テレビや映画館を主戦場にした商業アニメとは異なる日本発の「インディーアニメ」が、国際的な映画祭で注目を集めている。
7月17日から8月3日にカナダ・モントリオールで開催された北米最大のジャンル映画祭「ファンタジア国際映画祭」では、「Anime no bento 2025」と題して短編アニメーション作品を特集。
現地で上映された6作品はいずれも日本発の作品であり、そのうち『LOCA!(ロカ)』が短編アニメーション部門の観客賞で金賞、『轍を越えてゆけ』が同部門で銅賞を受賞した。
【画像】映画祭で上映されたインディーアニメ6作品日本のアニメ界と繋がりのあるファンタジア国際映画祭
ファンタジア国際映画祭は1996年から開催されている北米最大のジャンル映画祭。文字通りジャンル映画を対象とした映画祭で、アクション、ファンタジー、ホラー、SF、アニメ、特撮など、様々な作品が集まってくる。
日本のアニメーション界においては、故・今敏監督の功績を讃え、2012年からアニメ部門の最高賞を「今敏賞」(Satoshi Kon Award)に変更したことでも知られている。
今回「Anime no bento 2025」で特集された『轍を越えてゆけ』は、今敏賞にもノミネートされたが、惜しくも受賞はならなかった。
なお、2025年の今敏賞は中国の『The Girl Who Stole Time』が受賞(外部リンク)。そのほか、日本の商業作品ではアニメーション映画『劇場版モノノ怪 第二章 火鼠』が、長編アニメーション部門・観客賞銅賞を受賞している。
『LOCA!』『鯨を夢む』──映画祭で輝きを放ったインディーアニメ
ファンタジア国際映画祭の短編アニメ特集「Anime no bento 2025」で上映されたのは、SNS上でハッシュタグ「#indie_anime」を中心としたムーブメントでも注目を集めたインディーアニメ6作品。
■「Anime no bento 2025」上映作品
『LOCA!』うったまー/みゃの
『鯨を夢む』Shuzuku
『マミ子のウン子』おおの やすてる
『ダンジョン&テレビジョン』巡宙艦ボンタ
『REDMAN』キム・ソンジェ
『轍を越えてゆけ』Vab.png
映画祭に参加した観客の人気投票によって選ばれる観客賞で金賞を受賞した『LOCA!』は、SNSを通じて集結した総勢35名の学生クリエイター集団・スタジオ3号車のオリジナル短編アニメーション。文明崩壊後の荒廃した世界を舞台に、二人の少女・ハルとタモの旅を描く物語だ。
同部門で銅賞を受賞した『轍を越えてゆけ』は、インディーアニメ制作チーム・スタジオDOTによる作品。同作は大戦後、大量の生物兵器「鉄傀(てっかい)」が放置された世界を舞台に、敗戦国から戦争犯罪への償いとして連れてこられたキャラクターたちによる物語だ。
『轍を越えてゆけ』/画像は公式Xより
今回ファンタジア国際映画祭でワールドプレミア上映を実施しており、年内には国内での劇場公開も決定している(外部リンク)。
また、『鯨を夢む』を手がけたShuzukuさんは、メディアミックス作品「BanG Dream!(バンドリ!)」に登場するバンド・MyGO!!!!!関連のビジュアルのほか、ホロライブVTuber・星街すいせいさんの「みちづれ」のMVなどを手がける人物。
『鯨を夢む』は卒業制作作品として制作されており、声優の一人として、『映像研には手を出すな!』で知られる漫画家・大童澄瞳さんが出演している。
ほかにも、巡宙艦ボンタさん、おおの やすてるさん、キム・ソンジェさんと、注目のクリエイターの作品が、カナダ・モントリオールの地で多くの観客を前に上映された。
フランスでもインディーアニメ特集 世界から注目されるムーブメントに
こうしたインディーアニメを巡っては、6月にフランスで開催されたアヌシー国際アニメーション映画祭でも、併設イベントの中でインディーアニメを特集。
現地ではアニメーター/イラストレーターのはなぶしさんとこむぎこ2000さんら、シーンを牽引するクリエイターが登壇してのカンファレンスも行われた。
TVアニメをはじめとした商業作品とは異なり、個人や少人数のチームで制作されるケースが多いインディーアニメ。それゆえの荒々しさや瑞々しさ、作品から発露する作家性の強さが大きな魅力となっている。
国内でのインディーアニメムーブメントからおよそ5年。今回ファンタジア国際映画祭で上映された作品の中には、そうしたムーブメントを受けてクリエイターが集結し、制作がはじまった作品もある。
こうした海外でのインディーアニメへの注目は、日本で生まれたムーブメントが世界へと伝播していることの現れと言えるかもしれない。商業作品とは異なる動きとして、今後の発展の仕方を考える上でも、海外映画祭への出展は重要な意味を持ちそうだ。
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