ボーカロイド文化の祭典として、10月14日(木)から17日(日)にかけて開催されている「The VOCALOID Collection ~2021 Autumn~」(通称・ボカコレ2021秋)。
ニコニコ動画を中心としたネット上を舞台に、生放送やリミックス企画、Stemデータ(※)の配布など、様々な形で人気ボカロPが登場。ボカロに関わる多くのクリエイターや企業はもちろんユーザーも参加する、今回で3回目を迎えるイベントだ。
KAI-YOU.netでは今回、「うっせぇわ」や「ギラギラ」「踊」などオリジナル楽曲でも次々ヒットを飛ばす歌い手・Adoさんへインタビュー。
第1回からボカコレに注目してきたというAdoさんは、syudouさんやてにをはさん、DECO*27さん、みきとPさんら、数多くのボカロPとともに楽曲をつくり上げてきた。
メガヒットとした楽曲と自身との距離感、日常的なボカロや音楽との触れ合い方、そして「そんな贅沢なことがあっていいのか!?」と語ったボカコレについて、その思いを率直に語ってもらった。
取材・執筆:ゆがみん 編集:小林優介
※ボーカルや各楽器のパートごとの音源データをまとめたファイルのこと。
Ado それが全く……! 全くだったんですけど、「奇跡かな?」と思えるくらいボカロが好きな子と出会って仲良くしていたんです。クラスでボカロ好きは本当にごく少数でした。
その子と仲良くなったきっかけは、ある日「カゲロウプロジェクト」のファイルを持ち歩いてるのを見かけて「あの子は誰だ!? 話しかけに行くぞ!」って(笑)。
そんなにコミュニケーション能力はなかったんですけど、なんとか話すようになれて、話の合う友人はとても貴重でした。
──その後、ボカロが誰とでも話せる話題になったと感じたターニングポイントはどこでしたか?
Ado ピンポイントでここというタイミングはないですね。
それでもやっぱり、進学していくにつれて、小学生のときに比べたら話しやすくなったと感じます。「あぁ、初音ミクでしょ?」みたいな。メジャーシーンでボカロ出身の方やボカロPさんが活躍することが増えた影響もあって、結構伝わりやすくはなったのかなって。
昔だったら「私はこういうのを聞いてるんだ」って言っても、「え?」みたいな反応で、「初音ミクっていうのがいて~」っていうところからはじまって、いろいろ説明しないといけなかったんです。
今はその頃よりも初音ミクっていう存在がより浸透したのかなって思います。ネット上でも耳にする方は増えたんじゃないかな。
Ado 特にございません。それが魅力でもあり、挑戦しがいのある部分です。歌うのには苦戦するんですけどすごく楽しいですね。
──原曲で使われているボカロによって歌いやすさや表現の違い、自分の歌声に合っていると感じることはありますか?
Ado 何かが影響するわけではないんですけど、v flowerちゃんは結構自分と似てる部分があると思いますね。
──先日、ボカロPのてにをはさんにインタビューさせていただいた中でも、「歌うことに対する明確なビジョンがある」とAdoさんのお話が出てきました。Adoさんが楽曲と向き合う際に大切にしていることはなんでしょうか。 Ado 元の楽曲があってこそ「歌ってみた」があるので、ボカロPさんに対するリスペクトを込めて歌うようにしています。
もっと具体的に言うと、その曲にはちゃんとその曲の意味やストーリーがある。歌詞もただの言葉ではなく、ちゃんとボカロPさんの思いやその世界観というものがあります。
そこをいかに崩さず歌詞の意味を表現するか、いかに上手に表現するか、かつ自分がどう表現したいのか、というのを大事にしています。
──そのうえで、「うっせぇわ」や「踊」のようなご自身の楽曲に歌われている歌詞との距離感や、MVに登場するキャラクターや人格への気持ちの乗せ方はどう意識されていますか?
Ado どの曲も全部、私自身のことというよりはその歌詞に登場するキャラクターの歌です。私のことではないので、ちょっと演技っぽいなと思ってるところはあります。
「うっせぇわ」だったら「うっせぇわ」のあの子(MVに登場するキャラクター)──うっせぇわちゃんのストーリーを歌で自分が表現している、みたいな。たまにネット上で「Ado」としてうっせぇわちゃんの画像が出されているのを見ると、「それはAdoじゃないよ!」って言いたくなります。【Ado】うっせぇわ
──Adoさんは「うっせぇわ」のヒット以降、若者世代の象徴と扱われている面もあります。ヒットを経て、自分の歌と若者世代というものについて意識はされましたか?
