兎田ぺこらさんや宝鐘マリンさん、戌神ころねさん、白上フブキさんらが所属し、バーチャルYouTuber(VTuber)シーンを牽引するホロライブ。
YouTubeやSNSにおけるランキングを席巻し、その名をインターネットで見ない日はない。まさしく新時代のアイドルグループといっても差し支えはないだろう。
そんな彼女たちにとって音楽とは、多岐にわたる活動の中で名刺代わりとなる存在。特徴やバッグボーンを活かしたキャラクターソングからリスナーへ伝えたい想いを込めたメッセージソングまで、アイドルとして一人ひとりの個性を輝かせる。
今回、ホロライブ所属タレントが発表してきた数十曲以上のオリジナル楽曲から31曲を厳選して紹介。0期生から海外勢まで、彼女たちを語る上で外せない名曲をまとめた。
※数字に順位やランキングなどの意図はありません。随時更新予定。
喜怒哀楽にうつろう心に寄り添い、予期せぬ痛みを分かち合い、明るい未来の待つポジティブな世界へとリスナーを連れていく。歌う者は、そのメッセージ性をしっかりと届けなければいけない。その重みは彼女たちの両肩にずっしりとのしかかる。
アイドルでありストリーマーであるホロライブの所属タレントたちは、この曲の持つ圧倒的な強度のメッセージに勝るとも劣らない存在にならなければいけない。光り輝くアイドル、そのプレッシャーは計り知れない。
「Stellar Stellar」は彼女自身が作詞を担当、名作『星の王子様』を読み込んで歌詞に落とし込んだという。TAKU INOUEさんのドラマティックなサウンドの中で、星街さんは伸びやかに声を上げ、眩いまでに光り輝く。シンデレラではなく王子様、なぜなら彼女は星なのだから。
彼女が自らリリック・映像を手がけた「Red」でも「Pressure mounting, but I'm doomed without it(邦訳:プレッシャーはあるけれど、それなしでは絶望的だ)」「The best don't sleep, I was all about it(邦訳:いっそ寝ないのが一番良い、それがいつもだから)」と心中を露わにする。
アニメーションも制作でき、ラップも上手く、ジャパン・カルチャーに染まった彼女は、MC・グラフィティ・ダンスにDJが絡んだヒップホップのリアルな精神性をバーチャルタレントの領域で表現していくようだ。
「何者」にもなれず足掻く心模様や死生観、過去への自省や未来への薄らとした希望まで、鬱屈とした自己を記したような「ナナワリエネミー」は、極私的なメッセージでありつつも共感者を増やしていった。
もはやメロディラインから飛び出してしまうほど無理矢理にリリカルな言葉を詰め込み、早口な語り口調で歌い上げる。裏返り、かすれ、叫びになり、切迫した感情が声に乗りうつる。「ナナワリエネミー」は彼女の“感情”そのものだ。
童謡・ヒップホップ・ロック・エレクトロ・電波ソングと様々なタイプを歌いこなす実力派であり、声色も歌い口も表情のつけ方も変えられるテクニカルさはバーチャルタレントの中でも上位だろう。
「愛昧ショコラーテ」は普段の物腰柔らかいイメージと配信・音楽活動へのパッションが混ざった1曲。相対するはずの感覚が無垢な衝動となって混ざり合ったデビューソングだ。
「Step and Go!!」は、2ndアルバム『ON STAGE!』から先行して2020年10月15日に公開された、一歩踏み出せない人の背中を押す超王道の応援ソング。
真っすぐでピュアな歌声、サウンドもポップスど真ん中。そのてらいのない音楽は、優しくて腰の低い、だが負けず嫌いな彼女のパーソナリティーを捉えている。
2021年9月にリリースされた「コトノハ」では、アコースティックギターが印象的な優しいバッキング、クラップが響くゆったりとしたビートにソフトな感触のボーカル・コーラスが乗る。ロボットなのに人懐っこさが滲んだ1曲だ。彼女のムードやオーラを表現した「自己紹介ソング」としてもぴったり。
