QuizKnock座談会──ファストな情報社会で、彼らが地道に届けてきた“知”

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タナカハルカ

“アンチアテンションエコノミー” メディアに使われないQuizKnockの姿勢

──「(情報摂取の)能動化とファクト」への問題意識からスタートしたQuizKnockですが、その社会課題はこの10年でより深刻化しているように感じています。昨今の情報環境をどう見ていますか?

伊沢拓司 その問題を解決するために、Webメディアを立ち上げたところがあるので。状況が悪化していることには、忸怩たる思いが本当にあります。

一同 (同意のうなずき)

伊沢拓司 これは情報を取り巻くシステム──メディアやプラットフォーム側の変化に従って、言論環境が形づくられた側面が大いにあると思うんですよね。人間が変化したというよりは、システムが変化した。

だからこそ我々は、動画の気軽さとか、文章の重さという特性に良くも悪くも流されずに、「表現したいこと」を主軸に、メディアを道具として使っていきたい。メディアに使われないという姿勢は大切にしたいなと思います

──プラットフォーム側のレコメンドシステムのアルゴリズムに支配されない、といったことですね。

伊沢拓司 もちろんいい面はあるので、それは利用していきたいとは思いますけど。

それこそ、QuizKnockの報告動画は、プロデューサーの福良さん(=ふくらP)さんがタイトルを全部出して、情報を先に出すみたいなことをやっていますからね。

ふくらPさんの結婚報告動画

ふくらP アンチアテンションエコノミーで

一同 (笑)。

伊沢拓司 これは本当に貫いてきた部分だし、そこだけは変わらないかなと思います。

須貝駿貴「『難しいことを簡単に言う』って基本的には無理」

須貝駿貴 ファクトという観点でいうと、伝えたい内容を正確に伝えるのは、簡単なことではないんです。「難しいことを簡単に言う」って基本的には無理なんですよ。そこを僕らは結構大切にしていて。

同時に、情報を伝える際に、分かりやすくするために情報量を“減らす”ことは、必ずしも悪いことだとは考えていないんです。

須貝駿貴さん

須貝駿貴 小学生がいきなり大学レベルの内容を学ばないのと同じで、物事には順番があります。

僕らが発信しているコンテンツにも、そのような順番に沿って知っていくことができるように補足がついているわけです。Web記事であれば引用元をたどることもできますし。

受け手側の人たちもそういうことに気づいてくれたら、自覚的にファクトを確かめていく態度を身につけてもらえば嬉しいな、とは思いますね。

鶴崎修功 新しい技術が登場したことによって、情報環境が大きく変わることがあると思うんですけど、そのような新しい技術に対して「先回り」しておくことが大事だと僕は考えています。

例えば、生成AIが登場したことで、様々なフェイクをつくれるようになりました。こうした技術を自分が使いこなせないと、躍らされる側になってしまいます。逆に、新しい技術を知ったり、使いこなせるようになって、秩序をつくる側になることが大事なのかな、と。

悪い人たちは常に最新技術を悪用しようとしますから、それより先に使いこなせるようにならないと、良い秩序はつくれない。荒らされた後ではもう駄目なんです。

伊沢拓司 そういえば、読売テレビの特番「出川・伊沢のニッポンYABAデータ」で取り上げたんだけど、60代のフィルターバブル(=アルゴリズムなどにより、ユーザーの好みや興味関心に沿って情報が最適化されることで、異なる意見や価値観に触れづらくなってしまう現象)の認知率は約2割なんだって(外部リンク)。

ふくらP 言葉じゃなくて、概念を?

伊沢拓司 そう。そういった仕組みで我々がインターネット上の情報を見ていることを知らない。

鶴崎が「先回りする」って言っていたのがまさにそうなんだけど、まず知っておくって強い。“知”のアンテナをちょっと高めに伸ばしておくというのは、純粋な警戒につながると思います。

もちろん、そこで入れた情報が中途半端だと危ないから、リテラシーもセットではあるんですけれども。僕たちは、地道に“知”を伝えるという活動をやっていきたいなと思っています。

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