RYKEYDADDYDIRTY「ALL GODS BLESS ME」
国内ヒップホップシーンの中でも特にお騒がせな存在であったRYKEYさんがついに出所。RYKEYDADDYDIRTYとしてリスタートを切った。待望のアルバムとなった『RYKEYDADDYDIRTY』では、破天荒なRYKEYDADDYDIRTYさんの普段の印象とは打って変わり、獄中での贖罪や祈り、家族と向き合う様が多く描かれている。
彼にしか歌えない祈りのラップは芯に迫る。「深すぎる」の一言で済ますのは本当に深すぎるRYKEYDADDYDIRTYさんの精神世界。今後の躍進が約束された力強くも優しい楽曲。
Awich「Queendom (Prod. Chaki Zulu)」
2022年上半期のヒップホップトピックスといえば、間違いなくAwichさんの躍進だろう。3月に行われた武道館ワンマンを皮切りに、メジャーシーンでも目覚ましい活躍を見せている彼女は、名実ともに、今国内で最も勢いがあるラッパーとなった。
「Queendom」は、そんな彼女が渡米、娘の誕生、今は亡き夫との別離、そして武道館に立ち、極東の女王となるまでをまとめた1曲。
Chaki Zuluさんの緊迫感と高揚感を併せ持ったトラックに、Awichさんの力強い声と突き進むようにドライブしていくフロウ。2022年だけでなく、日本のヒップホップ史の中でも外すことができない名曲だ。
DJ TATSUKI feat. IO & MonyHorse「TOKYO KIDS」
美空ひばりさんの往年の名曲をサンプリングした1曲。そもそも美空ひばりさんの曲がサンプリングされるのは初、ヒップホップとのコラボも初。前例のない初めて尽くしの楽曲が実現した。楽曲には、幼少期から彼女の曲に親しんできたというDJ TATSUKIさんが「粋な東京」を発信したいという思いが込められている。MVには、松竹から提供を受けた映画『東京キッド』に出演する美空ひばりさん自身も登場。この曲が誕生したこと自体が、2022年のヒップホップにはそれを実現してみせる実力があることを証明している。
然るべき面子で、然るべきメッセージを乗せて日本の歌謡曲を鮮やかにサンプリングしてみせたDJ TATSUKIさんさんのセンスと、それにそれぞれのスタイルで見事に応えたIOさんとMonyHorseさん。日本のヒップホップの現在地とその可能性を力強く示している1曲と言える。
Dios「紙飛行機」
いわゆるヒップホップシーンの「外側」にも、ヒップホップとして語られるべき名曲は存在する。元「ぼくのりりっくのぼうよみ」のたなかさんが、バンド・Diosとして発表した初のラップソング。ドライブがかったエレキギターサウンドにグリッチホップのビートというサウンドメイクは、昨今のラップ/ヒップホップシーンでは珍しい。そのアグレッシブなトラックに乗せ、たなかさんによるフロウとメロディが融合したラップが飛び交う。
フックの冒頭“展望台のうえ ゆめ きぼう 載せ放たれた紙飛行機”のリズムに痺れる。
SATOH「FIFA feat. Only U」
Lingnaさんとkyazmさんからなるネオハイパーポップデュオ・SATOHが、Only Uさんを客演に迎えてリリースした1曲。邦ロックやオルタナティブヒップホップの影響を受け、ハイパーポップ的な楽曲をリリースしてきたSATOHらしく、夏っぽいチルで清涼感ある曲に仕上がっている。
アンビエントな雰囲気のある透き通ったビートもそうだが、面倒なことは適当にいなしつつ、サッカーを見たりゲームをしたり、やりたいことをやって自分たちは上に登っていくというLingnaさんとOnly Uさんのバースが爽やかに現代的な感覚を描き出している。
「惜しまずに使ってるチート/怖いならSetチャイルドシート」というリリックも、現代的なアウトローコンテンツでありながらタフというよりは肩の力が抜けた感じがして最高。
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日夜生み出される現象や事象を“ポップなまとめ記事”として紹介する人気連載。 いま注目を集めるジャンル、気になったときにチェックしたいトレンド──。 KAI-YOUでは「POP」を軸に、さまざまな対象をまとめて紹介していきます。
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