「Say!ファンファーレ!」はまさにそのイメージを具現化したようポップソング。サウンドひとつひとつや彼女の歌声も含めて軽やかな質感で揃い、彼女の明るく弾ける笑顔を音に変換したような圧倒的なポジティビティを有している。
2021年10月24日にリリースした「かぷっとNight☆Sky」は初めてとなるソロシングル。ファミコン風チップサウンドのイントロに導かれた楽曲は、4つ打ちのシンセビートを軸に、どことなくチープなディストーションサウンドの厚み、教会音楽を思わせるパイプオルガンの響きと、ゴチャ混ぜな要素がまとめ上げられている。
そんなトラックに乗せ、ヒップホップのライム&フローもこなしながら、夜空メルは軽快に歌っていく。不思議なバランスと意外性に富んだホロライブらしい1曲だ。
配信中にたまに歌いだす「謎歌」もそうだが、彼女のオリジナル曲「シャルイース」も一聴すると「何を歌ってるんだ?」と真顔にさせられる1曲。デビュー後すぐに公開されたこの曲は、RPGゲームの劇伴と思わせるほどファンタジックな、教会音楽や中東音楽などをバックボーンにした民族音楽。そこに加わるのは、明らかに不可思議な歌詞。
新規ファンが困惑する様子もチラホラ見られるが、異世界言語なのだから理解できるがわけないだろう。YouTubeで公開されているMVで和訳はチェックできる。
「引っ込み思案な自分を変えたい」と願いホロライブの門を叩いた少女は、3年間で変化していった自身を「回想」していく「海想列車」に、これまでの感謝と未来への希望を封じ込めた。作詞・作曲をつとめた40mPさんが、ピアノロックサウンドに煌びやかさと疾走感をもたせ、彼女の心情をしっかりと描き上げたのだ。
和装の鬼の娘ながら、配信中にはよくおふざけを挟み、テンション高めでコロコロと笑ってみせる百鬼あやめさん。その外見・可愛らしさ・笑い上戸な気質を描くのには、このサウンドデザインは最適だろう。歌配信やカバー曲でも高い歌唱力を垣間見せているので、今後のオリジナル曲にも期待したいところだ。
彼女のオリジナル楽曲「メイジ・オブ・ヴァイオレット」を作詞・作曲したのはかいりきベアさん。ボーカロイドシーンでヒットを量産してきたアップテンポなサウンドは、エレクトロとバンドが融合している。
感情や視点の矛先がコロコロと変わっていく歌詞は、テンポ良くメロディに乗せるために韻を軽く踏んでもいて、まるで配信中の彼女の無邪気さをも表現したかのよう。軽快なるこの曲には、いくつもの「魔法」がかけられている。
彼女の「ぷ・れ・あ・で・す!」は『アイドルマスター シンデレラガールズ』の「Shine!!」「EVERLASTING」などの作曲に携わった滝澤俊輔さんによる楽曲。ラテンミュージックらしい展開を挟みつつ、ブラスセクションもノリノリなめくるめくファンキーサウンドの変化とキメフレーズの応酬は、彼女のハイテンポなツッコミのように聴こえてくる。
おうし座にあるプレアデス星団、和名はすばる。ホロライブの中にあっても煌々と光り輝く彼女にふさわしい楽曲だ。
ゲーム実況を中心に活動するユニットとして設立されたホロライブゲーマーズ。アイドル/ストリーマーという見立てでいえば当然、彼女は後者のストリーマー側のように見えるが、歌配信ではJ-POPだけではなくボカロから最新のアニソンまで歌い、RADWIMPS「スパークル」のカバーでは美声を披露した。
2010年代にいくつものアニソンを生み出してきた名手・ZAQさんが作詞・作曲をつとめ、静と騒を行き交うドラマティックな曲構成をパワフルなエレキギターやオーケストレーションで組み上げていく「Howling」。普段の配信よりもグっと低い声色で丁寧に歌っていく。
