連載 | #8 アニメーションズ・ブリッジ

『SPY×FAMILY』はここを見ろ! 俊英アニメーターによる偽装家族の描き方

同じくアニメ化が決まったスパイもの『スパイ教室』

『スパイ教室』第1巻

さて、そんな『SPY×FAMILY』への熱が高まる中舞い込んできたのが、同じくスパイものの竹町による『スパイ教室』(富士見ファンタジア文庫)アニメ化の報である。

『スパイ教室』は第32回ファンタジア大賞を受賞したライトノベルで、文章ならではの巧みな構成と可憐なキャラクターたちの鮮やかな行動が読みどころとなる作品だ。
第32回ファンタジア大賞『スパイ教室』
アニメでは『ひぐらしのなく頃に業/卒』の川口敬一郎監督と『PERSONA5 the Animation』の猪爪慎一が3度目のタッグを結成し、映像化する。

世界大戦の被害により、武力ではなく情報戦による「影の戦争」が激化する世界。小国のスパイ養成校の落ちこぼれ少女たちは、新設チーム・灯のメンバーとして召集される。

そこで彼女らに与えられたのは、前任者が死亡した成功率も限りなくゼロに近い「不可能任務」。凄腕ながら教育者としての適性がないリーダー・クラウス(CV:梅原裕一郎)は、少女たちに座学でスパイ技術を教えるのではなく、「クラウスを倒す」という実戦形式の訓練を課す。

「このラノ」2位を獲得した教師と生徒の化かし合い

TVアニメ『スパイ教室』特報
『スパイ教室』の肝となるのは、教師と生徒が化かし合いを続け、その意外性に読者までも驚かされることにほかならない。

不可能任務に挑戦する部隊へ、なぜ落ちこぼれ少女たちが抜擢されたのか? 少女たちは死と隣り合わせの状況でどのように生き抜くのか? クラウスの実力は?

いくつもの疑問が回収されつつ、キャラクターそれぞれの魅力が深堀りされていくのだから、次へ次へと最新刊まで読む手が止まらなくなる

ライトノベル読者の中でも本作の独自性が評価され、宝島社によるブックランキング「このライトノベルがすごい!2021」では文庫部門第2位を獲得。売れ行きも好調で、現在の富士見ファンタジア文庫では看板タイトルと言っても差し支えないだろう。

『SPY×FAMILY』ではシリアスとコメディの緩急があると前述したが、『スパイ教室』の読みどころもまさに同一。ライトノベルらしい緩い少女たちの掛け合いに癒されつつ、訓練での葛藤、任務中の白熱するやり取りで手に汗握るという、まさに緩急が素晴らしい作品なのだ。

この構成は、せうかなめが『月刊コミックアライブ』で連載中のコミカライズでも健在。文字を読むのが少し苦手という方はぜひこちらも手にしていただきたい。

©遠藤達哉/集英社・SPY×FAMILY製作委員会
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作品情報

TVアニメ『SPY×FAMILY』

原作
遠藤達哉(集英社「少年ジャンプ+」連載)
監督
古橋一浩
キャラクターデザイン
嶋田和晃
総作画監督
嶋田和晃 浅野恭司
助監督
片桐崇 高橋謙仁 原田孝宏
色彩設計
橋本賢
美術設定
谷内優穂 杉本智美 金平和茂
美術監督
永井一男 薄井久代
3DCG監督
今垣佳奈
撮影監督
伏原あかね
副撮影監督
佐久間悠也
編集
齋藤朱里
音楽プロデュース
(K)NoW_NAME
音響監督
はたしょう二
音響効果
出雲範子
制作
WIT STUDIO×CloverWorks
オープニング主題歌
Official髭男dism「ミックスナッツ」
エンディング主題歌
星野源「喜劇」
キャスト
ロイド・フォージャー:江口拓也
アーニャ・フォージャー:種﨑敦美
ヨル・フォージャー:早見沙織
フランキー・フランクリン:吉野裕行
シルヴィア・シャーウッド:甲斐田裕子
ヘンリー・ヘンダーソン:山路和弘

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アニメーションズ・ブリッジ

毎クールごとに膨大な量が放送されるアニメ。漫画やライトノベルを原作としたもの、もしくは原作なしのオリジナルと、そこには新たな作品・表現との出会いが待っている。 連載「アニメーションズ・ブリッジ」では、数々の作品の中から、アニメライター兼ライトノベルライターである筆者が、アニメ・ラノベ etc.を橋渡しする作品をピックアップ。 「このアニメが好きならこの原作も」、そして「こんな面白い新作もある」と、1つの作品をきっかけにまだ見ぬ名作への架け橋をつくり出していく。

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