連載 | #11 アニメーションズ・ブリッジ

アニメ『リコリス・リコイル』は視聴者を逃さない 絶対に“観てしまう”画面づくり

千束とたきなの関係性を引き立てるレイアウト

ということで、序文から戻って本題である。錦木千束と井ノ上たきなの関係性についてだ。

とある事件で犯人を射殺すべく、命令違反をしてしまったたきなは、喫茶リコリコに島流しされてしまった。しかし、事件について怪訝に感じる彼女は、リコリコの転属に納得がいっていない。その不器用な性格のまま千束に接していた。

だが、朗らかな千束と過ごしていく中で、バディとして信頼されていたことを知る。苦手意識も振り払い、ついには「千束」と呼び捨てにするほどに関係性が深まっていくのである。 いみぎむるのキュートなデザイン(キャラクター原案ではなく、漫画家がアニメ用の設定画を描いているのがポイント)もさることながら、足立監督のフェティッシュな画面づくりが二人の関係性を引き立たせる。ブラ紐の執拗な描き方や、着用している状態では女性用ショーツを描かない徹底した演出プランにも驚嘆だ。

……と書いてしまうと、一部のアニメファン向けの作品なのか、と思われてしまいそうだが、そういうわけではない。例えば第3話まで、まだ心を開ききっていないたきなは、頑なに千束の隣の席には座ろうとしない。電車はもちろん向かい合わせ。そこで交わされる会話も、どこかぶっきらぼうである。

だが、第3話のある出来事を経て、たきなは千束の隣に座るようになった。そして心を開き、千束へ笑みを浮かべるようになる。光の当て方も鮮やかで、とにかく「画面を観たい!」と30分間思わせるようなレイアウト(キャラや背景の配置を含めた画面の構図)が徹底されているのが『リコリス・リコイル』の面白いポイントの一つだ。

千束がたきなを抱き上げて回転するシーン

風に吹かれる直前のたきな。この直後……

髪を風で揺らしながら空を見上げる/以上、画像は『リコリス・リコイル』PVより

同じく第3話で千束がたきなを抱き上げて回転するシーン、第4話でカフェにいるたきなが髪を風に揺らしながら空を見上げるシーン、第5話終盤の仰向けの千束の胸にたきながもたれかかるシーンなどなど、どの話数でも必ず視聴者を引き込むシーンが存在する。それらは作画に加え、レイアウトの巧みさによってもたらされるある種の違和感。センスとも言い換えられる、これまでのアニメにはなかった演出だ。

しかし忘れてはならないのが、二人のいる場所は硝煙の匂いがする場所ということである。いつ命が失われるか分からない。ハッカーを護衛していると思えば、車が乗っ取られて突如の銃撃戦なんてことも日常茶飯事。

この直前のカット、旅行カバン越しに仰向け状態のレイアウトが秀逸だ。

旅行カバンを盾にしてたきなが戦うカットは、中腰ではなく仰向けで、咄嗟の判断というのが画面越しに伝わってくる(このレイアウトも素晴らしい──カバンの大きさから中腰では防げない→仰向けという判断、直後の体勢を真上から描いている ※第2話)。そんな中で育まれる彼女たちの友情の行方はいかに──!?(ちなみに筆者は千束派です)。

『リコリス・リコイル』は毎週土曜日23時30分からTOKYO MX、BS11などで放送中のほか、Netflix、Amazon Prime Videoなどでも配信中だ。
OPラストの2人が蹴り合うシーンもぜひ
1
2
3
この記事どう思う?

この記事どう思う?

もう1本アニメを観たいならこちら

作品情報

リコリス・リコイル

原作
Spider Lily
監督
足立慎吾
ストーリー原案
アサウラ
キャラクターデザイン
いみぎむる
副監督
丸山裕介
サブキャラクターデザイン
山本由美子
総作画監督
山本由美子、鈴木 豪、竹内由香里、晶貴孝二
銃器・アクション監修
沢田犬二
プロップデザイン
朱原デーナ
美術監督
岡本穂高、池田真依子
美術設定
六七質
色彩設計
佐々木 梓
CGディレクター
森岡俊宇
撮影監督
青嶋俊明
編集
須藤 瞳
音響監督
吉田光平
音楽
睦月周平
制作
A-1 Pictures
オープニングテーマ
ClariS「ALIVE」(SACRA MUSIC)
エンディングテーマ
さユり「花の塔」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
キャスト
錦木千束:安済知佳
井ノ上たきな:若山詩音
中原ミズキ:小清水亜美
クルミ:久野美咲
ミカ:さかき孝輔

■あらすじ
平穏な日々――その裏には秘密がある
犯罪を未然に防ぐ秘密組織――「DA(ディーエー)(Direct Attack)」。
そのエージェントである少女たち――「リコリス」。
当たり前の日常も、彼女たちのおかげ。
歴代最強のリコリスと称されるエリート・錦木千束、
優秀だけどワケありリコリス・井ノ上たきなが
働く喫茶「リコリコ」もその支部のひとつ。
ここが受けるオーダーは、コーヒーやスイーツの注文から、
こどものお世話、買い物代行、外国人向けの日本語講師 etc、
「リコリス」らしからぬものばかり。
自由気ままな楽天家、平和主義の千束と
クールで効率主義のたきな、
二人の凸凹コンビのハチャメチャな毎日がはじまる!

■放送情報
・TOKYO MX 7 月 2 日より 毎週土曜 23:30~
・とちぎテレビ 7 月 2 日より 毎週土曜 23:30~
・群馬テレビ 7 月 2 日より 毎週土曜 23:30~
・BS11 7 月 2 日より 毎週土曜 23:30~
・ABC テレビ 7 月 6 日より 毎週水曜 26:14~
・メ~テレ 7 月 7 日より 毎週木曜 26:15~
・AT-X 7 月 4 日より 毎週月曜 22:00~
※放送日時は編成の都合等により変更となる場合もございます。予めご了承下さい。

■配信情報
・ABEMA
7月2日より毎週土曜23:30配信開始
・ほか各配信プラットフォーム
7月5日より毎週火曜正午以降、順次配信開始
GYAO! / ニコニコ生放送 / ニコニコチャンネル / Prime Video / Netflix / d アニメストア / d アニメストア ニコニコ支店 / d アニメストア for Prime Video / U-NEXT / アニメ放題 / バンダイチャンネル / Hulu / J:COM オンデマンド / TELASA / milplus / au スマートパスプレミアム / FOD / WOWOW オンデマンド / ひかり TV / Video Market / music.jp / GYAO!ストア / TVer
※配信開始日・配信日時は編成等の都合により変更となる場合もございます。予めご了承ください。

関連情報をもっと読む

関連キーフレーズ

連載

アニメーションズ・ブリッジ

毎クールごとに膨大な量が放送されるアニメ。漫画やライトノベルを原作としたもの、もしくは原作なしのオリジナルと、そこには新たな作品・表現との出会いが待っている。 連載「アニメーションズ・ブリッジ」では、数々の作品の中から、アニメライター兼ライトノベルライターである筆者が、アニメ・ラノベ etc.を橋渡しする作品をピックアップ。 「このアニメが好きならこの原作も」、そして「こんな面白い新作もある」と、1つの作品をきっかけにまだ見ぬ名作への架け橋をつくり出していく。

0件のコメント

※非ログインユーザーのコメントは編集部の承認を経て掲載されます。

※コメントの投稿前には利用規約の確認をお願いします。