Ado 若者の象徴ではない……と思ってます。普段の私も「うっせぇわ」なんて言わないですし、若者がみんなそう考えているかって言われたら違うと思います。
私が自分の曲としてリリースしていますが、あくまでsyudouさんに書き下ろしていただいたうっせぇわちゃんを表現するために歌ったものですから。それが私の気持ちかと言われたら、はいと言える部分もあれば、いいえという部分もあります。
完全に私を描いているといういうことではないですし、演技に近い部分もあるので、若者の象徴と分析されようがしまいが、私の世代の方たちの支えになっているのであれば、それで十分だなって思います。
Ado 聞きますね。元々私は歌い手さんのいちファンでもあるし、同じ1人の歌い手としてすごいと思う方は本当にたくさんいらっしゃいます。
めいちゃんさんやウォルピスカーターさんは昔から大好きです。表現力もそうですけど、歌唱力とか出す音域とか、原曲を本当に大事にしているのが伝わってきます。
メガテラ・ゼロさんもすごく聞いていました。私の歌い方にも、メガテラ・ゼロさんのがなり方や表現をリスペクトしている部分があります。
──めいちゃんさんやウォルピスカーターさんが原曲を大事にされているというのは、どういう部分から感じますか?
Ado なんでしょう……。選曲からすでに、ボカロを本当に大事にされて、好きなものを歌われているんだなと感じます。
あとは、お二人は原キーで高い声を出されているのが本当にすごいと思います。
私はこの音域が歌えないから仕方なく、下げたり上げたりっていうことがあるんです。もちろん、キーを変えることが何か悪いというではないんですが、私では何度その声を出そうと思っても出せなくて。
本家のボカロの声をそのまま何か取り入れたように再現しつつ、その上でめいちゃんさんやウォルピスカーターさんの表現を上乗せされていて、もう……褒め言葉として「おかしい」と思います。すごいです。
ニコニコ動画を中心としたネット上を舞台に、生放送やリミックス企画、Stemデータ(※)の配布など、様々な形で人気ボカロPが登場。ボカロに関わる多くのクリエイターや企業はもちろんユーザーも参加する、今回で3回目を迎えるイベントだ。
KAI-YOU.netでは今回、「うっせぇわ」や「ギラギラ」「踊」などオリジナル楽曲でも次々ヒットを飛ばす歌い手・Adoさんへインタビュー。
第1回からボカコレに注目してきたというAdoさんは、syudouさんやてにをはさん、DECO*27さん、みきとPさんら、数多くのボカロPとともに楽曲をつくり上げてきた。
メガヒットとした楽曲と自身との距離感、日常的なボカロや音楽との触れ合い方、そして「そんな贅沢なことがあっていいのか!?」と語ったボカコレについて、その思いを率直に語ってもらった。
取材・執筆:ゆがみん 編集:小林優介
※ボーカルや各楽器のパートごとの音源データをまとめたファイルのこと。
目次
カゲプロのファイルを持った同級生を見つけた奇跡
──Adoさんは小学校1年生の頃からボカロに触れていていたそうですが、当時は周りでもボカロが流行っていたんですか?Ado それが全く……! 全くだったんですけど、「奇跡かな?」と思えるくらいボカロが好きな子と出会って仲良くしていたんです。クラスでボカロ好きは本当にごく少数でした。
その子と仲良くなったきっかけは、ある日「カゲロウプロジェクト」のファイルを持ち歩いてるのを見かけて「あの子は誰だ!? 話しかけに行くぞ!」って(笑)。
そんなにコミュニケーション能力はなかったんですけど、なんとか話すようになれて、話の合う友人はとても貴重でした。
──その後、ボカロが誰とでも話せる話題になったと感じたターニングポイントはどこでしたか?
Ado ピンポイントでここというタイミングはないですね。
それでもやっぱり、進学していくにつれて、小学生のときに比べたら話しやすくなったと感じます。「あぁ、初音ミクでしょ?」みたいな。メジャーシーンでボカロ出身の方やボカロPさんが活躍することが増えた影響もあって、結構伝わりやすくはなったのかなって。
昔だったら「私はこういうのを聞いてるんだ」って言っても、「え?」みたいな反応で、「初音ミクっていうのがいて~」っていうところからはじまって、いろいろ説明しないといけなかったんです。
今はその頃よりも初音ミクっていう存在がより浸透したのかなって思います。ネット上でも耳にする方は増えたんじゃないかな。
うっせぇわちゃんはAdoじゃない
──Adoさんはこれまでボカロ曲やオリジナル曲など多くの曲を歌われてきました。ボカロ曲は音程など人間が歌うことを想定してない部分もありますが、苦労している部分はありますか?Ado 特にございません。それが魅力でもあり、挑戦しがいのある部分です。歌うのには苦戦するんですけどすごく楽しいですね。
──原曲で使われているボカロによって歌いやすさや表現の違い、自分の歌声に合っていると感じることはありますか?
Ado 何かが影響するわけではないんですけど、v flowerちゃんは結構自分と似てる部分があると思いますね。
──先日、ボカロPのてにをはさんにインタビューさせていただいた中でも、「歌うことに対する明確なビジョンがある」とAdoさんのお話が出てきました。Adoさんが楽曲と向き合う際に大切にしていることはなんでしょうか。 Ado 元の楽曲があってこそ「歌ってみた」があるので、ボカロPさんに対するリスペクトを込めて歌うようにしています。
もっと具体的に言うと、その曲にはちゃんとその曲の意味やストーリーがある。歌詞もただの言葉ではなく、ちゃんとボカロPさんの思いやその世界観というものがあります。
そこをいかに崩さず歌詞の意味を表現するか、いかに上手に表現するか、かつ自分がどう表現したいのか、というのを大事にしています。
──そのうえで、「うっせぇわ」や「踊」のようなご自身の楽曲に歌われている歌詞との距離感や、MVに登場するキャラクターや人格への気持ちの乗せ方はどう意識されていますか?
