『第72回 NHK 紅白歌合戦』に、「歌い手」史上初めて出演するまふまふさん。
彼が歌唱する「命に嫌われている。」は、クリエイティブレーベル・KAMITSUBAKI STUDIO所属のカンザキイオリさんによって制作された、VOCALOID(ボーカロイド)・初音ミクが歌う「ボカロ曲」だ。命に嫌われている。/初音ミク
元々、いわゆる「歌ってみた」の題材にはボカロ曲が選ばれることが多い。ボーカロイドによるメロディラインを人間が歌うことで表現の違いを楽しめるし、時には「歌ってみた」がボカロ曲と出会うきっかけにもなる。ボーカロイド文化に親しみのない層への橋渡しとなることさえある。
もちろん「歌ってみた」はあくまでも二次創作であり、このエンタメ・カルチャーが成立しているのは、本家たる原曲があってこそだ。
今回は2021年を振り返って、ボーカロイド・シーンだけでなく、「歌ってみた」でも注目を集めたボカロ曲を10曲紹介する。この記事で気になる曲を見つけたら、ぜひ原曲を聴いてみてほしい。
「ボカロ曲」の定義には諸説あるが、今回は「The VOCALOID Collection」の対象作品範囲を参考に、「本家がVOCALOID、初音ミクNT、UTAU、CeVIO、歌うボイスロイド、NEUTRINO、SynthesizerV…などすべての音声合成ソフトウェアで歌われているもの」とした。
・対象内の例:人間歌唱とボカロ歌唱が同時公開された曲
・対象外の例:初公開時は人間歌唱のみで、後日ボカロカバーが作者本人または第三者によって公開された曲
今やボカロ界のレジェンドとなったDECO*27さんは、「モザイクロール」「ゴーストルール」「愛言葉」「乙女解剖」と数々の大ヒットソングを生み出している。そんな彼が“新しい代表曲”を目指してつくったのが本楽曲だそうだ。
曲はもちろん、DECO*27さんが所属するクリエイターチーム・OTOIROによるMVのイラスト・動画も印象に残る。血液を思わせる真っ赤な背景に、マスクを外して牙を見せる初音ミクには、コロナ禍でマスクせざるをえない昨今の情勢ともリンクする。
それもあってか、YouTubeで「歌ってみた」動画を検索すると、オリジナルをリスペクトしたサムネイルが並ぶ。スカイピースやコムドットのやまとさん、ヴァンゆんなど人気YouTuberがカバーしたことでも話題になった。
繰り返し登場する“フォニイ”という言葉の浮遊感や、「パパッパラパッパララッパッパ」「タタッタラタッタララッタッタ」部分のリズム感も印象に残り、ふとしたときに口ずさんでしまう一曲。
まふまふさん、めいちゃん、メガテラ・ゼロさんといった実力派の歌い手はもちろん、星街すいせいさん、町田ちま、戌亥とこさんなどバーチャルYouTuber(VTuber)もこぞってカバーした。
そのひとつ、「キュートなカノジョ」はsyudouさんが初めて初音ミク以外のボーカロイド(CeVIO AI)を使って制作した曲。可不はバーチャルシンガー・花譜さんの音楽的同位体として誕生したのだが、本楽曲は可不と花譜さんとのデュエットMVも注目された(外部リンク)。
狂気的なイラストとともに放たれる、浮気をテーマにしたダークソング。戌亥とこさん、ユキムラチャン!さん、猫又おかゆさん、鹿乃さんといった女性シンガーだけでなく、すとぷりのころんさん、Nくん(cv.岡本信彦さん)、超学生さんなど男性シンガーも挑戦している。
楽曲だけでなくMV・イラストや動画までをピノキオピーさんが手がけており、2021年9月17日投稿にして、YouTubeでは早くも1,000万回再生を突破。
最近ではホロライブ6期生のラプラス・ダークネスさんがデビュー後初の歌ってみた作品にチョイス。また、まふまふさんと天月さんがコラボして「歌ってみた」動画を投稿した。
投稿後からボカロファンの間で聴かれていたが、その後TikTokでイラストレーター・アルセチカさんが描いたポーズを振り付けに入れた「フィンガーダンス」が大流行し、一般層まで広がる爆発的ヒットに。