おにぎり大好き食いしん坊という彼女のキャラを活かし、「もぐもぐYUMMY!」はフューチャベースなコミカルソングに仕上がった。ASMRにも向いてるウィスパー気味な声質を活かしたコーラスワークと気だるげに淡々と歌っていくメインボーカル、2役をうまくこなすあたりに彼女の巧みさがある。
そんな彼女のオリジナル曲「ころねの最凶天災ワンダフォーワールド」の作詞・作曲をつとめたのは、TVアニメ『干物妹!うまるちゃん』OPテーマ「かくしん的☆めたまるふぉ〜ぜっ!」やTVアニメ『三者三葉』OPテーマ「クローバー♣かくめーしょん」などを手掛けた作曲家・おぐらあすかさん。
電波ソングの持つコミカルさや超ド級にハイテンションなピコピコサウンドを現代風にブラッシュアップし、戌神ころねさんそのもののような魔性のキラーチューンに仕上げた。
現在、ホロライブJPでは最大の登録者数を誇る彼女は、直情的なリアクションとツッコミだけでなく、この曲でも視聴者の心を掴んで離さない。
尖った四つ打ちのキックを軸にして、エキゾチックなパーカッションやシンセ音が細かな刻みでスっと入りこむ、複雑怪奇なビートメイク。加えて複数に分かれたコーラスは、どれがメインボーカルかも定かでないまま響き合う。コード感もほとんどない。
それでも、4声以上に分かれた宝鐘マリンさんの歌声はエロティックでセクシー。とんでもなくドラッギーかつアクロバティックな問題作だろう。
YouTubeやSNSにおけるランキングを席巻し、その名をインターネットで見ない日はない。まさしく新時代のアイドルグループといっても差し支えはないだろう。
そんな彼女たちにとって音楽とは、多岐にわたる活動の中で名刺代わりとなる存在。特徴やバッグボーンを活かしたキャラクターソングからリスナーへ伝えたい想いを込めたメッセージソングまで、アイドルとして一人ひとりの個性を輝かせる。
今回、ホロライブ所属タレントが発表してきた数十曲以上のオリジナル楽曲から31曲を厳選して紹介。0期生から海外勢まで、彼女たちを語る上で外せない名曲をまとめた。
※数字に順位やランキングなどの意図はありません。随時更新予定。
目次
- 1. hololive IDOL PROJECT「Shiny Smily Story」
- 2. 星街すいせい「Stellar Stellar」
- 3. Mori Calliope(森カリオペ)「Red」
- 4. AZKi「ナナワリエネミー」
- 5. 角巻わため「愛昧ショコラーテ」
- 6. ときのそら「Step and Go!!」
- 7. ロボ子さん「コトノハ」
- 8. 白上フブキ「Say!ファンファーレ!」
- 9. 夜空メル「かぷっとNight☆Sky」
- 10. アキ・ローゼンタール「シャルイース」
- 11. 湊あくあ「海想列車」
- 12. 百鬼あやめ「宵の余、良い!」
- 13. 紫咲シオン「メイジ・オブ・ヴァイオレット」
- 14. 大空スバル「ぷ・れ・あ・で・す!」
- 15. 大神ミオ「Howling」
- 16. 猫又おかゆ「もぐもぐYUMMY!」
- 17. 戌神ころね「ころねの最凶天災ワンダフォーワールド」
- 18. 兎田ぺこら「ぺこらんだむぶれいん!」
- 19. 宝鐘マリン「Unison」
- 20. 白銀ノエル「ほめのび」
- 21. 常闇トワ「Palette」
- 22. 獅白ぼたん「Lioness’ Pride」
- 23. 尾丸ポルカ「エヴァーブルー」
- 24. 桃鈴ねね「Lunch with me」
- 25. Moona Hoshinova(ムーナ・ホシノヴァ)「愛の小さな歌」
- 26. Pavolia Reine(ヴォリア・レイネ)「Gate Open: START!」
- 27. Ninomae Ina'nis(にのまえ いなにす)「VIOLET」
- 28. Takanashi Kiara(小鳥遊キアラ)「HINOTORI」
- 29. Gawr Gura(がうる・ぐら)「REFLECT」
