2017年末以降の爆発的ブームを発端に、発展と拡大を続けてきたVTuberカルチャー。
2025年現在は、日本武道館やKアリーナ横浜といった会場でライブを開催するアーティストが登場するなど、その歴史を語る上で音楽の重要性が増し続けている。
競争はより激しさを増し、群雄割拠では収まらないほどに猛者たちがひしめき合う音楽シーンから、また新たな才が芽吹かんとしていた。
その名はNÄO。バーチャルとリアルの体を持ち、活動形態はひとところに囚われない“パラレルアーティスト”として、圧倒的な歌唱力を武器に2024年9月から活動を開始したシンガーだ。
2025年1月29日には待望の1stシングル「ジレンマ」がリリースされた。
そんな念願の1stシングルと共にシーンへと切り込む新人シンガーを激励すべく、所属レーベル・Acro-musicの先輩バーチャルシンガー3人との座談会をセッティングした。
ゲーム部プロジェクトの一員として2018年にデビューした桜樹みりあさん、ゲーム部プロジェクトの顧問として2019年にデビューしたクレア先生、猫の姿からリアルの姿まで様々な形態で歌う2018年デビューの奏みみさん。
10年に満たないVTuber史において、初期からシーンを盛り上げてきたベテランと言って差し支えない実力派揃いだ。
ある程度の歴を持つVTuberファンたちならば、その名を目にしたこともあるであろう先輩シンガーたちは、新人へ何を伝えるのか。音楽への熱い思いという一点で通じ合うディーヴァたちの座談会をお届けする。
取材・文:オグマフミヤ 編集:恩田雄多
目次
Acro-musicに所属する歴戦のVシンガーが大集合!
──本日はよろしくお願いします。まずはそれぞれ自己紹介をお願いします!
クレア先生 アメリカから来た英語教師VTuberのクレア先生と申します!
音楽活動をしながら、YouTubeでためになる英語を教えたり、美味しい和食や日本の文化を学んだり、発信したりしています。
クレア先生:アメリカから来日し、2019年にYouTubeでの活動を開始。YouTubeチャンネルでは英語レッスンや街歩き、ゲームやカバーソングなどを配信。ネイティブならではの英語力を生かした歌ってみた動画が人気。
奏みみ 歌うほどに進化し続けるあなたの歌姫、世界線をまたぐトランスフォームシンガー、奏みみです。
2018年にぽっちゃり猫の姿で活動をはじめて、2020年に猫耳の女の子に変身できるようになり、2023年にリアルの姿にも変身できるようになりました。バーチャルとリアルの姿でアーティスト活動をしています。
奏みみ:2018年12月、歌って踊れるぽっちゃり猫としてデビューしたスーパーキャットシンガー。TikTokでは約24万人のファンを獲得。2020年には人型に変身できるように。作詞作曲も手がけている。
桜樹みりあ 宇宙一愛されるアイドルを目指すド根性女子高生、桜樹みりあです! 最近は踊り食いにハマってます!
元々はゲーム部プロジェクトという4人グループで活動していたんですけど、4年前にメンバーが3人卒業して、今は3人の思いも背負って“ド根性”で活動しています!
桜樹みりあ:2018年4月デビュー、2020年1月より個人チャンネルで活動開始。宇宙一愛されるアイドルを目指すVTuber。Youtubeチャンネルでは可愛いらしくも力強い生歌を披露するほか、ゲームやASMR配信も。
NÄO バーチャル空間とリアル世界、両軸で活動をするパラレルアーティストとしてAcro-musicに仲間入りさせていただきましたNÄOです。
配信ではギター弾き語りなどのカバー歌唱をしたり、『雀魂』というアプリで麻雀ゲーム配信をしたりしています。
NÄO:10代より歌手を目指し、オーディションをきっかけに福岡より上京。2017年より本格的に音楽活動を開始。様々なプロジェクトでの活動を経て、2024年秋、Acro-music & HIGHWAY STARからパラレルシンガーとしてデビュー。
──今回はAcro-musicに所属するVシンガーの皆さんに集まっていただきました。NÄOさんは2024年9月に加入されましたが、普段から交流はあるのでしょうか?
