ここからしばらく、ヒゲドライバー・小澤亜李夫妻の光属性トークが続く
──時代とともに変わっていくヒゲさんの一面もたくさん見えましたけど、変わらない部分もありますね。
小澤亜李 いい意味で変わった部分があるのは事実だと思います。付き合いたての時はお互いに時間を共有することに慣れてなくて、ヒゲさん自身、仕事に集中する時間が取れなくなるんじゃないかって心配してたけど、気付けば長い時間、一緒にいてくれるんです。
ヒゲドライバー 1人暮らししてた時って、パソコンの前にいるか寝てるかしかしてなかったから。部屋に人がいて、一緒に生活して、ゴミ捨てをして、食器を洗ってとかをやり出して、最初は作業の時間が減ってきたことに焦りもありました。
だけど今はそれが普通だし、人間らしい生活に導いてくれたことに、感謝もしています。あの地獄のような生活には、本当に戻りたくない(笑)。
小澤亜李 もともと1人で生きてきた人なのに、交際しても結婚しても子どもが生まれても、変わらずすごく尽くしてくれるんです。今なんて、子どもの送り迎えもほとんどヒゲさんがやってくれるんですよ。私が仕事に行っている間はヒゲさんが子どものことを全部してくれているおかげで、家事代行やシッターサービスに頼ることもなく、本当に2人だけで家庭を回せています。
ヒゲドライバー 亜李ちゃんの声優としての仕事は外に出ないとできないから、自然と僕がやってることも多いけど、ちゃんとお互い家事は分担もしてます。
何より、好きな人のためだったら家事もそんなに苦じゃないって思えます。一人暮らしの時は誰も褒めてくれなかったけど、今は喜んでくれる人がいると思うと、自然とやれちゃうんですよ。
──ま、眩しい……。完全に光属性の話になってきてしまってますが、素敵な夫婦ですね。
小澤亜李 その代わり、ありがとうとごめんねは日頃からたくさん言い合っています。
ヒゲドライバー 世の中の夫婦のすれ違いって、本当に些細なことから始まるじゃないですか。してもらったことに感謝したり、何かあったらきちんと話し合って謝ったりもするっていう、当たり前のことをしているだけですけど、そのおかげで円満に続いていると思います。
小澤亜李 子どもの生活に合わせて仕事する時間も変えてくれて、産後もヒゲさんの支えのお陰で、心も身体も健康に過ごせています。だけど、ヒゲさんはちょっとタフすぎますね。見本にならないというか、したらダメなタイプだと思ってて。共働きだと保育園に通うまでは信じられないくらい大変だったけど、乳児期の夜間対応にもヒゲさんは睡眠時間を削って、仕事も育児も頑張ってくれていました。
ヒゲドライバー 仕事柄、調整はしやすい方だから。会社員だったら、子どものこともこんなに見れなかったと思います。
小澤亜李 私からすると、むしろ音楽という仕事柄、ちゃんと睡眠をとらないとパフォーマンスが下がるんじゃないかと思うんですけど。
ヒゲドライバー これは不思議なものでね、寝てなくてツラい中で仕事するのがちょっと快感みたいなところもありまして。エナドリだらけの部屋で「俺、やってるぜえ」という。
小澤亜李 初めて聞いた(笑)。
──絶対推奨しない方がいい話ですね……!
ヒゲドライバー 今はもう守るべき人がいるし、僕は亜李ちゃんより9つも歳上だから、どうしても僕の方が早くに死ぬ可能性が高い。だからこそ人間ドックには毎年行くようになりました。だけどこれも不思議なことに、何の項目も引っかからないんですよ。いっそ何か引っかかってくれたら、仕事ももう少しセーブするのに。
──守るものがあるパワーがすごい。丈夫に生んでくださったご両親に感謝ですね。でも絶対推奨しない方がいい(2回目)。
ヒゲドライバー ていうか僕、こんな持ち上げられて大丈夫なんですかね!? かつてKAI-YOUでこんな賞賛されるインタビューがあっただろうか……。
──散々プライベートにも土足で踏み込んできたので、これが20周年を迎えた「ヒゲドライバー」のリアルなのであれば、それもちゃんと伝えさせてもらって初めてバランスがとれるのではないでしょうか!