TikTokにおける再生回数や影響力など総合的な判断で決まる「TikTok 2021年上半期楽曲ランキング」では堂々の1位となった。
音楽コラボSNS・nanaを運営するnana musicの調査によると、「2021年最も歌われたボカロ曲」ランキングの2位にランクイン。Kanariaさんは3位に「エンヴィーベイビー」もランクインしており、若手ながらボカロ界を代表する一人となっている。
キズナアイ(Kizuna AI)さんや葛葉さん、Gawr Gura(がうる・ぐら)さんとMori Calliope(森カリオペ)さんによるデュエットなど、世界的に影響力を持つVTuberが続々とカバー。
YouTubeで公開されているユーザー生成コンテンツのみを集計した「2021年上半期Billboard JAPAN Top User Generated Songs」では1位に輝いた。
MVのコミカルながらどこかダークなアニメーションも人気の秘密の1つ。サビの「フィンガーダンス」はTikTokでも格好の課題曲となっており、YouTubeでは「踊り手」による「踊ってみた」動画も多数投稿されている。
歌い手では天月さん、un:cさん、Souさん、いゔどっとさん、超学生さんなどがカバーした。
「マーシャル・マキシマイザー」では持ち味のシンセサウンドとリズム感の良いワードチョイスはそのままに、よりポップなサウンド構成となっている。ころんさん、Souさん、ウォルピスカーターさん、あらきさんなど高音域に強い歌い手がカバーした。
初音ミクが発売されて間もない2007年末から「ささくれP」の名でボカロP活動を始め、チップチューン系のサウンドと物語性のある歌詞で独自の世界観を紡いできたsasakure.UKさん。
退廃する世界を、底抜けにポップなサウンドと、ピクセルアーティスト・APO+さんが手がけたドットアニメで表現する「トンデモワンダーズ」は、彼の真骨頂とも言える曲だろう。
浦島坂田船のうらたぬきさん、すとぷりの莉犬さん、尾丸ポルカさんなどがソロでカバーしているほか、原曲が初音ミク・KAITOでデュエットしていることになぞらえてにじさんじの相羽ういはさん・長尾景さんが男女デュエットを投稿した。
※記事初出時、一部表記に誤りがございました。お詫びして訂正いたします。
彼が歌唱する「命に嫌われている。」は、クリエイティブレーベル・KAMITSUBAKI STUDIO所属のカンザキイオリさんによって制作された、VOCALOID(ボーカロイド)・初音ミクが歌う「ボカロ曲」だ。
もちろん「歌ってみた」はあくまでも二次創作であり、このエンタメ・カルチャーが成立しているのは、本家たる原曲があってこそだ。
今回は2021年を振り返って、ボーカロイド・シーンだけでなく、「歌ってみた」でも注目を集めたボカロ曲を10曲紹介する。この記事で気になる曲を見つけたら、ぜひ原曲を聴いてみてほしい。
「ボカロ曲」の定義には諸説あるが、今回は「The VOCALOID Collection」の対象作品範囲を参考に、「本家がVOCALOID、初音ミクNT、UTAU、CeVIO、歌うボイスロイド、NEUTRINO、SynthesizerV…などすべての音声合成ソフトウェアで歌われているもの」とした。
・対象内の例:人間歌唱とボカロ歌唱が同時公開された曲
・対象外の例:初公開時は人間歌唱のみで、後日ボカロカバーが作者本人または第三者によって公開された曲
目次
ヴァンパイア(初音ミク)/DECO*27
“あたしヴァンパイア”と、「ア」が急に1オクターブ近く高くなるサビのメロディが印象的な「ヴァンパイア」。今やボカロ界のレジェンドとなったDECO*27さんは、「モザイクロール」「ゴーストルール」「愛言葉」「乙女解剖」と数々の大ヒットソングを生み出している。そんな彼が“新しい代表曲”を目指してつくったのが本楽曲だそうだ。