- 30. IRyS(アイリス)「HERE COMES HOPE」
- 31. hololive IDOL PROJECT「BLUE CLAPPER (Bouquet ver.)」
hololive IDOL PROJECT「Shiny Smily Story」
ホロライブ公式曲第1弾「Shiny Smily Story」。メンバーが歌配信をする時にこの曲をチョイスすることも多く、まさにお馴染みの定番曲と言えるだろう。喜怒哀楽にうつろう心に寄り添い、予期せぬ痛みを分かち合い、明るい未来の待つポジティブな世界へとリスナーを連れていく。歌う者は、そのメッセージ性をしっかりと届けなければいけない。その重みは彼女たちの両肩にずっしりとのしかかる。
アイドルでありストリーマーであるホロライブの所属タレントたちは、この曲の持つ圧倒的な強度のメッセージに勝るとも劣らない存在にならなければいけない。光り輝くアイドル、そのプレッシャーは計り知れない。
星街すいせい「Stellar Stellar」
2018年3月22日に個人で活動を開始。2019年5月19日にイノナカミュージックに、同年12月1日にホロライブへと転籍してきた星街すいせいさん。彼女がそのまま加入を認められたのは、そのシンガーとしての才覚だけではなく、努力してきた軌跡が輝いていたからこそだろう。「Stellar Stellar」は彼女自身が作詞を担当、名作『星の王子様』を読み込んで歌詞に落とし込んだという。TAKU INOUEさんのドラマティックなサウンドの中で、星街さんは伸びやかに声を上げ、眩いまでに光り輝く。シンデレラではなく王子様、なぜなら彼女は星なのだから。
Mori Calliope(森カリオペ)「Red」
2020年9月12日にデビューし、現在では世界トップクラスのバーチャルタレントに。めくるめく日々を送った死神ラッパー・Mori Calliope(森カリオペ)さんは、とあるYouTubeチャンネルに出演した際に「tired but good(邦訳:疲れているけど元気)」とハッキリ答え、やはりお疲れではある模様。配信中には寝そうになったこともあり、「Sleepy Reaper(眠そうな死神)」と配信タイトルにして自虐するほど。彼女が自らリリック・映像を手がけた「Red」でも「Pressure mounting, but I'm doomed without it(邦訳:プレッシャーはあるけれど、それなしでは絶望的だ)」「The best don't sleep, I was all about it(邦訳:いっそ寝ないのが一番良い、それがいつもだから)」と心中を露わにする。
アニメーションも制作でき、ラップも上手く、ジャパン・カルチャーに染まった彼女は、MC・グラフィティ・ダンスにDJが絡んだヒップホップのリアルな精神性をバーチャルタレントの領域で表現していくようだ。
AZKi「ナナワリエネミー」
ホロライブの運営会社・カバーの音楽特化型プロジェクト「Virtual Diva AZKi」として2018年11月15日に活動を開始。その後、星街すいせいさんとともに音楽レーベル・イノナカミュージックへと加入し、現在まで活動を続けるAZKiさん。「何者」にもなれず足掻く心模様や死生観、過去への自省や未来への薄らとした希望まで、鬱屈とした自己を記したような「ナナワリエネミー」は、極私的なメッセージでありつつも共感者を増やしていった。
もはやメロディラインから飛び出してしまうほど無理矢理にリリカルな言葉を詰め込み、早口な語り口調で歌い上げる。裏返り、かすれ、叫びになり、切迫した感情が声に乗りうつる。「ナナワリエネミー」は彼女の“感情”そのものだ。
角巻わため「愛昧ショコラーテ」
