連載 | #14 アニメーションズ・ブリッジ

『ぼっち・ざ・ろっく!』から『お兄ちゃんはおしまい!』まで 作画アニメの才能と表現の繋がり

『ぼっち・ざ・ろっく!』から『お兄ちゃんはおしまい!』まで 作画アニメの才能と表現の繋がり
『ぼっち・ざ・ろっく!』から『お兄ちゃんはおしまい!』まで 作画アニメの才能と表現の繋がり

“ぬらぬら”と動く圧巻の作画で視聴者を驚かせた『お兄ちゃんはおしまい!』ED映像/画像はYouTubeより

明日ちゃんのセーラー服』『平家物語』にはじまり、2022年はまさに作画アニメの見本市と言えるほど、バリエーションに富んだ画面づくりを目にすることができた一年だったことは間違いないだろう。

新型コロナウイルス感染症の影響がアニメ業界に及び始めてから早三年。現在は特に中国でウイルスが猛威を振るい、現地のスタジオに動画や仕上げを依頼できず、数タイトルの放送が中断・延期を余儀なくされている。

そんな中でも2023年は、前年の「作画祭り」を引き継ぐかのようなパワフルな作品が生まれ続けている。

今回の本連載「アニメーションズ・ブリッジ」は特別編。普段はアニメとライトノベルを橋渡しするような内容だが、いくつかの作品を体系立てしつつ、2022年10月から2023年1月以降の作画アニメを橋渡ししてみたい。

ぼっち・ざ・ろっく!』から『お兄ちゃんはおしまい!』まで。「作画アニメ」と一言で括られがちな作品群には、まさしく数珠繋ぎのような才能と表現の結びつきがあった。

文:太田祥暉(TARKUS) 編集:恩田雄多

目次

『ぼっち・ざ・ろっく!』のキーマン、梅原翔太&けろりら

『ぼっち・ざ・ろっく!』

まず、2022年10月クールで話題となった作品の一つに『ぼっち・ざ・ろっく!』がある。本作は“着せ恋”こと『その着せ替え人形は恋をする』や『ワンダーエッグ・プライオリティ』、『22/7「あの日の彼女たち」』を手がけたスタジオ・CloverWorksの梅原翔太がプロデューサーをつとめた作品だ。

梅原プロデューサーといえば、制作進行時代から若手アニメーターが躍動する「作画回」の印象があり、作画ファンからも一目置かれる存在といえるだろう。 そんな彼が、2010年代後半のデビューとともに頭角を現したアニメーター・けろりら(キャラクターデザイン)とともに新たな作品を作り出す。

そこに、梅原作品の特徴ともいえる、スタッフの情熱が乗った躍動感が乗っかっていく。作品ごとにどう動かしたら面白くなるのか、アニメーターや演出陣が楽しみながらやっている姿が目に浮かぶような画面になっているのだ。

個人制作シーンの盛り上がりを感じさせる表現

『ぼっち・ざ・ろっく!』第8話ライブシーン
『ぼっち・ざ・ろっく!』はそもそも、けろりらが原作ファンだったことから、梅原プロデューサーラインによって企画が始動した経緯がある。第8話のライブシーンや第12話の文化祭ステージ後の描写など、巧みな演出も冴え渡っていて画面から目を離すことを許さない。

主人公・後藤ひとりの想像力が発揮されるシーンでは、実写映像も挿入。エンディングアニメーションはPie in the skyのスズキハルカが手がけている。
『ぼっち・ざ・ろっく!』ED映像
PUI PUI モルカー』や『ポプテピピック』などでも現れたように、従来のテレビシリーズの表現方法からは離れるものの、作品の世界観に合った演出を探るという意味で、このような映像が完成したのではないだろうか。

そういった意味でも、コマ録りアニメを採用したり、「みんなのうた」でも活躍するスズキをエンディングに起用したりと、近年の個人制作作品の賑わいからの影響を感じる場面もあった。

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アニメーションズ・ブリッジ

毎クールごとに膨大な量が放送されるアニメ。漫画やライトノベルを原作としたもの、もしくは原作なしのオリジナルと、そこには新たな作品・表現との出会いが待っている。 連載「アニメーションズ・ブリッジ」では、数々の作品の中から、アニメライター兼ライトノベルライターである筆者が、アニメ・ラノベ etc.を橋渡しする作品をピックアップ。 「このアニメが好きならこの原作も」、そして「こんな面白い新作もある」と、1つの作品をきっかけにまだ見ぬ名作への架け橋をつくり出していく。

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