企業所属のタレントから趣味の延長まで、様々な活動スタイルが存在するVTuber。「IRIAM」のようなバーチャルライブ配信アプリでは立ち絵一枚で活動をはじめることもでき、そのハードルは年々下がっていると言えるでしょう。

しかし、気軽に活動をはじめられるといっても、はじめてアバターをつくる際には悩んでしまう人も多いはずです。

アバターは配信者の個性を表現する一種の作品であるとともに、リスナーとの距離を近づける、コミュニケーションツールでもあります。本人の好みだけでなく、リスナーの目に留まる重要な要素だからこそ、悩ましい……。

そこで今回は実際に、自身もVTuberとして活動しながら、多くのVTuberのキャラクターデザインや衣装を手がけてきた“お仕立て屋”のさえきやひろさんへ、「IRIAM」のためのアバター制作を依頼!

VTuber活動を最大限楽しめる最強のアバター」というコンセプトで描かれたデザイン画を通して、どんなこだわりや仕掛けが秘められているのか、VTuberの身体はどうやって生まれていくのか、そのヒントを掘り下げていきます。

取材・文:浅田カズラ 編集:小林優介

さえきやひろが描く「ツッコミどころ」だらけのメイドドール

──まず最初に、今回さえきやひろさんにデザインしていただいたアバターを見てみましょうか……!

さえきやひろさんにデザインしてもらったオリジナルアバター

──めちゃくちゃかわいい! KAI-YOU編集部でも大好評でした!

さえきやひろ 本当ですか!よかったです!

──早速ですが、今回制作いただいたこの子について、コンセプトを教えてください。

さえきやひろ ズバリ「汎用操作型美少女メイドドール」です!

「IRIAM」さんは全身の動きというよりも、顔回りのトラッキングに重きを置いているので、表情とコミュニケーションが広がるようなツッコミどころを盛り込むことを重視しました。

そのうえで、やひろの“癖(ヘキ)”もできる限り詰め込んでます……!

今回のデザインに込めた魅力について熱弁するさえきやひろさん

──特にこだわった部分はどこになるのでしょうか……?

さえきやひろ やひろは人間じゃないキャラクターが好きなので、今回はドールの要素を取り入れてます。ドールは、今にも動き出しそうだけど動かない。でも、そこから表情を読み取ったり、自分を投影して可愛さを感じ取ったりもできる存在です。

「IRIAM」のアバターは本人のトークに彩りを与えるツールだと考えていて。ドールのようにキャラクターとしてはあまり動かなくても不自然ではないデザインとコンセプトにしてみました。

──「コミュニケーションが広がるようなツッコミどころ」はたしかにトークに彩りを加えてくれそうですね。具体的にはどんな部分が該当するんでしょうか?

さえきやひろ 一番は胸元にいる「うさちゃん」ですが、自分の“癖”も込めたのは脚ですね。実はこの脚は“お飾り”の設定なので、球体関節にして、前側にも曲げられる構造になっているんです(笑)。そして、靴も足パーツと一体になっています。

素足があって、その上に靴を履いているのではなく、膝から下はただ歩くためだけのパーツでしかない。「実はこうなってるんです」という会話の種にもなるし、その方が……私的にはちょっと、えっちだなって……!

もう一つの体「アバター」を乗り物として捉えることで生まれる遊び

──今回は、誰でも使えるよう「特定の中の人を想定しない」形でデザインしていただきました。そのために工夫したポイントはありますか?

さえきやひろ この子はいわば乗り物なので、特定の人格があるかはわからないと示すため、思い切って胸元をコックピットにしました!

コックピット的にデザインされた胸部

さえきやひろ 演者さんは、コックピットの中の「うさちゃん」として喋ってもおもしろいと思うんですよ。「うさちゃん」が操作していて、この子の体でしゃべってるから、合間に「ちっ、疲れたな。あ、うさぎの人格が出ちゃう!」みたいな一人芝居をすることもできるはずです。

逆に、女の子の方をメインにして「お腹のやつが操作してくる!」「したくないのにこれさせられるー!」みたいな遊び方もできると思いますね。

──なるほど。ロールプレイの幅を自分で選択できるのは扱いやすそうですね! ちなみに、やひろさんはどんな人がこの子に乗ったら面白くなりそうだと思いますか?

さえきやひろ イケボの男性に、ボイスチェンジャーなしで「うさちゃん」として操作してもらったらおもしろいかもしれません(笑)。

両声類()の方なら一人二役で演じてもらってもよさそうですし、エイプリルフールとかには、うさぎを擬人化してみる遊びもできるはずです!

※:男性的な声と女性的な声を自在に使い分ける人の俗称。

──ある意味「男女兼用の汎用ロボット」と言えそうですね。デザイン上も、ツインテールが浮遊していたり、脚がドールっぽかったりと、拡張性が見て取れます。そこもデザインの際に想定されていましたか?

さえきやひろ そうですね! 髪型アレンジなどで、どんなフォルムでも遊べるようには考えていました。デザイン段階では演者さんの好みが反映されていなくて、活動を通していろんな姿になれるということ自体がこの子のアイデンティティです!

──ちなみにメインカラーは赤紫寄りのピンクですが、どのような経緯でチョイスしましたか?

さえきやひろ やひろが好きな色であるのと同時に、クラシカルでモノトーンなメイド服に合わせる、かわいい差し色として採用しています。

ちなみにメイドさんモチーフは、ロボットから連想される「お世話ロボット」から採用しています。キャラクターコンセプト自体が尖っているので、色味はシンプルにかわいくまとめてみました!

──今回、好きな要素を多く取り入れてデザインをされていますが、「好き放題できる」からこそ苦戦したことはありますか?

さえきやひろ やひろが好きなものをガッツリ取り入れると、みんなが可愛いと思うものからどんどんズレていくことが多いので……今回は好きなものの中から「人に伝えやすくて一個にまとめやすいもの」を選んでいます。

本当はフェイスペイントや歌舞伎メイクなんかも好きなんですけどね!

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