「わたしはホロライブのただのファン」「ホロライブの応募には3回送った」「歌がずっと好きだった。夢をかなえるためにホロライブに来たんです」そう語っていた角巻わためさん。2021年に入ってアルバム『わためのうた vol.1』を発売、Zepp Tokyoでワンマンライブを開催と、その夢を叶えつつある。童謡・ヒップホップ・ロック・エレクトロ・電波ソングと様々なタイプを歌いこなす実力派であり、声色も歌い口も表情のつけ方も変えられるテクニカルさはバーチャルタレントの中でも上位だろう。
「愛昧ショコラーテ」は普段の物腰柔らかいイメージと配信・音楽活動へのパッションが混ざった1曲。相対するはずの感覚が無垢な衝動となって混ざり合ったデビューソングだ。
ときのそら「Step and Go!!」
2017年9月7日からニコニコ動画で活動スタートし、2022年9月に活動5周年を迎えるホロライブ0期生・ときのそらさん。活動当初から「アイドル道」をひた走っている彼女。配信ではその純朴さや天然っぷりがうかがい知れ、独特の包容力から多くの後輩たちが慕う存在だ。「Step and Go!!」は、2ndアルバム『ON STAGE!』から先行して2020年10月15日に公開された、一歩踏み出せない人の背中を押す超王道の応援ソング。
真っすぐでピュアな歌声、サウンドもポップスど真ん中。そのてらいのない音楽は、優しくて腰の低い、だが負けず嫌いな彼女のパーソナリティーを捉えている。
ロボ子さん「コトノハ」
ときのそらさんに次いでデビューしたホロライブ2人目のバーチャルタレント、ディズニーが大好きな高性能ロボットのロボ子さん。キャラの濃い後輩たちに負けず劣らず、柔らかい声のトーンで進むトークに対する数々のうっかりトラブルのギャップが際立つ。2021年9月にリリースされた「コトノハ」では、アコースティックギターが印象的な優しいバッキング、クラップが響くゆったりとしたビートにソフトな感触のボーカル・コーラスが乗る。ロボットなのに人懐っこさが滲んだ1曲だ。彼女のムードやオーラを表現した「自己紹介ソング」としてもぴったり。
白上フブキ「Say!ファンファーレ!」
ホロライブ1期生であり、ホロライブゲーマーズのリーダー・白上フブキさん。公式ラジオ番組やイベントなどで司会を任されることも多く、ホロライブの配信活動面を支える立役者だ。コラボ配信も多く幅広い交友関係をもつ彼女には、配信中に見せる姿やリスナーとのやり取りなどを見ても、やはり「明るい」という一言がぴったり。「Say!ファンファーレ!」はまさにそのイメージを具現化したようポップソング。サウンドひとつひとつや彼女の歌声も含めて軽やかな質感で揃い、彼女の明るく弾ける笑顔を音に変換したような圧倒的なポジティビティを有している。
夜空メル「かぷっとNight☆Sky」
2018年5月13日にデビューし、ホロライブ1期生で最初にデビューしたのが夜空メルさん。ときのそらさんが一人で活動していた時期にスカウトを受けてデビューし、休止を挟みながらも現在まで活動を続けてきた。2021年10月24日にリリースした「かぷっとNight☆Sky」は初めてとなるソロシングル。ファミコン風チップサウンドのイントロに導かれた楽曲は、4つ打ちのシンセビートを軸に、どことなくチープなディストーションサウンドの厚み、教会音楽を思わせるパイプオルガンの響きと、ゴチャ混ぜな要素がまとめ上げられている。
そんなトラックに乗せ、ヒップホップのライム&フローもこなしながら、夜空メルは軽快に歌っていく。不思議なバランスと意外性に富んだホロライブらしい1曲だ。
アキ・ローゼンタール「シャルイース」
