「ディズニー映画を全作、見直した」──TCGのローカライズとは何か?

──そもそもTCGにおける「ローカライズ」とはどういったお仕事を指すのか、教えていただきたいです! 簡単に考えると、カードテキストの翻訳などがそれにあたると思うのですが……?

和田 そうですね。「ローカライズ」の主な作業が翻訳であることはその通りです! ただ、それだけでもないんですよ。

例えば、フォントの選定から、カードテキストの改行、記号の使い方、文中のスペースの有無まで、細部にわたる決定事項が無数にあるんですね。

私の具体的な作業としては──まずディズニーの映画本編をすべて見直すところからはじめました

タカラトミー・和田寛也さん

──1930年代からの歴史を持つディズニー映画をぜんぶですか! すごすぎます。

和田 ありがとうございます。映画見た後で非常に印象的だったことがあって──まだ作品を知らない状態で見てたカードが、作品に触れた途端「うわ、このカード、あのシーンじゃん、すごい!」ってなるんですよね。これはとんでもないカードゲームだと確信しました。

それからウォルト・ディズニー・ジャパンと打ち合わせを重ねながら、キャラクターやフレーバーテキストの訳語を一つひとつ確認していきました。オリジナルのセリフがある場合は、「このキャラクターらしさ」を大切にしながら、翻訳者とウォルト・ディズニー・ジャパンと協力して調整をおこないましたね。

色々ありすぎて思い出せない(苦笑)。今ぱっと思い出すのは……やっぱり時差ですかね。

──時差! たしかに……。

和田 シアトルにオフィスを構えるラベンスバーガー社の制作チームとやりとりする際、日本時間の23時が向こうの朝6時です。こちらの深夜1時頃から先方の稼働がはじまって、メールやその他のやり取りが活発になります。

通常の勤務時間では1日1往復しか連絡が取れないから、「物語のはじまり」の作業が大詰めになってからは2ヶ月ほど、会社と富田の許可を得て夜勤での対応を続けました!

富田 昼夜逆転の生活は本当に大変でしたね!

和田 いえいえ! 第1弾セット『THE FIRST CHAPTER 物語のはじまり』では、日本語版としての基本フォーマットを確立する必要があったんです。これは、いわば今後長く続いていく『ロルカナ』というゲームの、線路を敷くような作業です。この線路が完成すれば、第2弾以降はその上を安全に走らせることができますからね。

TCGブーム後のTCG『ロルカナ』と日本市場の荒波

──ラベンスバーガー社や海外メーカーの眼からすると、日本のTCG市場はどのように観られているのでしょうか? また、どんなことに期待が寄せられているのでしょうか。

富田 やはり、日本のTCG市場は非常に活況だという印象のようです

特に本国の開発チームは、日本のプレイヤーがつくり出すデッキに大きな期待を寄せていますよ。日本は昔からカードゲーム大国として知られていて、様々なTCGで独創的なデッキが開発されてきた経緯があります。

その点でも、カジュアル/気軽に楽しめる場だけではなく、しっかりと競技的なシーンも整備していきたいです。

──最近はカジュアル層も増えてきましたが、日本のTCGプレイヤーは元来競技的な側面が世界的にみても強いという印象もありますね。

富田 先ほど和田からも話がありましたが、本国の『ロルカナ』にも「組織化プレイ」と呼ばれている、競技プレイヤー向けの施策があります。

アメリカやヨーロッパでは、ほぼ毎月のペースで競技トーナメント「Disney Lorcana Challenge」が開催されているんです。

富田 海外で実施されているそれらの施策も踏まえつつ、日本独自のイベントやトーナメントも展開したいと思っています。日本でもしっかりと競技的な運営も実現したいですね。

──近年、国内のカードゲームの活況にはすさまじいものを感じます。国内のTCGは現在40タイトルを超え、今では毎月のように新作タイトルが登場するような状況です。

富田 ライバルが多いという意味では、荒波の中を船出するような状況だとは感じています。ただ、これだけ多くの新作が生まれるということは、カードゲーム市場全体が活性化している証でもある。

『ロルカナ』には、そうした活況の中でも際立つ魅力があると確信しています。市場の盛り上がりを追い風に、この作品の持つ本質的な面白さを多くの方に届けていきたいです。

和田 シンプルなルールと遊びやすいゲームシステムを通じて、カードゲームの新しい楽しさを知ってもらえるよう、製品の品質はもちろん、運営面でもしっかりとサポートしていきたいと思います。『ロルカナ』は、これまでのTCGプレイヤーとは、違った層にまで届きうるポテンシャルを秘めているはず!

