連載 | #14 アニメーションズ・ブリッジ

『ぼっち・ざ・ろっく!』から『お兄ちゃんはおしまい!』まで 作画アニメの才能と表現の繋がり

カリスマアニメーターの一人作画も『ヤマノススメ Next Summit』

『ヤマノススメ Next Summit』

そんな『ぼっち・ざ・ろっく!』の監督・斎藤圭一郎もコンテ・演出に参加していた作品が、同じく10月放送の『ヤマノススメ Next Summit』だ。

2013年に5分枠としてスタートした『ヤマノススメ』は、『Next Summit』で第4期。初の30分枠となったものの、構成としては第1~4話がショートストーリー+総集編、第5~9話がA・Bパートそれぞれで別の物語、第10~12話が30分枠として制作という形になっている。

ファンならばご存じの通り、『ヤマノススメ』はエピソードごとに演出家とアニメーターの個性が発揮される作品だ。各回でデザインが異なることもあり、次のエピソードではどんな画になるのか? と作画ファンなら垂涎の内容になっているだろう。
『ヤマノススメ Next Summit』OP映像
『Next Summit』でもその流れは引き継がれていて、新作パート幕開けとなる第5話Aパートは、カリスマとも称される凄腕アニメーターで、『NARUTO -ナルト-』や『犬王』などで知られる松本憲生の一人作画。

第6話Aパートはキャラクターデザインの松尾祐輔による一人作画で、第7話Bパートでは『平家物語』第3話を手がけたちなが、脚本・絵コンテ・演出・作画監督という凄技を成し遂げている。

その一方で、『ヤマノススメ』は足を使って登っていく登山をテーマにした作品だからこそ、丁寧な日常芝居が要求される。単なる「作画祭り」に終わらず、重心の揺れ動きやザックの繊細な線まで拾い上げる。その丁寧な仕事が『ヤマノススメ』の魅力だろう。

アニメの主流に逆行しつつ作画が炸裂『Do It Yourself!!』

『Do It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふ-』

『ヤマノススメ』シリーズでキャラクターデザインをつとめた松尾祐輔によるもう一つの快作が、10月放送の『Do It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふ-』だ。

DIYを題材に、女子高生6人の姿を描く日常もの。こちらも『ヤマノススメ』に負けず劣らず、丁寧な日常芝居が目を奪った作品だった。 原作や原案通りに、線の細いデザインをきっちりかっちり守っていく。それが昨今のアニメでは主流となっているが、あえてデザインを簡略化し、画としての動きに注視していく。

『この素晴らしい世界に祝福を!』などにも垣間見える表現で、本作ではアクションシーンがないものの、日常芝居で作画が炸裂した。

その一方で、女子高生たちの交流譚としても、画面に映り込むギミックから考えられる近未来SFとしても、視聴者の目を画面から離させない意欲がたくましかった。その両点からも『Do It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふ-』は特異な作品といえる。

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