連載 | #14 アニメーションズ・ブリッジ

『ぼっち・ざ・ろっく!』から『お兄ちゃんはおしまい!』まで 作画アニメの才能と表現の繋がり

作画祭りが凝縮された最新作『お兄ちゃんはおしまい!』

『お兄ちゃんはおしまい!』

そして2023年1月クール(お待たせしました)──現在放送されている作品に目を向けると、“おにまい”こと『お兄ちゃんはおしまい!』が光り輝いている。

『Go!プリンセスプリキュア』で活躍したアニメーター・藤井慎吾が初めてTVシリーズの監督をつとめ、『傷物語』で八面六臂の活躍を見せた今村亮がキャラクターデザインを担当している作品だ。

本作の特徴は、第1話での主人公・緒山まひろがトイレに行くまでのシーンや、食卓を囲むシーンなど、日常芝居が丁寧なこと。もちろんTS(性転換)ものならではのシーンで作画力が発揮されるところも見どころだが、それ以外の画からも目が離せないほどの力を感じる。

ここは、さすが『無職転生 ~異世界行ったら本気だす~』のスタジオバインド──とも言えるのだが、どちらかと言えば『ヤマノススメ サードシーズン』を手がけた大友寿也プロデューサーの流れを感じることができる。

動きまくるED映像を手がけたのは? エンドカードに米山舞ら

動きすぎて笑ってしまう『お兄ちゃんはおしまい!』ED映像
『お兄ちゃんはおしまい!』第2話では、『ヤマノススメ Next Summit』OP・第9話Bパートや『Do It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふ-』第5話で活躍した伊礼えりが参加したかと思えば、第5話ではスタジオジブリ『海がきこえる』を監督した大ベテラン・望月智充のコンテで引き締める。

エンディングアニメーションはノンクレジット(と言いつつも、撮影が“ちゃっぴぃ”であることからおそらく鈴木典光であると思われるが※)ながら、「ぬるぬる」を超えた「ぬめぬめぬらぬら」とした作画が視聴者の度肝を抜き、エンドカードには米山舞や中村豊が参加……。

TSものということで万人向けではないかもしれないが、ここ最近の「作画祭り」が凝縮された作品のように感じることができ、今期の中では必見の作品である。

※撮影にちゃっぴぃこと武井良幸がクレジットされ、かつ演出等メインの役職がノンクレジットの場合、それは鈴木典光の仕事であるということが、作画ファンの間で知られている。

作画面が注目される三作『プリキュア』『ドラえもん』『グリッドマン』

『グリッドマン ユニバース』

さて、ここまでは放送が終わった作品やある程度放送された作品を取り上げたが、最後に三作品、作画面で注目したいものを簡単ではあるが取り上げたい。

まず、2月5日に放送がスタートした『ひろがるスカイ!プリキュア』。異世界転移ものの要素を織り交ぜながら、史上初の男子プリキュア・成人女性プリキュアをメンバーとするシリーズ第20作目だ。

『ラブライブ!スーパースター!!』の齋藤敦史(キャラクターデザイン)が描く鮮やかなプリキュアたちによる、東映アニメーションならではの作画炸裂回を楽しみにしたい。

次に3月3日公開の『映画ドラえもん のび太と空の理想郷』。大河ドラマ作家・古沢良太によるドラえもんとしても話題のタイトルだ。

本作には、『ワンダーエッグ・プライオリティ』や『22/7 あの日の彼女たち』、『僕はロボットごしの君に恋をする』といった梅原翔太作品に参加してきた小林麻衣子がキャラクターデザインを担当。小林がシンエイ動画時代に参加していて、いわば古巣の『ドラえもん』に新たな風穴を開ける。

そして3月24日に公開される『グリッドマン ユニバース』。『SSSS.GRIDMAN』『SSSS.DYNAZENON』の合体劇場版となる本作は、TRIGGERの演出力・作画力が遺憾なく発揮されることが間違いないタイトルだろう。『プロメア』以来4年振りとなるTRIGGERの劇場新作を楽しみにしたい。

©はまじあき/芳文社・アニプレックス
©︎しろ/アース・スター エンターテイメント/『ヤマノススメ Next Summit』製作委員会
©️IMAGO/avex pictures・DIY!!製作委員会
©ねことうふ・一迅社/「おにまい」製作委員会
©円谷プロ ©2023 TRIGGER・雨宮哲/「劇場版グリッドマンユニバース」製作委員会
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アニメーションズ・ブリッジ

毎クールごとに膨大な量が放送されるアニメ。漫画やライトノベルを原作としたもの、もしくは原作なしのオリジナルと、そこには新たな作品・表現との出会いが待っている。 連載「アニメーションズ・ブリッジ」では、数々の作品の中から、アニメライター兼ライトノベルライターである筆者が、アニメ・ラノベ etc.を橋渡しする作品をピックアップ。 「このアニメが好きならこの原作も」、そして「こんな面白い新作もある」と、1つの作品をきっかけにまだ見ぬ名作への架け橋をつくり出していく。

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