「日刊ゲンダイDIGITAL」によると、ジャニーズ事務所のバーチャルアイドルは2月19日から配信をスタートするとされています(外部リンク)。
"投げ銭"方式での課金とされていることからも、報道が事実であれば、動画投稿や生配信を行ういわゆるバーチャルYouTuber(VTuber)としての活動を行っていく可能性が高いと考えられます。
記事では、ジャニーズ事務所のこれまでの報道に対する姿勢や、事務所傘下の関連会社・ジャニーズアイランド社の社長となった滝沢秀明さんに触れ、大幅な方向転換とそれについてのファンの戸惑いを報じています。
バーチャルYouTuber業界の反応は?
ご存知の通り、2017年末から話題を集め始め、2018年に新たなネット発カルチャーとしてVTuberは爆発的に増え、大きなムーブメントとなりました。すでに6000人以上が誕生し、YouTubeには日々新しい動画が投稿されています。これまでのネットカルチャーと異なり、当初から企業がそのムーブメントに深く参入しているのも特徴の一つで、ゲームやアニメのメーカーに限らず、大手芸能事務所からも次々と誕生しています。
そうした背景に加え、これまで所属アイドルについて頑なにインターネット上の活動を制約してきたジャニーズ事務所が、近年ネット上での動画配信やSNS開設、写真の解禁など、方針転換してきた経緯を考えれば、公式発表ではないものの、バーチャルアイドルプロデュースの可能性はあるように思えます。
ジャニーズファンからは、報道の通り、様々な反応が寄せられています。「今いるメンバーを大切にしてほしい」「デジタルとか意味わからない、生身がいい」といった声も、Twitter上では散見されます。
一方、現時点では、これまでバーチャルYouTuber事業・VR事業を行なってきた関係者の反応はおおむね好意的なものです。
> バーチャルアイドルをつくるなら、一生懸命頑張っているジャニーズJrの子たちにチャンスをあげてほしい
— nino 🐶🎧🐱 (@aktona) 2019年2月17日
そのチャンスがこの「バーチャルアイドルとしてデビュー」でいいじゃないかと。リアルとバーチャルは分離するものではなく、溶け合うものなのです。なーむ。
バーチャルケモノユニット・KMNZなどを手がけるFictyのプロデューサー・ninoさんはVTuber/VRのマーケットに既存のアイドルファンが流入するのなら、市場規模は現在の推計数百万規模から数千万人規模へ拡大し、それが活況を生み出す可能性があると語っています。もともとVTuber/VRファンで数百万人ぐらいいる推計なんだけどそこに既存アイドルファンがやってきたら数千万規模のマーケットに。
— nino 🐶🎧🐱 (@aktona) 2019年2月17日
数千万人がVRライブみたいってなるわけで。で、VR機材を買い始めたら周辺VRサービスが活況になりだす。Chatとかね。
すると次はVRのアバやルームにこだわりたくなる。
このジャニーズ事務所の動きに対して、既存Jファンからの批判が想像以上に発信されていた…難しい… https://t.co/oxOvW7R9OC
— 水谷 誠也 (@seiya_mztn) 2019年2月17日
バーチャルYouTuberのリアルイベントなどを手がける株式会社REALITY Factoryの代表・水谷誠也さんも、ジャニーズファンからの拒絶反応に理解を示しながら、ジャニーズとバーチャルYouTuber双方に新しいファンが生まれることを期待しています。まぁ色々読ませて頂くとこういう新領域進出に対する既存からの拒否反応も必然だとは思うので、ぜひ今のVTuber界隈が震え上がるほどとんでもないアイドルを出し頂いて、JにもVにも新しいファンが生まれることを期待しています。
— 水谷 誠也 (@seiya_mztn) 2019年2月17日
ジャニーズファンは、バーチャルアイドルへの拒否反応というよりも、ジャニーズ事務所がバーチャル事業に進出することへの戸惑いや、まだデビューをしていないジャニーズJr.への配慮を求める声などが強い様子。活性化を期待して歓迎するバーチャルYouTuber業界とは、一つの断絶があるとも見て取れます。
芸能事務所が手がけるバーチャルアイドルたち
前述の通り、芸能事務所のバーチャルタレントは、今では珍しいものではなくなっています。2016年に活動を開始したキズナアイさん以降のバーチャルYouTuberブームのあと、様々な大手芸能事務所からバーチャルアイドルがデビューしています。いくつか紹介していきましょう。
ワタナベエンターテインメント所属のゆーはむさん
ワタナベエンターテインメントからは、「ゆーはむ」こと葉邑ゆうさんが7月よりデビュー。YouTubeに投稿されている動画には多くのワタナベエンターテインメント所属のタレントのみなさんが登場しています。
ホリプロからデビューした伊達あやのさん
伊達あやのさんは昨年11月にクラウドファンディングによりホリプロからデビューしたバーチャルYouTuber。現在のブームに先駆ける事例として、1996年にデビューしてホリプロのタレントとして所属していたバーチャルアイドル・伊達杏子さんの娘として登場したいわゆる二世タレントです。
初代Vチューバーは私よ! pic.twitter.com/vo41JOq5Be
— 伊達杏子 (@date_kyoko) 2019年2月16日
モー娘。飯窪春菜さんが手がけるNi-naさん
Ni-na(ニーナ)さんはモーニング娘。'18を卒業した飯窪春菜さんがプロデューサーをつとめるバーチャルYouTuber。飯窪春菜さんの卒業と入れ替わる形でモーニング娘。'18の武道館公演に詰めかけた8000人を前にデビューを飾りました。
秋元康さんプロデュース・22/7
22/7(ナナブンノニジュウニ)は秋元康さんプロデュース、Sony MusicとANIPLEXによるデジタル声優アイドルプロジェクト。けいおんなどを手がけた堀口悠紀子さんのキャラクターデザインやアニメーションなどによる高品質なMV、メンバーによる計算不能なバラエティ番組「22/7 計算中」など、精力的な活動を行なっています。
avex所属のバーチャルタレントたち
音楽レーベル・avexには奏天まひろ(かなめまひろ)さんや響木アオさんといったバーチャルタレントが在籍しています。中でも男性バーチャルタレントの先行事例として注目したいのが、ARイケメンダンスボーカルグループ・ARPです。
2016年4月からARライブを行うなど、先進的な取り組みはジャニーズによるバーチャルアイドルを想像する参考になるのではないでしょうか。
ジャニーズとバーチャルの化学反応は何を生み出すのか
大手芸能事務所でも、様々なバーチャルタレントの取り組みが見られますが、やはりジャニーズ事務所という看板は中でもトップクラス。仮にジャニーズによるバーチャルアイドルが実現するとなれば、その意義はとても大きいものとなります。
ファンたちの望む方向性、デビュー前のジャニーズJr.を大切にしてほしいという気持ちは無視できません。一方で、バーチャルYouTuberのファンも、ジャニーズの看板だけで継続して応援するようになるかというとそうではありません。
ジャニーズのファンとバーチャルYouTuberのファンとは客層が被っているとは決して言い難い分野です。
ジャンル横断・異文化への越境という意味でも、どちらのファンにも歓迎されるようなアイドルが誕生するよう、慎重なプロデュースがなされることを願います。
VTuberの歩み
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