曲はもちろん、DECO*27さんが所属するクリエイターチーム・OTOIROによるMVのイラスト・動画も印象に残る。血液を思わせる真っ赤な背景に、マスクを外して牙を見せる初音ミクには、コロナ禍でマスクせざるをえない昨今の情勢ともリンクする。
それもあってか、YouTubeで「歌ってみた」動画を検索すると、オリジナルをリスペクトしたサムネイルが並ぶ。スカイピースやコムドットのやまとさん、ヴァンゆんなど人気YouTuberがカバーしたことでも話題になった。
フォニイ(可不)/ツミキ
脳裏に残るメロ運び、良い意味で予想を裏切る曲展開、文学的な歌詞……そうしたもともとツミキさんが得意とするスタイルと、可不のやわらかい歌声が絶妙にマッチし、新しい世界をつくり上げている「フォニイ」。繰り返し登場する“フォニイ”という言葉の浮遊感や、「パパッパラパッパララッパッパ」「タタッタラタッタララッタッタ」部分のリズム感も印象に残り、ふとしたときに口ずさんでしまう一曲。
まふまふさん、めいちゃん、メガテラ・ゼロさんといった実力派の歌い手はもちろん、星街すいせいさん、町田ちま、戌亥とこさんなどバーチャルYouTuber(VTuber)もこぞってカバーした。
キュートなカノジョ(可不)/syudou
Adoさんの「うっせぇわ」でその名を轟かせたsyudouさん。ボカロPとしては、「爆笑」「ビターチョコデコレーション」「コールボーイ」などボカロ曲でも多数のヒット曲を生み出している。そのひとつ、「キュートなカノジョ」はsyudouさんが初めて初音ミク以外のボーカロイド(CeVIO AI)を使って制作した曲。可不はバーチャルシンガー・花譜さんの音楽的同位体として誕生したのだが、本楽曲は可不と花譜さんとのデュエットMVも注目された(外部リンク)。
狂気的なイラストとともに放たれる、浮気をテーマにしたダークソング。戌亥とこさん、ユキムラチャン!さん、猫又おかゆさん、鹿乃さんといった女性シンガーだけでなく、すとぷりのころんさん、Nくん(cv.岡本信彦さん)、超学生さんなど男性シンガーも挑戦している。
神っぽいな(初音ミク)/ピノキオピー
現代人に流れる風潮を、リアリティとユーモアたっぷりに皮肉った中毒ソング「神っぽいな」。初音ミクが歌っていることもそのメッセージ性を強めている。楽曲だけでなくMV・イラストや動画までをピノキオピーさんが手がけており、2021年9月17日投稿にして、YouTubeでは早くも1,000万回再生を突破。
最近ではホロライブ6期生のラプラス・ダークネスさんがデビュー後初の歌ってみた作品にチョイス。また、まふまふさんと天月さんがコラボして「歌ってみた」動画を投稿した。
グッバイ宣言(v flower)/Chinozo
2020年4月に投稿された曲だが、後述するヒットの経緯もあって2021年に入ってからより多く歌われていた「グッバイ宣言」。歌い手、YouTuber、VTuber、アーティスト、ゲーム実況者、さらにはお笑い芸人など、様々なジャンルの活動者にカバーされた。投稿後からボカロファンの間で聴かれていたが、その後TikTokでイラストレーター・アルセチカさんが描いたポーズを振り付けに入れた「フィンガーダンス」が大流行し、一般層まで広がる爆発的ヒットに。
TikTokにおける再生回数や影響力など総合的な判断で決まる「TikTok 2021年上半期楽曲ランキング」では堂々の1位となった。
KING(GUMI)/Kanaria
Kanariaさんの第二作目として、2020年8月2日に投稿された作品。2021年に入ってからも多くの活動者たちが様々なプラットフォームでカバーした。音楽コラボSNS・nanaを運営するnana musicの調査によると、「2021年最も歌われたボカロ曲」ランキングの2位にランクイン。Kanariaさんは3位に「エンヴィーベイビー」もランクインしており、若手ながらボカロ界を代表する一人となっている。
