2014年のアニクラ(アニソン中心のクラブイベント)におけるフロアアンセムの筆頭であるアニメ『機巧少女は傷つかない』EDの「回レ!雪月花」の作詞作曲や、放送時は賛否あったもののDVDやCDの売り上げは絶好調だったアニメ『艦これ』のED「吹雪」を手がけている人です。ヒゲドライバー
何の後ろ盾も実績もない田舎の青年時代、一人パソコンに向き合ってインターネットに音楽を投稿し続けていたのが10年前。今では目覚しい活躍を見せるミュージシャン
他にも、『ゴッドタン』の人気企画「芸人マジ歌選手権」でバナナマン・日村勇紀さんが披露した「ヒム子の恋する独裁国家」の制作協力といった実績を持っています。
今回、そのヒゲドライバーさんが、ポニーキャニオングループの音楽レーベル・エグジットチューンズから、10周年記念のベストアルバムをリリースするということで取材にきています。
他にも、主な登場人物として3人ほど。
社長兼マネージャーの村田さん
ヒゲドライバーさんとは10年来の付き合いで、3rdアルバム『3UP』から共に制作を行う。その後、自ら設立した事務所にヒゲドライバーさんも所属。2014年に結成したバンド・ヒゲドライVANではギター担当
レーベルのSさん
10周年記念ベストアルバムを担当する制作・宣伝プロデューサー。漢気と音楽愛に溢れ、酔うとたまにめんどくさい時があったり、不思議な形状の髭が生えてたりする憎めない人
にいみ
筆者。極度の人見知りのためサングラスをしてる。これまで「天狗 A NIGHT!!」や「KAI-YOU presents 世界と遊ぶ!展」といったイベントを運営し、ヒゲドライバーさんに出演してもらったことがある
「モテたい」の一言が始まり
レコーディングルームでの打ち合わせ中、村田さんが言いました。「せっかくの10周年のベストなんだし、ヒゲさんは何かやりたいことないの?」
「いやー、特に」
「僕も何度も『なんか実現してみたいこととか野望とかないんですか?』って聞いたんです。でも『特に』って。ほんとにやりたいことないんですか?」
「えー・・・じゃあ、世界を変えたいですね、僕は」
「『じゃあ』ってちょっと軽すぎるでしょ」
「いや正直、Sさんにそこまで求めていいのか、僕も図りかねてて」
いきなりぶっこんでくるヒゲさん。この物言いにはSさんもカチーンときたのか、語気を荒げて
「変えましょうよ、じゃあ!! そのためにはまず、このアルバムを売りましょう!!」
「いや、アルバムもそうだけど、ほんとにガチな要望言ってもいいんですね? じゃあまず、僕の3大天使に会いたい!! 『M娘。』のKちゃんは堕天してしまったので、残るガッキーと夏帆に会わせてください!」
予想外の展開に、ヒゲさん以外の3人は戸惑いを隠しきれません。
「は・・・? それ『ヒゲドライバー』としてやりたいことじゃないですよね」
「いや、ヒゲドライバーとしてやりたいことですよ。この10年ずっと変わらない野望です。モテるために音楽を始めて、モテるために音楽を続けてるんですから」
この一言が、すべての始まりでした。
30代で童貞だけど音楽で成功した人のルーツを辿る旅
今や押しも押されぬ売れっ子作家として作曲仕事が途切れることがなく、多忙な日々を送っているというヒゲさんですが、実は、30代にして童貞なのです。「モテたくなきゃミュージシャンなんてやらないですよ。音楽が好きなだけなら、ひっそりと自分だけで楽しんでりゃいい。僕は、モテたいんだ!」
これが、モテたい一心でギターを弾き始めたという中学時代から、ヒゲドライバーを結成した20代を経て、人気作家となった現在もなお、モテたいという思いをこじらせ続けながら音楽活動に邁進する30代童貞・本名「シンゴ」の本音です。「世界を変えたい」という話はどこへ・・・?
