暁佳奈の最新作『春夏秋冬代行者』は必読
そんな『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の原作者・暁佳奈の最新作について、あわせて紹介しておきたい。京都アニメーションのライトノベルレーベル・KAエスマ文庫で2015年に『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』を刊行しデビューした暁は、同作のアニメ化後、電撃文庫より『春夏秋冬代行者』を上梓している。
『春夏秋冬代行者』の舞台は、季節の巡り合わせを人が担っている世界。その役目を果たす人のことを「代行者」と呼んだ。しかし、“春”の代行者である花葉雛菊(かよう・ひなぎく)は誘拐事件に巻き込まれ、春が訪れないようになってしまう。
苦難を乗り越え業務に復帰した雛菊は、護衛官の姫鷹さくら(ひめだか・さくら)とともに、10年間この国に訪れることのなかった春をもたらすべく、各地を巡っていく。
端麗な文章が魅了的な『春夏秋冬代行者』は、四季の代行者とその護衛官たちが織りなす恋物語である。幻想的な御伽噺を思わせる描写と、誘拐事件に端を発する確執、代行者たちの能力によるバトルアクションと様々な要素がページをめくる読者に襲いかかる。
『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』では代筆屋の自動手記人形として各地を旅していたわけだが、『春夏秋冬代行者』では春をもたらすために各地を旅しながら、様々な人の気持ちに触れていく、というわけだ。
2021年ベストクラスの名作、季節の代行者の物語
春の代行者コンビだけでなく、クールな男性コンビである冬の寒椿狼星(かんつばき・ろうせい)と寒月凍蝶(かんげつ・いてちょう)、姉妹コンビである夏の葉桜瑠璃(はざくら・るり)と葉桜あやめ、ロリっ娘&クール執事コンビたる秋の祝月撫子(いわいづき・なでしこ)と阿左美竜胆(あざみ・りんどう)と、どの季節の代行者&護衛官たちも魅力的。主従関係や他の季節との結びつきも面白い。上下巻合わせて900ページ越えのため、おののく声もあるだろうが、私はとにかく読んで欲しいと思う。というのも、これだけ熱く、切なく、胸を滾らせる物語は今年ベストクラスであったからだ。
『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』を読んだときにも「これはすごい!」と思ったものだが、『春夏秋冬代行者』はまた暁が一段進化したように感じるほど整った作品であった。そういう意味で、『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』ファンは絶対満足できる作品だろう。
ぜひ、「金曜ロードショー」で『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』をご覧になった後、『春夏秋冬代行者』にも手を伸ばしていただきたい。
©️暁佳奈・京都アニメーション/ヴァイオレット・エヴァーガーデン製作委員会
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¥759(税込)
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連載
毎クールごとに膨大な量が放送されるアニメ。漫画やライトノベルを原作としたもの、もしくは原作なしのオリジナルと、そこには新たな作品・表現との出会いが待っている。 連載「アニメーションズ・ブリッジ」では、数々の作品の中から、アニメライター兼ライトノベルライターである筆者が、アニメ・ラノベ etc.を橋渡しする作品をピックアップ。 「このアニメが好きならこの原作も」、そして「こんな面白い新作もある」と、1つの作品をきっかけにまだ見ぬ名作への架け橋をつくり出していく。
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