Ado どの曲も全部、私自身のことというよりはその歌詞に登場するキャラクターの歌です。私のことではないので、ちょっと演技っぽいなと思ってるところはあります。
「うっせぇわ」だったら「うっせぇわ」のあの子(MVに登場するキャラクター)──うっせぇわちゃんのストーリーを歌で自分が表現している、みたいな。たまにネット上で「Ado」としてうっせぇわちゃんの画像が出されているのを見ると、「それはAdoじゃないよ!」って言いたくなります。
Ado 若者の象徴ではない……と思ってます。普段の私も「うっせぇわ」なんて言わないですし、若者がみんなそう考えているかって言われたら違うと思います。
私が自分の曲としてリリースしていますが、あくまでsyudouさんに書き下ろしていただいたうっせぇわちゃんを表現するために歌ったものですから。それが私の気持ちかと言われたら、はいと言える部分もあれば、いいえという部分もあります。
完全に私を描いているといういうことではないですし、演技に近い部分もあるので、若者の象徴と分析されようがしまいが、私の世代の方たちの支えになっているのであれば、それで十分だなって思います。
Adoがファン・クリエイターとしてリスペクトする先達たち
──ご自身が歌われる際、他の方の「歌ってみた」を参考にされますか?Ado 聞きますね。元々私は歌い手さんのいちファンでもあるし、同じ1人の歌い手としてすごいと思う方は本当にたくさんいらっしゃいます。
めいちゃんさんやウォルピスカーターさんは昔から大好きです。表現力もそうですけど、歌唱力とか出す音域とか、原曲を本当に大事にしているのが伝わってきます。
メガテラ・ゼロさんもすごく聞いていました。私の歌い方にも、メガテラ・ゼロさんのがなり方や表現をリスペクトしている部分があります。
Ado 他にもいろいろな歌い手さんの声・歌を参考にさせていただいていますね。でも自分のくせはほんとどこからついたかわからないけど影響された方で思い浮かんだのはメガテラさん。絶対メガテラさん。
— Ado (@ado1024imokenp) December 8, 2017
──めいちゃんさんやウォルピスカーターさんが原曲を大事にされているというのは、どういう部分から感じますか?
Ado なんでしょう……。選曲からすでに、ボカロを本当に大事にされて、好きなものを歌われているんだなと感じます。
あとは、お二人は原キーで高い声を出されているのが本当にすごいと思います。
私はこの音域が歌えないから仕方なく、下げたり上げたりっていうことがあるんです。もちろん、キーを変えることが何か悪いというではないんですが、私では何度その声を出そうと思っても出せなくて。
本家のボカロの声をそのまま何か取り入れたように再現しつつ、その上でめいちゃんさんやウォルピスカーターさんの表現を上乗せされていて、もう……褒め言葉として「おかしい」と思います。すごいです。
この記事どう思う?
イベント情報
ネット最大のボカロイベント 「The VOCALOID Collection ~2021 Autumn~」
- 開催期間
- 2021年10月14日(木)~17日(日)
- https://vocaloid-collection.jp/
- https://twitter.com/the_voca_colle
- ■協賛
- 東武トップツアーズ株式会社 / #コンパス ライブアリーナ
- ■協力
- 株式会社インクストゥエンター / 株式会社インターネット / 株式会社エクシング(JOYSOUND) / ガイノイド / カクヨム / クリプトン・フューチャー・メディア株式会社 / 産業技術総合研究所 RecMusプロジェクト / 株式会社ソニー・ミュージックレーベルズ / Twitter Japan / 一般社団法人 日本ネットクリエイター協会(JNCA) / 株式会社NexTone / VOCALOMAKETS / ヤマハ株式会社
- ■メディアパートナー
- InterFM897 / MTV / 『GAKUON!』 / JFN / テレビ朝日ミュージック /『バズリズム02』 / 『BOMBER-E!』 / 『RADIO MIKU』
- 「VOCALOID(ボーカロイド)」ならびに「ボカロ」はヤマハ株式会社の登録商標です。
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2件のコメント
小林優介
ご指摘いただきありがとうございます、本記事の編集を担当しました小林です。
大変失礼いたしました。誤字の方修正いたしました。
匿名ハッコウくん(ID:4800)
Adoさんの一面が見られてよかったです!!!
記事に出てきた方のお名前を検索したりなど、新しい知識を追う楽しみが増えました。
一つ誤字かな?という所があったので、一応報告しておきます!
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「ニコニコ超会議」やや「ニコニコ超パーティー」