同じくアニメ化が決まったスパイもの『スパイ教室』
さて、そんな『SPY×FAMILY』への熱が高まる中舞い込んできたのが、同じくスパイものの竹町による『スパイ教室』(富士見ファンタジア文庫)アニメ化の報である。『スパイ教室』は第32回ファンタジア大賞を受賞したライトノベルで、文章ならではの巧みな構成と可憐なキャラクターたちの鮮やかな行動が読みどころとなる作品だ。
世界大戦の被害により、武力ではなく情報戦による「影の戦争」が激化する世界。小国のスパイ養成校の落ちこぼれ少女たちは、新設チーム・灯のメンバーとして召集される。
そこで彼女らに与えられたのは、前任者が死亡した成功率も限りなくゼロに近い「不可能任務」。凄腕ながら教育者としての適性がないリーダー・クラウス(CV:梅原裕一郎)は、少女たちに座学でスパイ技術を教えるのではなく、「クラウスを倒す」という実戦形式の訓練を課す。
「このラノ」2位を獲得した教師と生徒の化かし合い
不可能任務に挑戦する部隊へ、なぜ落ちこぼれ少女たちが抜擢されたのか? 少女たちは死と隣り合わせの状況でどのように生き抜くのか? クラウスの実力は?
いくつもの疑問が回収されつつ、キャラクターそれぞれの魅力が深堀りされていくのだから、次へ次へと最新刊まで読む手が止まらなくなる。
ライトノベル読者の中でも本作の独自性が評価され、宝島社によるブックランキング「このライトノベルがすごい!2021」では文庫部門第2位を獲得。売れ行きも好調で、現在の富士見ファンタジア文庫では看板タイトルと言っても差し支えないだろう。
『SPY×FAMILY』ではシリアスとコメディの緩急があると前述したが、『スパイ教室』の読みどころもまさに同一。ライトノベルらしい緩い少女たちの掛け合いに癒されつつ、訓練での葛藤、任務中の白熱するやり取りで手に汗握るという、まさに緩急が素晴らしい作品なのだ。
この構成は、せうかなめが『月刊コミックアライブ』で連載中のコミカライズでも健在。文字を読むのが少し苦手という方はぜひこちらも手にしていただきたい。
©遠藤達哉/集英社・SPY×FAMILY製作委員会
これも推したい! 今月のプラスワン
アンソロジーというのは、読者と作家の架け橋である。例えば一人の作家や題材に興味を抱いて読み始めたら、他の作家に興味を抱くこともあるだろう。そういう意味で新たなアンソロジーが編まれるたびに嬉しい気分になるのだが、また傑作が誕生した。「百合」という一言では表せない、女性2人の関係性。その値にも作家ごとの捉え方があるわけなのだが、どの短編もベストな塩梅でビビッドに描き出してゆくのだ。敗れた師匠の復讐をすべく凄腕殺し屋姉妹に挑む青崎有吾「恋澤姉妹」。プロゲーマーペアの相方に対する巨大感情を綴った斜線堂有紀「百合である値打ちもない」。好きな女のためならば人を殺すことも厭わない相沢沙呼「微笑の対価」など一篇だけといわず通読してほしい珠玉の一冊がここに生まれた。
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作品情報
TVアニメ『SPY×FAMILY』
- 原作
- 遠藤達哉(集英社「少年ジャンプ+」連載)
- 監督
- 古橋一浩
- キャラクターデザイン
- 嶋田和晃
- 総作画監督
- 嶋田和晃 浅野恭司
- 助監督
- 片桐崇 高橋謙仁 原田孝宏
- 色彩設計
- 橋本賢
- 美術設定
- 谷内優穂 杉本智美 金平和茂
- 美術監督
- 永井一男 薄井久代
- 3DCG監督
- 今垣佳奈
- 撮影監督
- 伏原あかね
- 副撮影監督
- 佐久間悠也
- 編集
- 齋藤朱里
- 音楽プロデュース
- (K)NoW_NAME
- 音響監督
- はたしょう二
- 音響効果
- 出雲範子
- 制作
- WIT STUDIO×CloverWorks
- オープニング主題歌
- Official髭男dism「ミックスナッツ」
- エンディング主題歌
- 星野源「喜劇」
- キャスト
- ロイド・フォージャー:江口拓也
- アーニャ・フォージャー:種﨑敦美
- ヨル・フォージャー:早見沙織
- フランキー・フランクリン:吉野裕行
- シルヴィア・シャーウッド:甲斐田裕子
- ヘンリー・ヘンダーソン:山路和弘
関連リンク
連載
毎クールごとに膨大な量が放送されるアニメ。漫画やライトノベルを原作としたもの、もしくは原作なしのオリジナルと、そこには新たな作品・表現との出会いが待っている。 連載「アニメーションズ・ブリッジ」では、数々の作品の中から、アニメライター兼ライトノベルライターである筆者が、アニメ・ラノベ etc.を橋渡しする作品をピックアップ。 「このアニメが好きならこの原作も」、そして「こんな面白い新作もある」と、1つの作品をきっかけにまだ見ぬ名作への架け橋をつくり出していく。
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