富田 そうですね。マーケティング担当としても、日本市場特有のニーズを見極め、最大限の盛り上がりをつくり出すことに注力していきます。これは、日本語版の販売を手掛ける「ローカライズ・ディストリビューター」としての私たちの役割そのものだといえます。

日本で『ロルカナ』はどう受け入れられるのか?

──アメリカやヨーロッパとは違った、日本独自のプロモーション戦略などもあるのでしょうか?

富田 はい。例えば、先日の「東京おもちゃショー」では日本から提案したプロモーションカードを配布させていただきました。これは私たちからラベンスバーガー社に提案した施策なんです。

東京おもちゃショーで限定配布された《ミッキーマウス/いつだって友だち》

富田 やはり各国で足並みを揃えていかないといけない部分も大切にしつつ、日本独自の施策を実現するために粘り強くコミュニケーションを続けています。

『ロルカナ』は英語版をはじめ、ドイツ語版、フランス語版、イタリア語版など、すでに多くの国で展開されています。基本的には共通の戦略やブランディングで展開されていますが、独自の工夫も必要だと考えています。

『ロルカナ』東京おもちゃショーでの様子

和田 実際、「東京おもちゃショー」で配布したプロモーションカードは想像以上の反響があって、海外のプレイヤーからも注目していただけました!

富田 プロモカードを配布した翌日にSNSを見ていたら、ディズニーランドでミッキーにお願いして、このカードにサインをもらっている方の投稿を見つけたんですよ!

TCGである『ロルカナ』がディズニーの世界観と自然につながっていく瞬間を目の当たりにして、感動しました。

──とっても素敵なエピソードですね……! パックの仕様も日本市場向けに最適化されていると伺いました。

富田 はい。日本版では、はい。日本語版では、パックに封入されるゲームで使用できるカードの枚数を英語版の12枚から6枚に変更するなど、パック/ボックスの仕様を日本市場の特性に合わせて再設計することで、より幅広い層のお客様にアプローチできると考えています。

『ディズニー・ロルカナ』日本語版パック。お財布事情に優しい1パック 330円。

──円安の影響もあってか、ホビー業界も値上がりの一途を辿っているのでありがたいです。今後の具体的なイベント展開についてもお聞かせください

富田 まず、ルールを覚えたい方向けの「ショップルール講習会」の全国展開です。手ぶらで参加してもらえて、実際にカードを触ってルールを覚えてから購入を検討していただけるような形式です。

発売日からは各店舗で「構築済みデッキ交流会」「ロルカナ交流会」という企画も始まります。これは勝敗にこだわらない対戦や、構築済みデッキでの限定戦も楽しめたり、カードゲーム初心者の方でも参加しやすい内容となっています

──『ロルカナ』がはじめてのTCG、という人も多いと思うんですよね。それこそ性別や年齢問わず、さまざまな層から支持されるタイトルになる予感がしています!

富田 そうですよね。そういう方はいきなりカードショップでの大会参加はハードルを高く感じてしまう人もいらっしゃいますよね。

なので、まずは少しでも敷居の低い交流会イベントで気軽にゲームを体験していただき、そこからステップアップするように展開できればと考えています。

また、日本語版発売日の翌日である1月26日(日)には、池袋サンシャインシティで大きなイベントを開催します!

ここには『ロルカナ』のゲームデザイナーやスペシャルゲストもお招きして、お祭り的な雰囲気でイベントを展開する予定です。これまではTCGに馴染みがないディズニーファンの方々にも楽しんでTCGを遊んでもらえるような内容にする予定です。

まずは「カードゲームは楽しいよ!」ということを実感してほしいです!

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