カリスマアニメーターの一人作画も『ヤマノススメ Next Summit』
そんな『ぼっち・ざ・ろっく!』の監督・斎藤圭一郎もコンテ・演出に参加していた作品が、同じく10月放送の『ヤマノススメ Next Summit』だ。2013年に5分枠としてスタートした『ヤマノススメ』は、『Next Summit』で第4期。初の30分枠となったものの、構成としては第1~4話がショートストーリー+総集編、第5~9話がA・Bパートそれぞれで別の物語、第10~12話が30分枠として制作という形になっている。
ファンならばご存じの通り、『ヤマノススメ』はエピソードごとに演出家とアニメーターの個性が発揮される作品だ。各回でデザインが異なることもあり、次のエピソードではどんな画になるのか? と作画ファンなら垂涎の内容になっているだろう。
第6話Aパートはキャラクターデザインの松尾祐輔による一人作画で、第7話Bパートでは『平家物語』第3話を手がけたちなが、脚本・絵コンテ・演出・作画監督という凄技を成し遂げている。
その一方で、『ヤマノススメ』は足を使って登っていく登山をテーマにした作品だからこそ、丁寧な日常芝居が要求される。単なる「作画祭り」に終わらず、重心の揺れ動きやザックの繊細な線まで拾い上げる。その丁寧な仕事が『ヤマノススメ』の魅力だろう。
アニメの主流に逆行しつつ作画が炸裂『Do It Yourself!!』
『ヤマノススメ』シリーズでキャラクターデザインをつとめた松尾祐輔によるもう一つの快作が、10月放送の『Do It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふ-』だ。DIYを題材に、女子高生6人の姿を描く日常もの。こちらも『ヤマノススメ』に負けず劣らず、丁寧な日常芝居が目を奪った作品だった。 原作や原案通りに、線の細いデザインをきっちりかっちり守っていく。それが昨今のアニメでは主流となっているが、あえてデザインを簡略化し、画としての動きに注視していく。
『この素晴らしい世界に祝福を!』などにも垣間見える表現で、本作ではアクションシーンがないものの、日常芝居で作画が炸裂した。
その一方で、女子高生たちの交流譚としても、画面に映り込むギミックから考えられる近未来SFとしても、視聴者の目を画面から離させない意欲がたくましかった。その両点からも『Do It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふ-』は特異な作品といえる。
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連載
毎クールごとに膨大な量が放送されるアニメ。漫画やライトノベルを原作としたもの、もしくは原作なしのオリジナルと、そこには新たな作品・表現との出会いが待っている。 連載「アニメーションズ・ブリッジ」では、数々の作品の中から、アニメライター兼ライトノベルライターである筆者が、アニメ・ラノベ etc.を橋渡しする作品をピックアップ。 「このアニメが好きならこの原作も」、そして「こんな面白い新作もある」と、1つの作品をきっかけにまだ見ぬ名作への架け橋をつくり出していく。
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