポール、マレーシア……カードを買うお金よりも旅費の方が高い。2012年に初めてプロツアーに出場して、2014年から2年ほどプロ活動のようなかたちで『マジック』に関わりました。
その後、デジタルカードゲームの開発の仕事をする機会を得たり、同じ時期に結婚も決まったりして、TCG競技プレイヤーの活動はいったん休止することになりました。
──競技プレイヤーから開発者への転身というのは、興味深いご経歴ですね。
和田 カードゲーム開発の世界に入ったきっかけも、大会だったんです。
転職を考えていた時期に、出場していた大会の主催者の方から声をかけてもらって、ホビージャパンのゲーム開発チームに入れることになったんです。最初は運営側として店舗との連携などを担当していました。
ところが、業務後にプレイヤーとして担当タイトルのデッキを組んでいるうちに「開発のサポートにも入ってはどうか」という話になっていきました。その後は開発陣のもとでサンプルデッキの制作やテストプレイ用カードの準備をしたり、見習いのような形で働かせてもらっていました。カードゲームが好きだったので、本当に充実した時間でしたね。
そして、タカラトミーへ転職することとなります。そこでは紙テーブルトップのカードゲームやデジタルTCGや、日本で展開されているタイトルの英語版などを担当しました。そして2023年から『ロルカナ』の日本語版ローカライズに携わることになったのが大まかな経緯です。
──これまで関わったタイトルと比べて、『ロルカナ』の特徴はどのような点にあるとお考えですか?
和田 開発者目線で見ても『ロルカナ』はいうなればAAA級のタイトルであると考えています。
新製品のリリースごとに200種類以上のカードを制作するというボリュームはもちろんですが、それらのイラストすべてが描き下ろしというのも驚きです。
これまで単一のIPをカードゲーム化する仕事に関わってきた経験からすると、ディズニー映画24作品の権利関係をクリアしながら複数の作品をカード化している──というのは、ちょっと業界的にも前例のない規模だと感じています。
富田 いや、本当にすごいことです! 開発元のラベンスバーガー社(ドイツの老舗玩具メーカー)の手腕がなせるものですよね。
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