しかし、そうであるなら、このベストアルバムの成否、ひいては「ヒゲドライバー」というミュージシャンが大成するかどうかは、その原動力である「モテたい」の強度にかかっている、と言えます。
一体、ヒゲさんはどんな人生を経て、そんな価値観を形成するに至ったのか。
その源流を辿るべく、筆者たち一行は、「ヒゲドライバー」をつくり上げた生まれ故郷・山口県宇部市と、大学時代からヒゲドライバーを名乗り始めてしばらく住んでいた福岡県博多区に飛びました。
それは、インターネット発のミュージシャンとして10周年を迎えた30代童貞の波乱万丈で数奇な半生を辿る濃密な旅でした。
後編はこちら
【ヒゲドライバー誕生秘話】30代で童貞だけどミュージシャンとして成功した話 後編膨大な量になったため前後編に分けていますが、人1人の半生を振り返るにはこれでも全然足りません。時間がない人のため、まとめておいた大まかな年表も置いておきます。
時間のある時に、ぜひ最後までお付き合いください。BGMは、ヒゲさんが半生を自ら振り返るアニバーサリー曲「REMEMBER THE BEAT」。・1983年 この世に生を授かる
・1995年 モテ期(小学生)
・1997年 ギターを始める
・2002年 天竺を目指して旅にでる。「合コン禁止令」を打ち立てる
・2003年 音楽をやめて公務員になる決意するも、一転してホストになる
・2005年 ヒゲドライバー結成
・2006年 父が亡くなる
・2008年 1stアルバム『ヒゲドライバー1UP』発売
・2009年 2stアルバム『ヒゲドライバー2UP』発売。しかしギャラはもらえず
・2010年 東京へ拠点を移すも、収入がなく困窮
・2012年 平野綾「Sunday」の作詞作曲
・2013年 ヒゲドライバー作詞・作曲「回レ!雪月花」が大ヒット
・2015年 ヒゲドライバー作曲「吹雪」が大ヒット/ヒゲドライバー10周年
・2016年 ベストアルバム『ヒゲドライバー 10th Anniversary Best』発売 ヒゲドライバーざっくり年表
ヒゲドライバーの故郷・山口県宇部市
ここが、ヒゲドライバーさんが生まれ育った、山口県宇部市。「ここでどんな子供時代を過ごしたんですか?」
「家では大人しくしてたけど、もともと調子乗りだから、とにかくバカなことばっかやってみんなを笑わせていました。小学生の時がモテのピークでしたね」
「ご冗談を」
「だって、ファンクラブがあったんですよ」
「いまだに童貞なのに!?」
小学校時代はモテモテだった?
ということで、当時を知るお友達に集まってもらいました。ジュンちゃん
ヒゲさんの小・中学の同級生
のっきん
ヒゲさんの小・中学の同級生
Mさん
ヒゲさんの小・中学の同級生。人妻
「ヒゲさんはどんな小学生でしたか?」
「一緒にバカなことばっかしちょった。授業中ずっとチンコ握り合ってたりな(笑)」
「よくふざけて怒られちょったよね」
「そんなチンコ握り合ってた人がモテモテだったって本当ですか?」
「なぜか人気はあったな。頭はそこそこよかったけど、かっこいいわけでもないしスポーツできるわけでもないのに。でも、女子にモテるって感じじゃなかったけどなあ」
「私は入ってないけど、ファンクラブがあったのは本当だよ。シンゴくんのことが好きな子が一人おって、その子を中心に友達が応援してあげてる感じだったけど」
「童貞キャラで通ってきたヒゲさんを応援してるファンにはかなり驚きの事実だと思います・・・」
中学校が絶頂期!
