2024年には、ブームだと言われていたヒップホップが完全に定着し、その存在が当たり前になった。
Creepy Nutsは、上半期に「Bling-Bang-Bang-Born」で世界的なヒットを飛ばしたかと思えば、下半期には「オトノケ」でそれが単なる偶然ではないことを示した。かつて自分たちのことを<助演男優賞のノミネート候補>だと称していたとは思えない躍進ぶりだ。
かと思えば、「チーム友達」でシーンを飛び越えたムーブメントをつくり出した千葉雄喜さんが、Megan Thee Stallionとの楽曲「Mamushi」で世界に躍り出る。
XG「WOKE UP」のリミックスに多くのラッパーが起用されたことも含め、シーンの成熟とともに、その枠にとどまらないアーティストが増えている。
一方、サブジャンルの細分化も進み、ポップミュージックと接続したメインの潮流とは別で、既存の枠組みに収まらないムーブメントをつくりあげるラッパーたちにも注目が集まっている。
今回は、2024年下半期にリリース/MVが公開された日本語ラップの楽曲を、KAI-YOU編集部の独断と偏見で11曲セレクト。若手からベテランまで、様々なスタイルが入り混じった2024年の楽曲を紹介!
目次
- 1. オトノケ/Creepy Nuts
- 2. PARALLEL feat. 7 (Prod. Chaki Zulu) /Liza
- 3. 言った!! Remix feat. Merry Delo,Deech/MIKADO
- 4. Still Young More Rich feat. Watson/LANA
- 5. Opp Otaku [Remix]feat. トップハムハット狂 & らっぷびと/Jinmenusagi
- 6. WOKE UP REMIXX [PROD BY JAKOPS] (FEAT. Jay Park, OZworld, AKLO, Paloalto, VERBAL, Awich, Tak, Dok2)/XG
- 7. Sagging My Jeans feat. Lil Ash 懺悔 & Tohji (Prod. Chaki Zulu)/kZm
- 8. DNA feat. Kohjiya, PUNPEE/BIM
- 9. byun G ft. JUMADIBA & LIL SOFT TENNIS/PAS TASTA
- 10. GIRI /Charlu
- 11. Mamushi (feat. Yuki Chiba)/Megan Thee Stallion
- 12. 過去の名曲もチェックする
オトノケ/Creepy Nuts
「ビリケン」「Bling-Bang-Bang-Born」と、ジャージークラブのビートに出会ってからのCreepy Nutsは圧倒的な存在感でシーンを牽引する存在に。
その流れで発表された「オトノケ」は、さらにジャージークラブを独自解釈して、ギターのアルペジオや転調までを取り入れ、歌モノやJ-POPとしてのニュアンスまで融合。ジャンルをさらに進化させた画期的な楽曲。
個人的に2024年で最も衝撃を受けた日本語ラップ曲となりました。海外でもジャージークラブ=Creepy Nutsみたいな評価を感じています(わいがちゃんよねや)
PARALLEL feat. 7 (Prod. Chaki Zulu) /Liza
Chaki Zuluさんの跳ねるファンクビート(バイレファンキというジャンルらしい)がとても新鮮かつ、Lizaさんの独特すぎる歌詞で一聴して釘付けに。
TikTokやショート動画を中心にバイラルするのも納得の出来栄え。この曲を聴くまで、リーザじゃなくてリザだと思っていたので本当に反省しています。
7さんの耳に絡みつくようなフロウもビートに噛み合いすぎていて、2024年の日本語ラップの中でも特にオリジナリティに溢れた一曲だと思います。(わいがちゃんよねや)
言った!! Remix feat. Merry Delo,Deech/MIKADO
和歌山のシーンが勢いを増している。
国内最大規模のヒップホップフェスの一つである「THE HOPE」の初日では、ラッパーのトップバッターとして登場した7のステージに同郷のMIKADOさん、TOFUさんらが登場。この「言った!!」を数万人の前でぶちかまして盛り上げた。
和歌山代表と言えば7さんが注目されがちだが、一連のこの少し捉えどころのない「言った!!」ムーブメントは、MIKADOさんの楽曲「言った!!」から始まっている。
「まるで口を滑らせた」かのような迂闊さと軽薄さ、そしてその溢れ出た音を言葉として繋ぎ止める「言っちゃった」的な咎めの響きが面白い。照れを笑いで相対化する関西的なノリをまぶした、口にしたことを実現させる「言った!!」の決意のフレームが、人生を込めたリリックで現実を手繰り寄せようとするラッパーの所作にハマらないわけがない。
すでにこの1年で3つのバージョンのリミックスがリリースされているが願わくばもっと広がってほしい。(新見直)
Still Young More Rich feat. Watson/LANA
今もっとも10代・20代のヒップホップシーンを象徴すると言っても過言ではない2人による、2024年を彩る名曲。
さすが編曲はこれまでにもLANAさんの代表曲を手がけてきたZOT on the WAVEさん、Homunculu$、pctyo(※)の3組が参加するオールスター感のある布陣。
(※)pctyo:「L7 Blues」をLANAさんと作曲。個人なのかユニットなのかは不明。
あえてWatsonさんとデュエットするのではなくLANAさんのソロによるメロディアスなフックと、それぞれのバースにおいてハイハットによる5つ打つから音数を減らしてからの太いキックでの5つ打つという変則的なジャージークラブのリズムが印象的だ。
LANAさんの力強いフロウ、Watsonさっんの小気味良いラップの相性は抜群である。これは確かにFlexを巡る曲ではあるが、彼女たちが誇るのは決して文字通りのrichさではない豊かさだと受け止めた。
人間の関係性はどこまでも儚く、スタティックさとは無縁のものだ。けれど、この音が鳴り続ける限り、一瞬は永遠になる。(新見直)
Opp Otaku [Remix]feat. トップハムハット狂 & らっぷびと/Jinmenusagi
ネットラップシーンで活躍した3人が10年以上の時を経て集結。シンプルに「この3人が今楽曲を……!」という驚きがある一曲でした。
それぞれの愛するコンテンツやキャリアの中でも大きな意味を持つ作品をリリックに散りばめながら、それぞれがラッパーとして辿ってきた道とオタク道を歌い上げています。
3人のリリックに登場する『鉄拳』『ワンピース』『名探偵コナン』などは、いずれも20年以上の歴史を持つコンテンツ。後半2作はもちろんのこと、『鉄拳』もサウジアラビアでの人気も相まって再注目されており、懐かしさもありながら一周回って最先端という、この曲にふさわしいチョイス。
かつてニコニコ動画を見ていた身としては、「しまっちゃうおじさん」「0%0%0%」など、忘れかけていたネタを思い起こさせてくれたのもあいまって記憶に残る楽曲でした。(小林優介)
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連載
日夜生み出される現象や事象を“ポップなまとめ記事”として紹介する人気連載。 いま注目を集めるジャンル、気になったときにチェックしたいトレンド──。 KAI-YOUでは「POP」を軸に、さまざまな対象をまとめて紹介していきます。
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