VTuber/VSingerのみ音(みのん)さんが5月27日、活動5周年を記念した初の3Dワンマンライブ「Kiseki」を自身のYouTubeチャンネルを通じて配信した。
構成/演出/パフォーマンスのいずれにも彼女の思いが込められた唯一無二のライブだった。
まずは、み音さんについて紹介しなければならない。それは単純に彼女が知られていないからだが、それだけではない。一見しただけでは、彼女の魅力が見えてこないからである。
彼女は歌唱力で人を圧倒するような「歌い手」のイメージには、当てはまらないのだろう。そのためか、注目される機会に恵まれても、“大バズリ”や“爆伸び”には無縁だったと思う。だが、彼女には人の心を惹きつける特別な何かがあり、イベント出演のたびに着実にファンを増やしてきた。筆者もその一人である。
筆者は表立って彼女を支援しているわけでも、彼女に認知されているわけでもないが、そんな“後方腕組みニキ”が自身の視点で、今一番伝えたい「彼女の特別さ」を紹介していく。
目次
2020年5月デビュー、個人勢VTuber/VSinger み音とは?
「みなさん、こーんあじゃぱー! み音でーす」
画像はYouTubeより
ライブ中、楽曲のイントロを利用して、彼女が放った言葉だ。ファンにはお馴染みの挨拶だが、なぜ「あじゃぱー」なのか誰も知らない。彼女に由来しているわけでもない。おそらく彼女自身も知らない。
日本語をベースにしながらも言語の枠にとらわれない独特な言葉づかいをするみ音さんは、ゆるやかな語り口調と、優しくも重みのある歌声が魅力のVTuberだ。
「Free VSinger」を名乗る、いわゆる個人勢VSinger(事務所に所属せず、歌を中心に活動するVTuber)だが、実のところは型にとらわれないスタイル(free style)、そして気兼ねのいらない(feel free)存在と言ったほうが、彼女を的確に表せるだろう。
2020年5月にデビューした彼女は、YouTubeを拠点にオリジナル曲/カバー/ショート動画などを意欲的に投稿してきた。日常的に歌枠や雑談、ゲーム配信も行っている。5年間の活動で配信アーカイブ数は1000を超えている。自他共に認める配信好きだ。
配信における彼女のゆるいトークは、国内外のファンから“ゆるっと”支持されている。厄介リスナーもアンチもいない穏やかな配信のなかで、彼女はときおり発狂しつつも、笑顔の絶えない時間をファンと過ごしている。
海外ファンからは親しみを込めて「ponkotsu」と呼ばれ、国内ファンからは愛情の裏返しと言えそうな“イジり”が飛んでくる。その一つひとつに盛大なリアクションを取りながら、高い熱量でツッコミやボケを被せていくのが、彼女の配信スタイルだ。他に類を見ないノリの良さが、彼女の配信の魅力だ。
画像はYouTubeより
一方、ライブでは力強いコールアンドレスポンスと、計算されたカメラアピールで視聴者を自分のノリに引きずり込んでいく。視聴者は彼女の呼びかけに応じるにつれて、心を掴まれて目を離せなくなっていく。
トークのゆるさとライブパフォーマンスの力強さ。初見の視聴者に「ギャップで風邪をひく」と言わせるような二面性を見せる彼女。本稿では今回の3Dワンマンライブを通して、彼女のVSingerとしての側面を紹介していく。
3Dライブ「Kiseki」で体感する、み音とのこれまでの軌跡と出会えた奇跡
ライブが開催された5月27日は、み音さんにとって活動5周年の記念日。これまで歩んできた軌跡を振り返り、奇跡的に出会えた人たちに感謝を伝えたい──そんな思いが「Kiseki」というライブタイトルになったという。
画像はYouTubeより
彼女が3Dライブに出演することは過去にもあったが、今回は特別中の特別。企画も構成も彼女自身による、彼女だけのワンマンライブ。彼女にしかつくれないライブの“晴れ舞台”だ。
セットリストは視聴者と一体となって騒ぐパーティーソング、疾走感あふれるロックチューン、コールで盛り上がるアイドルソングといった多彩なジャンルに加えて、重く内省的な叫びの歌もあり、彼女が歌ってきた楽曲の集大成となる構成だった。
「みなさん、ようこそミノンパークへ! 5thアニバーサリーライブの開幕じゃあ!」
画像はYouTubeより
ライブは「ようこそジャパリパークへ」のカバーで幕を開けた。テーマパークのステージショーを思わせるオープニング。言葉づかいはいつも通りだが、高まった期待感と楽曲のせいか、いつもより元気で力強い印象を受ける。
「雲の上のポンコツぼっち、み音だよー!」
画像はYouTubeより
イントロでも、間奏でも、隙あらば視聴者に呼びかけるみ音。
彼女のライブは視聴者へのアピールがとにかく多い。視聴者を巻き込んでこそのライブなのだ。この5周年記念ライブでも視聴者を自分のノリに巻き込み、画面越しに熱気を共有していく。オンラインの隔たりなど問題にならない。「今回も素晴らしいライブになる」と確信させる開幕だ。
しかし、ライブ序盤で小さなアクシデントが起きた。この日2曲目のオリジナル曲「ノンセンスライフ」の歌唱中にイヤモニ(インイヤーモニター)が外れたのだ。
画像はYouTubeより
動揺はあったようだが、それでも最後まで歌い切り、笑いながら「すいませーん、謝りから入ってしまった」「常にほんと、ドタバタドタバタと」と自分で言ってしまう。
画像はYouTubeより
その普段の配信と変わらない様子は不安を感じさせないばかりか、むしろライブの熱気を一段押し上げた。
過去の3Dライブでも外れそうなイヤモニを耳に押し込む場面や、同じ楽曲で歌詞を間違えるハプニングがあったため、ファンにはいつもと変わらぬ彼女に見えたに違いない。
特別なステージでも“安定”のパフォーマンス。スタジオでは信頼できる人たちに囲まれて、緊張は無かったという。協力者がいるほど実力を発揮できるのも、彼女の強みだろう。

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