「俺らは中2が絶頂期だったな(笑)。毎日楽しくて、何の不安も悩みもなくて」
「無敵だった。怖いものなんてないし、将来のことなんて考えたこともなかった」
「3人で一コマずつリレー方式の漫画描いてたな。俺がなるべく話を繋げようとするのに、この2人がいつもぶち壊してた」
「反町隆史が人気だった頃で、漫画に登場させちょったな」
「『そりすぎまち』っていう、剃り込みを入れたキャラなんだけど、剃り込みが頭部を突き抜けてるっていう(爆)」
「内輪ネタすぎて置いてけぼり感がすごい」
初めての彼女は中学2年
「中学でもモテたんですか?」
「あ、でもモテについては小学生がピークで、徐々に下降してきましたね」
「でも、初めての彼女は中学の時やったよね?」
「中2の時だっけ。下の学年の子で、告白されてなんとなく付き合ったんだけど、ほとんど何もないまま終わったからなあ。彼女って言っていいのかもわからないくらい」
「完全にモテ側の態度ですね。いいんですか村田さん? 『モテたい一心で音楽を続けてきた30代童貞のルーツを探る旅』のはずが、冒頭から予想外の展開になってますけど」
「いいも何も、事実ならしょうがない。ファンは衝撃だろうけど俺も衝撃だよ! とても、ブログに10年以上も鬱屈した思いを書き綴ってきた人間と同一人物には思えない」
「皆さんにとってはシンゴはそんなキャラなんですね。僕はシンゴが落ち込んでるのは見たことない」
「っていうか、あんまり心を見せないんよね」
「え、これだけ長い付き合いなのにそんなこと言う??」
「それは少しわかるかも。良い人なんだけど、ほんとはどう思ってるんだろう?っていうところはある」
「人付き合いいいし明るいし優しいし聞き上手だけど、ふとした瞬間、心ここにあらずってわけじゃないけど、わからないことはあるな」
ゆずになりたくてギターを始めた
「音楽はいつ始めたんですか?」
「中2の時に、兄貴が買ってきたギターを弾き始めたんです。ちょうど、ゆずの『夏色』を聴いて衝撃を受けて。それで、友達と一緒に『ろば』っていうバンドを組みました。ゆずになりたかったんですよ」
この白衣を着た人が、今は薬剤師をやっていて、ヒゲさんとユニットを組んでいたあみちゃん。あみちゃん
ヒゲさんの小・中・高校の同級生
「ゆずが『夏色』を出したばっかでまだ人気が出る前、シンゴがみんなに聴いてみいうちょったよね」
「ゆずの魅力って、ぱっと見は普通のおにいちゃんがやってるように見えるところ。これなら俺にもできるって思わせてくれた。今なら、どんだけすごいか少しはわかるけど」
「なんであみちゃんを誘ったんですか」
「あみちゃんが一番『モテたいパワー』を持ってたから(笑)。中学で同じテニス部だったんだけど、女子テニスに一番ちょっかい出してたのがあみちゃんだったんです。それで結成したんですよね」
「名前はゆずを真似して2文字にしようって。『路上バンド』略して『ろば』」
「まさやの家の裏がパチンコ屋で、その駐車場で練習しちょったよね。大声で歌ってたけ、まさやのお母さんに丸聞こえで『恥ずかしいからやめてくれ』って怒られたこともあった」
「田代まさしの歌とか、ジュンちゃんが歌詞書いた『火計火計の日々に嫌気がさして』みたいな三国志の歌とか(笑)。シンゴは、歌詞さえあれば適当にコードつなげてすぐに曲にしちょったろ。中学生で作曲しようなんて人間はほかにおらんかったもん」
人を楽しませるのが好きだった
「今のところ、チンコ握り合う以外はリア充エピソードとベタ褒めしか出てこない」
「変人は変人やったよ。恋愛観から変だし。もっと軽く考えてええんじゃないかって思うけどね。けど、周りにあわせることもないし」
「たまに奇行するよな。大学出てからだっけ? 陰毛全部剃ったの(笑)」
「むしゃくしゃして剃ったことある。退屈っていうか、こう、現状を打破したくて」
「陰毛剃って現状は打破できましたか?」
「できませんでした」
「でも、なんかたまってても、暴力的な方には走らんよね」
「人を楽しませるのが好きだからね。ジュンちゃんとお笑い目指してたこともあったくらいだし」
高校は暗黒時代
「高校時代はどうだったんですか?」
「唯一、あみちゃんだけ高校も一緒だったけど、特にエピソードとかイベントはないですよ」
「遠かったからね。通学で疲れた」
「自転車で1時間近くかかるから、土日も、結局このメンツと近くで遊んでたよね。だから広がりもなかった。暗黒時代だった」
「進学校だったから、周りは頭いいやつばっかで、2人ともドベだった」
ねりまちゃん
「元カノが自分のことを友達に話す時に『教祖』って呼んでた」というところを何度も読み返しております
CKS
大長編ヒゲドライバーすぎる