キズナアイ(Kizuna AI)さんや葛葉さん、Gawr Gura(がうる・ぐら)さんとMori Calliope(森カリオペ)さんによるデュエットなど、世界的に影響力を持つVTuberが続々とカバー。
YouTubeで公開されているユーザー生成コンテンツのみを集計した「2021年上半期Billboard JAPAN Top User Generated Songs」では1位に輝いた。
エゴロック(鏡音レン)/すりぃ
「テレキャスタービーボーイ」などで知られるすりぃさんによる疾走感あふれるロックナンバー。「エゴロック」は2018年にショートver.が投稿されており、3年越しにロングverが公開された。本家のYouTube再生数は1000万回を超え、Adoさんやすとぷりのななもり。さん、メガテラ・ゼロさん、三枝明那さんなどがカバーしている。MVのコミカルながらどこかダークなアニメーションも人気の秘密の1つ。サビの「フィンガーダンス」はTikTokでも格好の課題曲となっており、YouTubeでは「踊り手」による「踊ってみた」動画も多数投稿されている。
シャンティ(KAITO)/wotaku
裏社会のビジネスをモチーフとした語り口調の歌詞、テンポよく挿し込まれる銃声や声ネタ、ガラスの割れる効果音が、恐怖感と臨場感を掻き立てる「シャンティ」。ところどころわざと音程を外してセリフのようにアレンジするなど、自分の声を活かして個性を魅せやすい曲でもある。歌い手では天月さん、un:cさん、Souさん、いゔどっとさん、超学生さんなどがカバーした。
マーシャル・マキシマイザー(可不)/柊マグネタイト
柊マグネタイトさんは、ボカロの祭典「The VOCALOID Collection」の第1回ルーキーランキング覇者。11分32秒ある「或世界消失」を筆頭に、柊マグネタイトさんの初期作品は歌モノというより「聴かせるボカロ曲」として完成していたが、作品を重ねる度ポップスへと変化していった。「マーシャル・マキシマイザー」では持ち味のシンセサウンドとリズム感の良いワードチョイスはそのままに、よりポップなサウンド構成となっている。ころんさん、Souさん、ウォルピスカーターさん、あらきさんなど高音域に強い歌い手がカバーした。
トンデモワンダーズ(初音ミク+KAITO)/sasakure.UK
「トンデモワンダーズ」は、ゲームアプリ「プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク」のために書き下ろされたもの。テーマパークのようなセカイでショーを行う、「ワンダーランズ×ショウタイム」のユニット楽曲だ。初音ミクが発売されて間もない2007年末から「ささくれP」の名でボカロP活動を始め、チップチューン系のサウンドと物語性のある歌詞で独自の世界観を紡いできたsasakure.UKさん。
退廃する世界を、底抜けにポップなサウンドと、ピクセルアーティスト・APO+さんが手がけたドットアニメで表現する「トンデモワンダーズ」は、彼の真骨頂とも言える曲だろう。
浦島坂田船のうらたぬきさん、すとぷりの莉犬さん、尾丸ポルカさんなどがソロでカバーしているほか、原曲が初音ミク・KAITOでデュエットしていることになぞらえてにじさんじの相羽ういはさん・長尾景さんが男女デュエットを投稿した。
※記事初出時、一部表記に誤りがございました。お詫びして訂正いたします。
みんなの好きなボカロ曲は? SNSやコメントまで!
この記事どう思う?
連載
日夜生み出される現象や事象を“ポップなまとめ記事”として紹介する人気連載。 いま注目を集めるジャンル、気になったときにチェックしたいトレンド──。 KAI-YOUでは「POP」を軸に、さまざまな対象をまとめて紹介していきます。
4件のコメント
匿名ハッコウくん(ID:6599)
命に嫌われているもフォニイも良い!
匿名ハッコウくん(ID:6598)
良い曲ばっかりだ〜
匿名ハッコウくん(ID:5206)
たくさんの曲があって、たくさん聞けて嬉しい!
もっと、こういう記事を作って欲しい!