今はなき東洋の魔窟・九龍城砦(きゅうりゅうじょうさい/クーロン城とも)にロマンを感じるのは筆者だけではないはずです。
年間数百タイトルの漫画を読む筆者が、時事に沿った漫画を新作・旧作問わず取り上げる連載「漫画百景」。
第四十六景目は、眉月じゅんさんによる『九龍ジェネリックロマンス』です。
香港に実在した巨大なスラム街・九龍城砦で巻き起こるロマンスとサスペンス。1990年代のノスタルジーと、どこか物悲しい夏の雰囲気が癖になる漫画です。
真夏の今読むべき漫画として紹介します。
『恋は雨上がりのように』の眉月じゅんによる漫画『九龍ジェネリックロマンス』
『九龍ジェネリックロマンス(クーロンジェネリックロマンス)』は、2019年から集英社の漫画誌『週刊ヤングジャンプ』にて連載中の漫画です。
一見冴えない中年男性に恋をする、女子高生の恋愛模様を描いた『恋は雨上がりのように』で知られる、眉月じゅん(まゆづき じゅん)さんによる作品となります。
過去と未来が混在──どこか“なつかしい”九龍で紡がれるラブロマンス
物語の舞台は、1993年に解体されるまで、現在の香港にあった無法建築の巨大スラム街・九龍城砦。
主人公は、九龍の不動産会社で働く鯨井令子(くじらい れいこ)。鯨井は会社の先輩である工藤発(くどうはじめ)に「誰があんなゴリラ…」と悪態をつきながら、恋をしています。
切れかけの電灯、カビくさい路地裏、うるさい隣人──異郷にも関わらず、どこか“なつかしさ”を感じる真夏の九龍で、ロマンスが紡がれていく。
一方で、もうひとつの地球と呼ばれるジェネリック地球(テラ)の開発が進む時代であり、ノルタルジックな九龍とは対象的です。
九龍がメインに描かれますが、高層ビルが林立する香港や、車輪がなく浮いている(ように見える)車両が登場するなど、近未来を思わせる事象も散見されます。
過去の象徴である九龍、未来を感じさせるジェネリックテラ、そして鯨井が生きる現在を内包した、SFラブロマンスになっている……だけではなく、徐々にスリリングな展開を辿るのが本作の魅力です。
では、以下よりネタバレ全開となるので、未読の方はご留意ください。
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連載
テーマは「漫画を通して社会を知る」。 国内外の情勢、突発的なバズ、アニメ化・ドラマ化、周年記念……。 年間で数百タイトルの漫画を読む筆者が、時事とリンクする作品を新作・旧作問わず取り上げ、"いま読むべき漫画"や"いま改めて読むと面白い漫画"を紹介します。
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