何も交流がなかった人たちがイベントを経て仲が深まり、呼び方が変わる。そして、友情や恋心が芽生え、さらにイベントが起きていく──そういった意味では、2021年に放送された『SSSS.DYNAZENON』のよもゆめ(麻中蓬と南夢芽)の関係性は最高だった。そんな作品から約1年。また、関係性の発展が気になるアニメが登場した。
それが『リコリス・リコイル』(通称・リコリコ)である。
漫画『この美術部には問題がある!』の作者・いみぎむるがキャラクターデザインをつとめ、フェティッシュでありながらアクション描写の緊迫さもある。A-1 Pictures制作の絶妙なオリジナルアニメだ。この作品で筆者が特に注目したいのは、メインキャラクターである錦木千束(にしきぎ・ちさと)と井ノ上たきなの関係性である。
安済知佳と若山詩音という「生っぽい」演技を魅力とする声優がキャラクターの魅力をより際立たせていく。それが、足立監督がリードする緊迫したストーリーと、丸山裕介副監督らが引っ張っている演出面をさらに鮮やかにしていくのだ。
そんなわけで、今回は関係性とひと目で画面へと引き込む演出面(レイアウト含む)が素晴らしい『リコリス・リコイル』について、深掘りしていきたい。
文:太田祥暉(TARKUS) 編集:恩田雄多
『リコリコ』で輝く“生っぽい”演技の声優
TVアニメ『リコリス・リコイル』
『リコリス・リコイル』の設定としては、硝煙の匂いが蔓延るアクションもの。しかし、そこは『WORKING!!』に携わった足立監督。合理的な性格ゆえにあまり心を開かないたきなが、自由奔放な性格の天才・千束と交流を深めていく過程をメインに描いていく。
この二人を演じる安済知佳と若山詩音は、奇しくも先に挙げた『SSSS.DYNAZENON』で共演。前者は『響け!ユーフォニアム』(高坂麗奈役)、後者は『空の青さを知る人よ』(相生あおい役)でも観客に鮮烈な印象を与えているが、その二作品はリアルさがある種の売りだった。アマプラはあまり慣れておらず、「コーダ あいのうた」を探すのに戸惑った。探索中に「リコリス・ピザ?」風の名のアニメ「リコリス・リコイル」を偶然見つけた。暗殺ライセンスを持つ少女アサシンが喫茶店へ出向?!ありえへん設定と導入!日本アニメらしい?と、気づくと3話まで観た。4話は何処だ! pic.twitter.com/0M46gDJpfV
— 小島秀夫 (@Kojima_Hideo) July 24, 2022
しかし『リコリス・リコイル』は、いみぎみるの萌え的なイラストがメイン。二人の武器ともいえる「生っぽさ」をメインに据えるのはいささかミスマッチでは、と思う人もいるだろう(いみぎみる作品の『この美術部には問題がある!』は萌え的なアプローチが取られていた)。
錦木千束(CV:安済知佳)。実は歴代最強と称されるリコリスで、たきなを迎え入れる喫茶リコリコの自称・看板娘。
井ノ上たきな(CV:若山詩音)。任務失敗の責任を負わされ喫茶リコリコへ。合理的で無駄を嫌い、当初は千束に不満を感じることも。
先に公開された足立監督へのインタビューによると、企画初期は女の子が銃を持って戦うことだけが決まっていた(外部リンク)。しかし、内容としてはシリアスめだったようで、先行作品の『GUNSLINGER GIRL』や真下耕一監督の諸作品とかち合わないためにどうしたらいいかと考えた末で、ポジティブな作品になったという。
加えて、ミリタリー面を推すわけではなく、千束とたきなというタイプ違いな女の子二人が仲良くなる様子に焦点を絞ったのだ。もちろん監視社会になろうとしている昨今の社会情勢を皮肉ったDAの設定はあるにしろ、一視聴者としては「千束とたきなが可愛い!」「関係性萌え!」と言える作品だ。
連載
毎クールごとに膨大な量が放送されるアニメ。漫画やライトノベルを原作としたもの、もしくは原作なしのオリジナルと、そこには新たな作品・表現との出会いが待っている。 連載「アニメーションズ・ブリッジ」では、数々の作品の中から、アニメライター兼ライトノベルライターである筆者が、アニメ・ラノベ etc.を橋渡しする作品をピックアップ。 「このアニメが好きならこの原作も」、そして「こんな面白い新作もある」と、1つの作品をきっかけにまだ見ぬ名作への架け橋をつくり出していく。
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