中東特有の踊り「ベリーダンス」が得意、異世界からやってきたハーフエルフ女子高生のアキ・ローゼンタールさん。お酒を飲んで配信したところ寝落ちしてしまったり、ASMR配信で腹筋してみたりと、意外な茶目っ気も魅力的だ。配信中にたまに歌いだす「謎歌」もそうだが、彼女のオリジナル曲「シャルイース」も一聴すると「何を歌ってるんだ?」と真顔にさせられる1曲。デビュー後すぐに公開されたこの曲は、RPGゲームの劇伴と思わせるほどファンタジックな、教会音楽や中東音楽などをバックボーンにした民族音楽。そこに加わるのは、明らかに不可思議な歌詞。
新規ファンが困惑する様子もチラホラ見られるが、異世界言語なのだから理解できるがわけないだろう。YouTubeで公開されているMVで和訳はチェックできる。
湊あくあ「海想列車」
ホロライブ2期生・バーチャルメイドの湊あくあさんは、ホロライブ内外問わず、「陰キャ」の烙印が押されがち。だが改めて見れば、ホロライブ内のゲーム大会では悔し泣きし、ゲーム配信ではガチプレイヤーにも近いストイックさで臨み、活動に迷ったときには1週間にわたって休止するなど、その真剣さ・真面目さは誰にも引けを取らない。「引っ込み思案な自分を変えたい」と願いホロライブの門を叩いた少女は、3年間で変化していった自身を「回想」していく「海想列車」に、これまでの感謝と未来への希望を封じ込めた。作詞・作曲をつとめた40mPさんが、ピアノロックサウンドに煌びやかさと疾走感をもたせ、彼女の心情をしっかりと描き上げたのだ。
百鬼あやめ「宵の余、良い!」
琴・龍笛・和太鼓などが雅に奏でられ、4つ打ちのキックがリスナーの胸を打つ。アニソンやボーカロイド楽曲などで2000年代後半に生み出されたサウンドデザインを踏襲した1曲「宵の余、良い!」。和装の鬼の娘ながら、配信中にはよくおふざけを挟み、テンション高めでコロコロと笑ってみせる百鬼あやめさん。その外見・可愛らしさ・笑い上戸な気質を描くのには、このサウンドデザインは最適だろう。歌配信やカバー曲でも高い歌唱力を垣間見せているので、今後のオリジナル曲にも期待したいところだ。
紫咲シオン「メイジ・オブ・ヴァイオレット」
湊あくあさん、百鬼あやめさんとくれば、「卍組」としてコラボすることも多い紫咲シオンさんも紹介したい。紫色の魔女服にスラっとした体格、視聴者のコメントをテンポ速く拾ってトークしていき、からかい上手な振る舞いはまさに魔女っ子。彼女のオリジナル楽曲「メイジ・オブ・ヴァイオレット」を作詞・作曲したのはかいりきベアさん。ボーカロイドシーンでヒットを量産してきたアップテンポなサウンドは、エレクトロとバンドが融合している。
感情や視点の矛先がコロコロと変わっていく歌詞は、テンポ良くメロディに乗せるために韻を軽く踏んでもいて、まるで配信中の彼女の無邪気さをも表現したかのよう。軽快なるこの曲には、いくつもの「魔法」がかけられている。
大空スバル「ぷ・れ・あ・で・す!」
ホロライブはインターネット特有の悪ノリ気味なトークも人気の秘訣。そんな中、絵にかいたように陽キャらしいトーク力に加え、オタクカルチャーに囚われない常識人枠な視点でキレッキレなツッコミを披露しつづけるのが大空スバルさんだ。彼女の「ぷ・れ・あ・で・す!」は『アイドルマスター シンデレラガールズ』の「Shine!!」「EVERLASTING」などの作曲に携わった滝澤俊輔さんによる楽曲。ラテンミュージックらしい展開を挟みつつ、ブラスセクションもノリノリなめくるめくファンキーサウンドの変化とキメフレーズの応酬は、彼女のハイテンポなツッコミのように聴こえてくる。
おうし座にあるプレアデス星団、和名はすばる。ホロライブの中にあっても煌々と光り輝く彼女にふさわしい楽曲だ。
大神ミオ「Howling」
白上フブキさんとはデビュー以前から旧知の仲、ホロライブゲーマーズとして2018年12月7日にデビューした大神ミオさん。ゲーム実況を中心に活動するユニットとして設立されたホロライブゲーマーズ。アイドル/ストリーマーという見立てでいえば当然、彼女は後者のストリーマー側のように見えるが、歌配信ではJ-POPだけではなくボカロから最新のアニソンまで歌い、RADWIMPS「スパークル」のカバーでは美声を披露した。