ヒゲドライバー うーん、そうなのかな……?
──全然ヒゲさんが腑に落ちてなさそうな中でガンガン話を進めて申し訳ないのですが、小澤さんは、ご結婚やご出産で仕事に変化はありましたか? 子ども向け作品という意味では、『ちいかわ』のアニメでうさぎ役を担当されてますよね。
小澤亜李 でも『ちいかわ』は、全然子ども向けアニメじゃなかったです! むしろちゃんと大人向けでした。ただ不思議なご縁で急にマスコット系のお仕事は増えました。今後はもっと、子どもが見る番組のお仕事にも関われたらなと思ってます。
「音楽で世界を変えたい」その初期衝動は、今……
──お二人の相性の良さだったり、仲の良さの秘訣みたいなものが見えてきてとても嬉しいのですが……どうしても聞いておきたいことがありまして。大変なことも多い世界で、親になることを決意して子育てをするお二人は、お子さんにどんな未来を残したいですか?
小澤亜李 子どもが自由に生きられるよう、選択肢を持たせてあげられる準備はしておきたいと常々2人で話してます。私たちの職業はあまりにも夢を持ちすぎていて、興味を持ちやすいジャンルだからこそ、そこ以外にも目を向けてほしくて。いろんなものに関心を持ってチャレンジできるようになってほしいなとは思ってます。明るい未来を想像できる子になるように、暖かい家庭をつくっていきたいです。
ヒゲドライバー 本当に亜李ちゃんの言う通り。僕もそうだったように、子どもも中2になったら絶対音楽がやりたくなるだろうから……やりたいことは応援しつつも、その厳しさはちゃんと伝えていきたいですね。色々なことにチャレンジしやすい状況をつくってあげたいです。
──まず、音楽をやりたくなるというのが前提なんですね。しかも中2で。
ヒゲドライバー 中学生になると、モテたいとかかっこよくなりたいとか、いろんな欲求が湧いてくるじゃないですか! そんな時、こんな身近に音楽があってギターも置いてあったら、絶対やってみたくなりますよ。僕がそうだったんだから。でも、夢を見すぎるのもよくないことは、事実として伝えるべきだと思います。
──なるほど。ヒゲさんはよく「音楽で世界を変えたい」とおっしゃってました。子どもを持った今、その気持ちに変化はありますか?
ヒゲドライバー そう、そこなんですよね。僕はずっと「世界を変えたい」と言ってきたし、今の方がより強く、そう思います。だけど子どもが生まれたことで、自分の中でその言葉の意味がちょっと変わったんですよね。
自分が世界にインパクトを与えたいという意味から、子どもたちに、より素敵な世界を残したいという意味の方になっていきました。自分が死んだ後も子どもは生きるし、その子どもに残す何十年も先の未来がどうなっていてほしいかを考えるようになっています。
──意味合いは変わったけれど、以前以上に、「世界を変えたい」と考えるようになった。
ヒゲドライバー だからオリジナルアルバムの『5UP』は、自分と本気で向き合いながら、より良い世界になるようにという願いを込めています。
2021年に「大したことじゃない」という曲をリリースしたことも大きかったです。どうすればちゃんと人に届いて、その人の生きる力になる曲を書けるのか。その人に良い影響を与える曲になるのか。それを突き詰めて出したのがあの曲なんです。
メロディだけじゃなくて歌詞も、本当に伝えたかったことを絞り出すようにして今、音楽をつくってます。そういう音楽でこの世界を変えたいという気持ちは、自分の原動力になってます。
小澤亜李 私はまだ、自分なんかにできることなんてあるんだろうかとか思っちゃう方だから、こういうことを言えちゃうのが、ヒゲさんのすごいところですね。
ヒゲドライバー ちゃんとまとまるまで亜李ちゃんにも聴かせてないので、待っててもらえたら嬉しいです。
──長年取材させていただいた身からすると、今日のお話はどれも本当に、言葉にできないほど感慨深いものでした。確かに、良い話成分が多めだったのが少し気がかりではありますが、これまでの取材が散々だったのでまだ全然お釣りがくるような気もしています。
小澤亜李 ホントですよ! たまにはこういうインタビューがあっても良いと思います!
──ですよね! これから先も楽しみです。本当にありがとうございました!
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