パラレルシンガーNÄO×Ren対談　夭折したシンガーソングライターが繋いだ、2つのロック魂

2025年1月に1stシングル「ジレンマ」、3月に2ndシングル「midnight parade」を立て続けにリリースし、その圧倒的な歌唱力を武器にするパラレルシンガーのNÄOさん。

バーチャルとリアル、2つの次元で体を持つ“パラレル”という特殊な在り方は、彼女自身のアーティストとしての強固なアイデンティティになっている。

NÄOの楽曲すべての作編曲をつとめるRen（藤井洋）さんは、音楽ユニット・SUIRENのキーボーディスト／アレンジャーだけでなく、様々な人気アーティストのサポートミュージシャンとしても活躍。

ホロライブ所属の星街すいせいさんのライブにバンドマスターとして参加するなど、VTuberの音楽シーンの最前線にいるプレイヤーの一人だ。

VTuberシーンは、今や熾烈を極める競争の中にある──そこに飛び込もうとする新人シンガー・NÄOと、彼女を支えるコンポーザー・Ren。この2つの才覚を繋いだのは、ある一人のシンガーソングライターだった。

この記事では、「パラレルシンガー・NÄO」を形づくる物語のはじまりを、2人の対談を通して紐解いていく。

取材・文：オグマフミヤ 編集：都築陵佑 撮影：宇佐美亮

NÄOとRen、そして故・さユり──ひとところに集った三つの才能

──そもそも、お二人はどのような経緯でタッグを組むことになったのでしょうか？

Ren　元々、僕はSUIRENというユニットのほかに、サポートミュージシャンとしても活動していて。

HIGHWAY STAR（Renさんの所属事務所）と、他のアーティストへの楽曲提供やサウンドプロデュースにも今後挑戦していきたいという話を以前からしていたんです。

事務所側も、自社レーベルを本格稼働しはじめたところで、配信活動に強いなどの新しいタイプのアーティストに取り組んでみたいと考えているプロデューサーがいて。それで以前から交流のあったNÄOさんに声をかけさせてもらったという流れです。

──以前から交流があったのですね。

Ren　NÄOさんとの最初の出会いは、僕がサポートミュージシャンをつとめていたさユり（※）さんに、音楽仲間として紹介してもらったのがきっかけでした。

（※）さユり（1996〜2024）：シンガーソングライター。“酸欠少女”というキャッチコピーで2015年にメジャーデビュー。代表曲は、TVアニメ『リコリス・リコイル』のED主題歌「花の塔」、TVアニメ『ゴールデンカムイ』第2期OP主題歌であるMY FIRST STORYとのコラボ曲「レイメイ」など。Renさんは、デビュー前からさユりさんのサポートミュージシャンとして音楽活動を共にしていた。

Ren　その時からものすごいレベルの歌唱力を持っていて、機会があれば是非なにか一緒にできたらと思っていたんです。念願叶ってというところもありますね。

──RenさんがYouTubeで公開した自己紹介動画の中でもお話されていましたが、お二人ともさユりさんと親しかったんですね。

NÄO　さユりちゃんとは、私がNÄOとして活動する以前の音楽活動の際に、とあるきっかけがあって知り合って。私にとっては、上京してからはじめてできた友だちでした。

音楽で悩んだ時にも唯一相談できた相手でしたし、Renさんと交流が生まれたきっかけもさユりちゃんなので、とても大きな存在です。

Ren　僕はさユりちゃんとずっと一緒に音楽をやってきましたし、 NÄOさんもさユりちゃんといっぱい音楽の話をしていたと思うんですけど──実は当時、3人で音楽の話をした機会ってなかったよね？

NÄO　当時の交流は、さユりちゃんに布教された麻雀関連ばっかりでしたね（笑）。まさか、そこからRenさんがプロの雀士になってしまうほどにハマってしまうなんて（外部リンク）。

Ren　一体何に貢献しているんだろうね、さユりちゃん（笑）。

──（笑）。NÄOさんから見て、シンガーとしてのさユりさんはどのような印象でしたか？

NÄO　アニメが好きだったので、もちろん知り合う前からさユりちゃんのことは存じ上げてましたし、すごいシンガーだとは思っていたんです。

でも、最初に生でライブを観た時にもう圧倒されて。一言では言い表せない、いろんな感情が入り混じった歌い方をしていて、自分の全部を曝け出して歌っているんだなって感じたんです。

NÄO　「感情で歌う」という意味では私も同じタイプなんですが、さユりちゃんはそれとも全く違う色を持っていた。シンガーとしてめちゃくちゃリスペクトしていますね。