2010年代にいくつものアニソンを生み出してきた名手・ZAQさんが作詞・作曲をつとめ、静と騒を行き交うドラマティックな曲構成をパワフルなエレキギターやオーケストレーションで組み上げていく「Howling」。普段の配信よりもグっと低い声色で丁寧に歌っていく。
猫又おかゆ「もぐもぐYUMMY!」
ミオさんとフブキさんが旧知の仲なら、「おかころ」こと猫又おかゆさんと戌神ころねさんもまたデビュー以前からの旧知の仲。自由人気質がかなり強く、ボケにボケを重ねて場をかき乱すこともあれば、様々ないたずらをメンバーにしてしまい、配信上で裁判沙汰になったことも。おにぎり大好き食いしん坊という彼女のキャラを活かし、「もぐもぐYUMMY!」はフューチャベースなコミカルソングに仕上がった。ASMRにも向いてるウィスパー気味な声質を活かしたコーラスワークと気だるげに淡々と歌っていくメインボーカル、2役をうまくこなすあたりに彼女の巧みさがある。
戌神ころね「ころねの最凶天災ワンダフォーワールド」
戌神ころねさんのYouTubeのチャンネル登録者数が、バーチャルタレントで4人目に100万人を突破したことからも窺えるように、彼女の圧の強いコミュニケーション、訛り口調の可愛さやぶっきらぼうさが刺さるトーク、長時間のゲーム配信はどれも中毒性の高い魅力をもっている。そんな彼女のオリジナル曲「ころねの最凶天災ワンダフォーワールド」の作詞・作曲をつとめたのは、TVアニメ『干物妹!うまるちゃん』OPテーマ「かくしん的☆めたまるふぉ〜ぜっ!」やTVアニメ『三者三葉』OPテーマ「クローバー♣かくめーしょん」などを手掛けた作曲家・おぐらあすかさん。
電波ソングの持つコミカルさや超ド級にハイテンションなピコピコサウンドを現代風にブラッシュアップし、戌神ころねさんそのもののような魔性のキラーチューンに仕上げた。
兎田ぺこら「ぺこらんだむぶれいん!」
電波ソング・ピコピコサウンドをブラッシュアップした……といえば、ホロライブ3期生・兎田ぺこらさんの「ぺこらんだむぶれいん!」も負けず劣らずのハイエネルギーぶりだ。作曲は俊龍さん、作詞に畑亜貴さんと「アニメの主題歌のクリエイター陣ですよね?」と聞き返したくなるほどの豪華な2人。そのクオリティ・狙いにも納得だ。現在、ホロライブJPでは最大の登録者数を誇る彼女は、直情的なリアクションとツッコミだけでなく、この曲でも視聴者の心を掴んで離さない。
宝鐘マリン「Unison」
突飛な音楽性を持ち込むことにより、タレントのエッジの効いたキャラクター性をより引き出す。本記事の中でもそういった手法の楽曲をいくつか紹介してきたが、気鋭のトラックメイカー・Yunomiさんによる「Unison」を外すことはもちろん難しいだろう。尖った四つ打ちのキックを軸にして、エキゾチックなパーカッションやシンセ音が細かな刻みでスっと入りこむ、複雑怪奇なビートメイク。加えて複数に分かれたコーラスは、どれがメインボーカルかも定かでないまま響き合う。コード感もほとんどない。
それでも、4声以上に分かれた宝鐘マリンさんの歌声はエロティックでセクシー。とんでもなくドラッギーかつアクロバティックな問題作だろう。
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連載
日夜生み出される現象や事象を“ポップなまとめ記事”として紹介する人気連載。 いま注目を集めるジャンル、気になったときにチェックしたいトレンド──。 KAI-YOUでは「POP」を軸に、さまざまな対象をまとめて紹介していきます。
2件のコメント
匿名ハッコウくん(ID:10319)
マイネームイズエリートもないからやり直し
匿名ハッコウくん(ID:4973)
さくらみこの「サクラカゼ」がないのでやり直し