前者で言えば、昨今の競馬ブームも後押しする騎手を目指す少年少女の姿を描いた『群青のファンファーレ』や、歌の力で人々を癒す少女たちの物語『ヒーラー・ガール』などがある。フィギュアやアニメで話題を集めた作品が世界観を新たにした『ブラック★★ロックシューター DAWN FALL』もこの一種としてよいだろう。
後者では『週刊少年マガジン』連載の人気ラブコメ『カッコウの許嫁』やJリーグユース選手のサッカーに掛ける青春を描いた『アオアシ』などが放送開始。続編ものなら『かぐや様は告らせたい-ウルトラロマンティック-』や『まちカドまぞく 2丁目』などもオンエアされる。
そんな中、今回取り上げたいのは、後者──原作ものアニメの注目作『SPY×FAMILY(スパイファミリー)』だ。大ヒット漫画を原作として、実力あるスタッフとスタジオが制作する、文字通りオープニングからエンディングまで期待せざるを得ない作品だ。
文:太田祥暉(TARKUS) 編集:恩田雄多
目次
シリアスで緊迫する展開が持ち味の作家・遠藤達哉
『SPY×FAMILY』の舞台は、隣り合う国の間に仮初の平和が続く世界。主人公の黄昏は、偽装家族をつくり、政治家の息子が通う名門校に養子を入学させよというミッションを課される。とあるスパイの育児ミッション①#SPY_FAMILY#スパイファミリー pic.twitter.com/DXqReMGc8H
— 遠藤達哉 (@_tatsuyaendo_) July 4, 2019
精神科医ロイド・フォージャー(CV:江口拓也)を名乗った彼は、孤児院で出会った少女・アーニャ(CV:種﨑敦美)の賢さを知って養子にしようとする。しかしその賢さは全くのブラフ。彼女が聡いのは、すべて心を読んで答えを口にしていた──エスパーだった──からだ。
続いて「妻役」を探して出会ったのが婚期の遅れを揶揄されていた殺し屋のヨル・ブライヤ(CV:早見沙織)。かくして、3人は素性を隠しつつ、家族として生活することが決まった。
というはしがきから始まる本作は、遠藤達哉が「少年ジャンプ+」で連載しているコメディ作品。イントロダクションからどれだけシリアスな物語が始まるのかと予想された方もいるかもしれないが、基本的にはスパイ・エスパー・殺し屋という素性を互いに隠しながら、本業に勤しむキャラクターの動きを楽しむのが見どころとなる。
もちろん本業が描かれるということは、シリアスな場面も満載。そのギャップがキャラクターたちの魅力にほかならない。
もともと遠藤は『TISTA』や『月華美刃』という作品を『ジャンプスクエア』で連載しており、どちらかと言えばシリアスなストーリーと緊迫する場面展開が彼の作家性という印象だった。いつのまにやらジャンプ+内で拙作『TISTA』が配信されてました。
— 遠藤達哉 (@_tatsuyaendo_) July 1, 2019
10年以上前の連載デビュー作です。
拙すぎてお恥ずかしい限りですが、思い入れのある作品です。
終始鬱々とした内容ですので、SPY×FAMILYから入られた読者の方は閲覧の際ご留意頂ければと。
(遠藤)https://t.co/BjSLs407gQ pic.twitter.com/X7aURFLLdk
特に『TISTA』では殺し屋でありながらそれを隠している少女と、その素性を知ってしまった少年の想いが交錯していく様が描かれる。そのストーリー構成には息つく暇もなく、正直なところ胸焼けしてしまうような面もあった。
そんな遠藤が羽ばたいたのが『SPY×FAMILY』である。デビュー作『TISTA』からのタッグである編集者・林士平と練りに練られた結果、遠藤の持ち味であるシリアスさはそのままに、緩急としてコメディ要素を投入。本作の連載が開始されるや否や、「ジャンプ+」における閲覧数やコメント数、コミックスの発行部数の最高記録を次々と更新した。
監督はベテラン古橋一浩、総作監に嶋田和晃
監督は『機動戦士ガンダムUC』で知られる古橋一浩。ジャンプ作品としては『るろうに剣心 明治剣客浪漫譚』『HUNTER×HUNTER』(日本アニメーション版)に続く3作目となる。丁寧な演出で知られ、緩急のつけ方が重要となる本作ではこれほどないベテランの参加だろう。
作品の顔を決定づけるキャラクターデザイン・総作画監督は嶋田和晃が担当する。アニメファンとして嶋田の名前を認識したのは『ヤマノススメ セカンドシーズン』第4話だった。
また、嶋田のほかに総作画監督として『進撃の巨人』『PSYCHO-PASS サイコパス』の浅野恭司も参加している。
WITとCloverWorks、ヒゲダンと星野源のタッグ
CloverWorksはA-1 Pictures高円寺スタジオが2018年に改称したスタジオで、今年で4年目の新鋭。とはいえ、1~3月に放送された『その着せ替え人形は恋をする』と『明日ちゃんのセーラー服』でのハイクオリティな画には圧倒された視聴者も多いだろう。このスタジオがタッグを組むとなれば、期待も高まるというものだ。
この主題歌を彩るオープニングとエンディングのアニメーションにも期待したい。TVアニメ『SPY×FAMILY』は4月9日(土)23時から、テレビ東京ほかで放送スタート。
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作品情報
TVアニメ『SPY×FAMILY』
- 原作
- 遠藤達哉(集英社「少年ジャンプ+」連載)
- 監督
- 古橋一浩
- キャラクターデザイン
- 嶋田和晃
- 総作画監督
- 嶋田和晃 浅野恭司
- 助監督
- 片桐崇 高橋謙仁 原田孝宏
- 色彩設計
- 橋本賢
- 美術設定
- 谷内優穂 杉本智美 金平和茂
- 美術監督
- 永井一男 薄井久代
- 3DCG監督
- 今垣佳奈
- 撮影監督
- 伏原あかね
- 副撮影監督
- 佐久間悠也
- 編集
- 齋藤朱里
- 音楽プロデュース
- (K)NoW_NAME
- 音響監督
- はたしょう二
- 音響効果
- 出雲範子
- 制作
- WIT STUDIO×CloverWorks
- オープニング主題歌
- Official髭男dism「ミックスナッツ」
- エンディング主題歌
- 星野源「喜劇」
- キャスト
- ロイド・フォージャー:江口拓也
- アーニャ・フォージャー:種﨑敦美
- ヨル・フォージャー:早見沙織
- フランキー・フランクリン:吉野裕行
- シルヴィア・シャーウッド:甲斐田裕子
- ヘンリー・ヘンダーソン:山路和弘
関連リンク
連載
毎クールごとに膨大な量が放送されるアニメ。漫画やライトノベルを原作としたもの、もしくは原作なしのオリジナルと、そこには新たな作品・表現との出会いが待っている。 連載「アニメーションズ・ブリッジ」では、数々の作品の中から、アニメライター兼ライトノベルライターである筆者が、アニメ・ラノベ etc.を橋渡しする作品をピックアップ。 「このアニメが好きならこの原作も」、そして「こんな面白い新作もある」と、1つの作品をきっかけにまだ見ぬ名作への架け橋をつくり出していく。
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