桜樹みりあ 3人はもう4〜5年の仲ですからね、週一くらいで話してるし。
奏みみ 普段からお互いの活動は見てるよね、みりあちゃんはまた変な企画やってるなとか(笑)。
NÄO 本当に皆さん優しくて、私も入っていきやすかったです。
桜樹みりあ 嬉しい~! みりあの“ここ”(※隣)空いてますよ。
クレア先生 先生の目の前の席も空いてますよ!
奏みみ そこは問題児が座るところじゃない(笑)?
当事者たちが語る「VTuberにとっての音楽」
──今やVTuberと音楽は非常に近しい領域となりました。VTuber/バーチャルアーティストとして活動してきた中で、ご自身の中で音楽とはどういった存在なのでしょうか?
クレア先生 子どもの頃から歌うことやミュージカルが好きで、音楽はいつも身近な存在でした。活動初期からJ-POPの英語カバー動画を上げていて、それが皆さんに知ってもらうきっかけでもあったんです。
だから音楽は、活動においても大きなものになってますし、今はカバーだけじゃなくて自分の音楽もつくるようになったので、自己表現の場としても大事な存在ですね。
奏みみ 作詞作曲を自分でして、その曲でワンマンライブもやっているので、私にとっても音楽は自己表現です。
熱い思いや葛藤を文章にしたり、お話をしたりするのが苦手なので、歌に込めて表現するのが一番自分に合っていると思っています。
桜樹みりあ みりあは小さい頃から歌手になるのが夢だったので、今のような活動ができているのは、もう幸せ以外の何物でもありません。オリジナル曲をつくるようになってからは、自分の音楽のおかげで自分の嫌いなところも好きになることができました。
元々なんでもできる大人な女性に憧れていて、そうなれない自分とのギャップに苦しむこともあったんです。でもそんな時に、悩みを持っていて欠点のあるめんどくさい女の子をイメージした曲をつくってみたら、曲を通じて自分の嫌だった部分も受け入れられるようになりました。
こうやって音楽を通じて自分を受け入れていくのも、大人になるってことなのかなと思いますし、音楽の力で成長させてもらってるなって感じます。
NÄO 私は元々ネガティブ思考で、自分のこともすごく嫌いだったんですが、そんな私が唯一人から褒めてもらえたのが歌でした。
こんな私でも褒めてもらえることがあるんだって気づいた時に、せっかくならこの長所を最大限伸ばして、一番を目指したいと思って音楽活動をはじめたんです。
だから私も、皆と同じく音楽を自己表現の場だと思ってますし、上手く言葉にできない思いや表に出せない気持ちを、音楽なら表現できると思ってます。
自分の感情を曝け出すように歌いながらも、独りよがりになるんじゃなくて聞いてくれる皆さんと一緒に成長していきたいです。
──皆さんはVTuber/バーチャルアーティストの音楽シーンをどうご覧になっていますか?
NÄO 数年前は、バーチャルアーティストの音楽って、どうしてもリアルに比べて別のものと思われているようなところがあったと思います。でも、今はそういう壁も薄くなってきていて、広く届くようになっていると思います。
ファンの方たちにとっても、配信で見守ってきた身近な存在が、大きな会場でもライブができるようになってきたのは感慨深いな、と思いますし、私自身もそう感じるところはあります。
NÄOさん
桜樹みりあ そもそも歌をメインで活動する人も増えてきたよね。5〜6年前はオリジナル曲を持ってる子も少なくて、音楽系のイベントに出るにもまずオリジナル曲が必要だからちょっとハードルが高かった。
でも今は、企業所属VTuberだけでなく個人勢VTuberも、オリジナル曲を制作してリリースするのが身近になっています。そのおかげか、いろんなVTuberがライブイベントに出演する機会が増えたり、自分で3Dライブを企画して開催したりすることが多くなったなぁと。
こういう状況って、歌をもっとやりたいって子たちや、みりあみたいに皆にもっと歌ってほしいって思ってた人にとってはすごく嬉しいと思います。
奏みみ スタイルもジャンルもいろいろ混ざってきて、もうどんな形式でも一人のアーティストとしてちゃんと聞いてもらえるようになったんじゃないかな。
リアルのアーティストでも顔を出してない人はいるし、いろんなアーティストがそれぞれの表現方法を選択できるようになってきたのは、とってもいいと思います。
クレア先生 「バーチャルなのにそんなことやってるんだ」とか、「リアルなのにそういうこともするんだ」みたいな違和感がなくなって、なんでも面白がってもらえるようになってるよね。
奏みみ でももっと広まって欲しい!

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