「THE HOPE 2023」レポート 世代を跨いだヒップホップの現在と熱狂

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「本当のヒップホップを教えてやるよ」

フェス本編も折り返す頃、Eric.B.Jr.さんが颯爽とステージを闊歩し、「本当のヒップホップを教えてやるよ」と迫力あるエモーショナルなラップを聞かせる。その後すぐに、DJ BULLSETさんの「Jakeのライブが始まるぞ!」の号令と共にJin Doggさんの姿が。ステージを走り回りながら客席を煽り、「ON MY MAMA」ではTAKABOさんを呼び込む。Petzさんとの「Blue」を経て、現在、服役中のREAL-Tさんへメッセージを送ると、そのまま「街風」へ。

そして、印象的なイントロが流れた後にジャパニーズマゲニーズの二人が登場した。スモーキーな雰囲気を纏わせながら呼び込んだのは、紅桜さん。スタンドマイクを持ち、とびきりブルージーに「悲しみの後」に喉を震わせる。「紅、おかえり!」の声が響いた後、さらに、「ganjah ganjah」のコーラスとともにJ-REXXXさんが勢いよくステージへと飛び出し、最後は4人で「最後の一本」を披露。30,000人のオーディエンスとともに、さらに一体感が増した瞬間を作り上げた。

舐達麻 photo by Yusuke Baba(Beyond the Lenz)

夕刻に差し掛かる頃、「BUDS MONTAGE」のイントロと共に舐達麻のパフォーマンスがスタートした。分厚いビートと三人のラップ、そしてお台場に吹く秋風が溶け合い、神秘的にも思える時間だ。「ANGELA」ではANARCHYさんが加わり、その後、G-PLANTSさんが「The Hope Remix」と短く呟いた後に「OUTLAW」のヴァースをキックし始める。コーラス部分に差し掛かるときにステージに現れたのは、Awichさん。予想しなかった大きなサプライズに、会場全体がどよめいた。

後半に向けて、会場のボルテージはまだまだ上がっていく。MonyHorseさんがステージに上がり、NENEさん、JP THE WAVYさんともに「SUSUME」、SANTAWORLDVIEWさんとの「Jet Mode」と、テンポよく客席を沸かせていく。

その後、IOさんがステージに登場。Watsonさんとの「Honto」、新曲「左利きのBenz」と立て続けに聴かせた。Gottzさんとの「SUNSET」の後、後ろのスクリーンには”KANDYTOWN”のロゴが。BSCさん、Dony Jointさん、Ryohuさんが現れて「R.T.N」をキックし、KANDYTOWNが復活したかのような嬉しいサプライズ演出も。

続いてはDJブースにDJ TATSUKIさんが現れ「俺の相方の地元、新小岩に行こうか」と呼びかけてZORNさんの「REP」をプレイ。

ZendamanさんとMUDさんを呼び込み、新曲を披露すると、Gucci PrinceさんやSTICKYさん、Legal-Izeさん、BIG-Tさんら亡くなったラッパーたちへシャウトを送り、Masato Hayashiさん (Pablo Blasta)と「Good Die Young」を披露。

そして、最後にMonyHorseさんとIOさんが再び現れ「TOKYO KIDS」をキック。さらにZeebraさんと般若さんが加わり、リミックスに参加したメンバーも勢揃いした豪華バージョンのパフォーマンスとなった。

そして続いたのはRIEHATA with Rht.のステージ。マイクを持ちながら最高のダンス・パフォーマンスも披露し、日本を代表する人気ダンサー・RIEHATAさんならではのエンターテイメント感満載のライブとなった。

クライマックスの夜

AK-69さん photo by Daiki Miura

日没とともに、赤くステージを彩ったのはAK-69さん。生ギターを携えた迫力ある構成で、自身がラップを始めた27年前を振り返りながら、感慨深いMCとともにグイグイとオーディエンスをAKワールドへと引き込んでいく。「時代がどうなっても奪われないもの、それはアティチュード、魂、生き様。ヒップホップという音楽に誇りを持て」と呼びかけ、圧巻のラップを轟かせた。終盤の「START IT AGAIN」では歌い出しのリリックから30,000人の合唱が響き、その影響力の大きさを伺わせた。

