新衣装をサプライズ披露──その瞬間、み音の実在感が増す
4曲目「PAN・PAN・PARTY NIGHT」は彼女が作詞に関わっているオリジナル楽曲で、「逃げるが勝ち」がテーマの応援パーティーソングだ。ここで大きな転換があった。
曲がラスサビに向かう中、「ダブルピース掲げてみせて今日のメモリー写真を撮ろう」の歌詞とともに輝く星が降り注ぎ、その中で彼女は新しい3Dモデルへと“変身”した。
画像はYouTubeより
数ヶ月前から新衣装制作の告知はあったが、いつお披露目になるかは明かされていなかったため、歌唱中の衣装替えは視聴者に大きな驚きを呼んだ。配信のチャット欄には「!?」「sugeeeeeeeee」「うおおおおおおおお!」「kawaiiiiiiii」といった反応が流れ、まさにサプライズ演出となった。
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マーチングバンドのモチーフに、楽器と星空のアクセントを加えた新衣装。
その上、この新衣装は単なる衣装ではなかった。例えるなら、“360pから4Kに動きの解像度が上がった”かのような感覚が、彼女の身のこなしから感じられるようになった。彼女が一挙一動、一挙手一投足だけでなく指先にまで意識を向けているのが見てとれた。
また、軸足の切り替えや重心移動の瞬間さえ見えるようになってしまった。性格だけでなく実際の動きもどことなくふわふわとしていた彼女が、新衣装により力強さや重みといった実体感を伴う存在になり、それ以降の彼女のパフォーマンスはまるで2Dモデルから3Dモデルへ“次元を上げた”ような変化を遂げた。
表情においても、とにかく可愛い、そして“あざとい”。その投げかける視線で、カメラ越しに視聴者の心を射抜いてくる。
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スクリーンショットではお伝えできないのが残念だが、彼女は歌唱中の振り付けだけでなく、身のこなし一つひとつが“映える”。後日の配信で「衣装の違いは意識しなかった」と振り返っていたが、新衣装が本来の彼女を見せてくれたのだろうか。
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彼女の魅力は“スクショタイム”でさらに加速していく。
新衣装で5曲目「ファンサ」を歌ったあと、VTuberの新衣装お披露目では定番のスクショタイムがはじまる。実際に配信アーカイブを観て、彼女の可愛さが新衣装だけによるものではないと実感していただきたい。
画像はYouTubeより
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このライブには、過去のライブイベントでみ音さんと共演したVTuber・星夜(セイヤ)さんがカメラマンとして参加している。
手持ちカメラによる撮影はVTuberの3Dお披露目では定番だが、この日はライブの冒頭からラストまで「星夜ちゃんカメラ」の映像が効果的に使われており、み音さんのカメラアピールを余すことなく捉えていた。
右が星夜(セイヤ)さん/画像はYouTubeより
ラストを飾ったみ音の新曲「夜光」は自身の物語
ラストは初公開の新曲「夜光」。み音さんにとって2年ぶりのオリジナル曲だ。
この楽曲では「僕」と「君」の行き違いや絆の再生の物語が描かれており、心情描写には夜空や月明かりが使われている。全編モノローグで綴られた歌詞の中で、「君」の姿は「僕」の視点でのみ描かれているのも特徴だ。
制作者のbaKeさんは自身のXで、「み音さんが歩んだ中で出会った素敵な人達が 闇夜の光であればと、そう願っています」と思いを語っている。
歌唱前、彼女は視聴者に向けて静かにこう語りかけた。
「あなたがみ音と出会ってくれたから、み音はこうして大好きな歌を、音楽をずっと続けることができています」
「いつか別れの日が来たとしても、あなたがみ音のことを覚えていてくださる限り、み音はあなたの心のなかで歌い続けられていたら、嬉しいなと、思います」
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後日の配信で明かされたことだが、「夜光」は彼女のこれまでの5年間を元に制作されているという。彼女の体験の一つひとつがこの楽曲を構成している。
つまり、曲中で描かれない「君」はあなたであり、あなたが彼女との関わりを補って、はじめてこの物語は形になる。「夜光」は彼女と画面越しにいるあなたの物語なのだ。
これから彼女と時間を共有していくにつれて、この楽曲を通して見える物語は変わっていくのだろう。たとえ、あなたが彼女を知ったばかりだとしても、そこから物語は始まっていく──。
歌がはじまった。
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振り付けは、かぐや姫が月に帰っていくシーンを思い描いたという。本人が「かぐや姫のひらひら」と形容している通り、月明かりに舞う羽衣を思わせるような柔らかな動きが印象的だった。
画像はYouTubeより
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「歌うことが大好き」
おそらくどんなVSingerもそう言うだろう。しかし、その気持ちをこれほどライブで体現する存在が他にいるだろうか。彼女は歌声だけでなく振り付けでも楽曲を表現する。彼女の振り付けは踊り手のそれとは異なり、歌詞を台本とした演劇のような印象だ。
VSingerやVTuberのライブステージではあまり見られない“歌詞の身体表現”。彼女の歌は、全身を使う3Dライブでしかできない“視覚的にも理解できる歌”になっており、そこには、ただ一心に「歌を伝えたい」という意志が感じられる。声ばかりが歌ではないのだ。
歌唱は終盤にさしかかり、曲のトーンが静まる。そこからラストへと、曲は一気に展開していく。
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このライブで生じた思いを、全身で表すかのような大きく躍動的な振り付け。彼女にとって、このライブはファンとの交流を再確認するものだったのかもしれない。
「夜光」の振り付けは終始、自身を振り返るように内省的で、視聴者に訴えかけるシーンは無かったように思う。一時的に心が離れてしまった「僕ら」が再会したラストシーンであっても、振り付けにはなんとなくよそよそしさがあったのではないか。
歌がモノローグの一人語りだからだろうか。見方を変えると、彼女の内面が現れているようでもある。彼女にとっての「夜光」はどのように成就するのだろうか。
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「あいがとうございました!」
聞き慣れたはずの彼女の「ありがとう」が、今日はよく耳に入らなかった。
すべてが終わり、画面が暗転しても、興奮は冷めない。祝祭のあとの静けさが残る。
心の中ではまだ彼女の歌が響き続けていた。

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