長らく入手困難だった中村晋太郎さんによる九龍城砦(きゅうりゅうじょうさい)の写真集が、『最期の九龍城砦 COMPLETE EDITION』として10月16日(木)に玄光社から刊行される。
取り壊される直前のスラム街・九龍城砦を写した前著『最期の九龍城砦 完全保存版』は2009年に刊行。
『最期の九龍城砦 COMPLETE EDITION』には初公開カットと九龍城砦にまつわるコラムを新規収録するほか、再編集された特典映像が付属する。価格は4400円(税込)。
『トワイライト・ウォリアーズ』など多くの創作に登場──人々を惹きつける九龍城砦
九龍城砦は、かつて香港に存在し、最盛期には5万人が暮らしていたとされる高層高密スラム街。
もともとは清王朝が築いた軍事と行政の中心地だったが、イギリスへの香港割譲の際に統治権を争った結果、行政の空白状態が生じ、不法移民や犯罪者がなだれ込んできた。
1993年から1994年にかけて取り壊されたものの、映画やゲームなど、様々な創作のモチーフとされ、今なおその混沌とした魅力に多くの人々が惹きつけられている。
日本でも最近、九龍城砦に住む人々と裏社会の勢力争いを描いた映画『トワイライト・ウォリアーズ 決戦! 九龍城砦』が2025年1月に公開され、香港映画としては異例のヒットを記録。
さらに同年4月には、九龍城砦を舞台にしたSFラブロマンス漫画『九龍ジェネリックロマンス』のアニメが放送。8月29日(金)からは実写映画の公開が控えており、九龍城砦への注目度は高まり続けている。
幾度のリニューアルを経て刊行『最期の九龍城砦 COMPLETE EDITION』
写真集「最期の九龍城砦」シリーズは過去に何度かリニューアルを経て、出版されている。
1996年に出版された『最期の九龍城砦』が本シリーズの最初の写真集。それを2003年にリニューアルして再版したものが『最期の九龍城砦〈完全版〉』。
このモノクロ版2作を、2009年に別の出版社より再々リニューアルしたカラー版が前著の『最期の九龍城砦 完全保存版』となっている。
『最期の九龍城砦 完全保存版』は入手困難であり、10万円近いプレミアム価格で販売されているケースもある。それゆえに、『最期の九龍城砦 COMPLETE EDITION』の発売は完全版を手元に置いておける絶好の機会になりそうだ。
なお、九龍城砦の跡地は現在「九龍寨城公園」という公園に姿を変えている。
九龍寨城公園/画像はHong Kong Tourism Boardから
1996年に造られたこの公園は、中国伝統様式の庭園を配した落ち着いたつくりではあるものの、かつての面影を感じられる展示や遺構も残されている。

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