AK-69さんが去った後、ステージにはそのままバックDJ RYOWさんが。CYBER RUIさんとMaRIさんによる「Bling Bling」の後、本邦初公開となる「OSANPO」のリミックスとして、SOCKSさん、そしてR-指定さんと般若さんが加わったスペシャル・バージョンが披露された。そして、般若とR-指定による「ビートモクソモネェカラキキナ」、MCのG.O.T.O.さんが「この曲が世に出て20周年なんです」と前置きし、TOKONA-Xさんの代表曲「WHO ARE U?」に名古屋のOG、"E"qualさん、そしてAK-69さん、さらに紅桜さんが参加した前代未聞のリミックス・バージョンが次々とパフォームされ、観客たちの度肝を抜いた。

そして、続いてステージにはKEIJUさんが。JJJさんを迎えて新作EP『Speed Tape』から「Wind Rise」、そしてJJJさん名義の「STRAND」を披露。Kohjiyaさんも参加し、落ち着いたヴァイブスながら熱のあるKEIJUさんならではのステージで終始オーディエンスを盛り上げた。心地よい夜風とマッチするライブだったのがBIMさん。アッパーなヴァイブスで、C.O.S.A.さんとの「Intelligent Bad Bwoy」や「Buddy」と新曲から代表曲までを繋いでいく。

いよいよライブは後半へ。チルなビートともにPUNPEEさんが現れる。「夜を使い果たして」をラップし、会場はノスタルジックなムードに。「お隣さんより凡人」では日本語ラップの名フレーズを織り込んだ特別なリミックス・バージョンをキックし、BIMさんを呼び込んでの「Night Rider」、そして最後は「タイムマシーンにのって」を披露してステージを去っていく。

ちゃんみなさん photo by Yusuke Oishi (MARCOMONK)

続いて「美人」とともに、ちゃんみなさんのパフォーマンスがスタート。ダンスのフォーメーション、衣装、その歌唱力と、どこを取っても圧倒的な存在感と完成度。新曲「B級」や人気曲「Never Grow Up」を歌い、あっとう間にちゃんみなワールドを作り上げた。「やっとこんなイベントに出ることができた」と思いを吐露する場面も。

クライマックスに近づく中、本人が登場する前から会場では¥ellow Bucksを呼ぶ声が。「Balls Out」で登場し、その瞬間、後方まで一気に観客の手が上がる。C.O.S.A.を迎えた新曲、そしてANARCHYとの「I Know What」を経て、AK-69との「Bussin’」へ。そして、再度AK-69が口を開く。「俺がマイクを置く日をずっと考えている」と切り出し、来年2月に¥ellow Bucksと2マンライブを行うことを発表した。場所は、名古屋を代表する大舞台である日本ガイシホール。AK自ら「(¥ellow Bucksを)デカいステージに連れていきたい」と呼びかけ、その後、「Yessir」のパフォーマンスへと続いた。

BAD HOP photo by Yusuke Kitamura

「THE HOPE」の幕を下ろすヘッドライナー、BAD HOP。この日は金子ノブアキさんらが率いるバンド編成でのライブを披露した。

「全員着いて来い!」とシャウトし、「Kawasaki Drift」からスタート。アグレッシヴなバンド・サウンドは、さらにドライヴ感を増幅させる。ヘヴィーなバンド・アレンジを施した「Friends」や「Highland」は、まさにヘッドライナーとしてふさわしい抜群の仕上がり。「Suicide」、「Bayside Dream」といったエモーショナルな楽曲を挟み、T-PablowがBAD HOPの解散について話を切り出した。

「まだ日本のラッパーが足を踏み入れたことがない場所、最後は東京ドームでライブします」と伝え、スクリーンには2024年2月に解散LIVEが東京ドームで開催される旨が映し出された。最後は、現在制作中だというアルバムから新曲を特別にパフォーム。大きな余韻を残してBAD HOPのメンバーがステージを去った後には、大輪の花火が夜空を彩った。

photo by Masanori Naruse

34組を超えるアーティスト、そして21組にも及ぶDJが参加した「THE HOPE」。多くのサプライズもあり、日本最大規模のヒップホップ・フェスとして伝説的な1日を創り上げ、まばゆい瞬間に溢れた内容となった。
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