連載 | #49 ポップなまとめ記事をつくってみた

【2021年】日本のヒップホップ名曲まとめ 新たな才能、クラシックになるべき57選

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SEEDA FT ralph, Kraftykid「Nakamura Remix」

幾つになっても挑戦し続けるラッパー・SEEDAさんの真骨頂とも言うべきドリルテイストの「Nakamura」。

そのリミックスに、日本では珍しくグライム・ドリルといった音楽を積極的に自分のフィールドにして活動するRalphさん、そしてロンドンのKraftykidさんが参加。

常に時代と並走し、若手と積極的に組んできたSEEDAさんの真価がここ数年でさらに花開いていることを象徴する一曲。そこに、それぞれの卓越したラップスキルが炸裂。新たな時代の到来を告げる重要な一曲。

SEEDA「Kawasaki Blue (prod. ghostpops) 」

何を語ればいいだろう、何から語ればいいだろう。川崎にSCARSというヒップホップクルーがいて、そのメンバーにSTICKYという男がいた。

不器用が服着て歩いてるみたいなその男に、SEEDAというこれまた不器用な男が捧げたはなむけ。穏やかなギターリフとドリル調のビートに乗せたSEEDAのバイリンガルラップが痛いほど悲しく沁みる。

「Kawasaki blue and a message in a bottle.」本当にその通りだ。空っぽのボトルに手紙を入れて放流する、ヒップホップは鎮魂歌だとつくづく思う。この夏、初めて音源という形でリリースされたSTICKY『ハイになる』とあわせて聴いてほしい。

RYKEY × BADSAIKUSH (prod.SIBA)「Roots My Roots」

発表は2019年ですが、2021年になってMVが公開。当代きってのリリシストであるRYKEYさんと舐達麻・BADSAIKUSHさんとのコラボ曲。

それぞれのルーツへの思いを乗せたタイトなリリックと、落ち着いた珠玉のビートがそれぞれのかっこよさを引き立てる。

お前にしかできねえ話をさせてくれ。そこで出る話は全て俺の本音」。

RYKEYDADDYDIRTY「CRY NOW SMILE LATER」

破天荒で、でも人間としての魅力にあふれるラッパー・RYKEYさんが、何度目かの逮捕を経て出所した一発目の曲。

ざらついて鋭利な声質で畳みかけるリリックは疾くて、完全復帰の狼煙どころじゃない、その鮮烈さは切れ味を増している。「ノストラダムスを呼んでこい今じゃRYKEYがする大予言」。とんでもない大口、でもそれが許されるどころか信じたくさせるほどにかっこよく響く、それがRYKEY。天性のリリシスト、その本領は十二分に発揮されている。

古今和歌集』の序文をサンプリングした「力をも得ずして大都会を動かして 冷徹なハスラーですら慰むるは歌なり」の一節が秀逸。

SILENT KILLA JOINT & dhrma feat. MU-TON「White Line」

ラッパー・YouTuberの顔を使い分けるSilent Killa Jointさんとビートメーカー・dhrmaさんとのタッグによるアルバム『DAWN』から、若きMU-TONさんを客演に迎えた「White Line」。

物騒な「White Line」というタイトル、煙たいビートにリリックが冴えています。

ラップとYouTubeという食い合わせは良いようにも見えますが、意外と難しい理由は、後者の活動が前者においてはdisの対象になりやすいという点にあります。

その点、Silent Killa Jointさんは株を下げるどころか株を上げている珍しい事例に思います。「Rhymeは日々から生み出しな」のHookが重みを持ちます。

たかやん「大丈夫」

ネットラップシーンから、現在はYouTubeを中心に楽曲を投稿しているたかやんさん。「ぴぇん」「地雷系」と呼ばれる若い女性の共感を呼ぶ楽曲群は、ヒップホップシーンにおいて異質そのものですが、かねてより、そのラップスキル・作曲能力の高さは評価されており、楽曲提供などもひっぱりだこなアーティストです。「ニートtokyo」への出演も話題となった。

「大丈夫」は2021年5月にリリースされたアルバム『ずっと生きてね』の1曲。Chance The Rapperを彷彿させるポップなビートを上で、たかやんさんのポジティブな祈りが緩急のついたフロウで歌いあげられます。

TikTokでも過去曲「手首からマンゴー」を中心に凄まじいバイラルを起こし(すごくエグい歌詞ですが、あんまりTikTokで踊っている人たちは理解していなさそうなところも面白い)、2021年を象徴するラッパーの1人となりました。

ピーナッツくん 「笑うピーナッツくん」

VTuberであり、ゆるキャラであり、ショートアニメの主人公であるピーナッツくん。その実存をもっとも表象するのが「ラッパー」のピーナッツくんでしょう。

2021年6月にリリースされた2ndアルバム『Tele倶楽部』の1曲目となるこの楽曲は、ピーナッツくんと他者との絶対的な差を見せつけるセルフボーストを詰め込んだ楽曲。

nerdwitchkomugichanの狂暴かつ緻密なDrillビートの上で歌うピーナッツくんは、自分だけがオリンピックの競技者で、他のプレイヤーは運動会レベルだと言い放つ。彼の4年に及ぶ地固めと唯一無二のセンスが完膚なきまでに強い説得力を生み出しています。

曲名の通り、ピーナッツくんの笑い声のサンプリングが怖い。

ピーナッツくん「respawn (Prod. nerdwitchkomugichan)」

ピーナッツくんは2021年には2ndアルバム『Tele倶楽部』をリリース。多種多様な女性客演陣を招き、SF的なテーマやモチーフを取り入れながら絢爛豪華な作品に仕上がった。間違いなくヒップホップ史的にも残るべき傑作を残した。

しかし、その後にリリースされた楽曲「respawn」こそピーナッツくんの真骨頂。内省的な情景描写と、活動を停止して"家"に帰りゆく同胞を見送りながら、最後の一人になっても踊り続けるという静かな覚悟を歌うピーナッツくん。VTuberとしてのリアルを完全にヒップホップとして昇華している。

何よりも「適当なラクガキからびっくりするよなコンビ」という歌い出しのリリックがあまりに最高。彼らの物語はオリジナルでしかない。

Tohji, Loota & Brodinski「Naked」

TohjiさんとLootaさんがフランスのプロデューサーBrodinskiとコラボしたアルバム『KUUGA』に収録された「Naked」。

『KUUGA』はTohji関連の作品の中でも特に異質というか、異形というか。初めて通して聴いたときは、その感覚的でありながらも、統一された世界観に一気に飲み込まれてしまった。

その中でも「Naked」は冒頭から激しく変調された声がジェットコースターのような高低差で耳の中を駆け巡るすごい曲。Tohjiさんの異様な発声が癖になって特に聴き込んだ一曲。MVもかっこ良すぎる。

4s4ki feat. Puppet「gemstone」

7月7日にリリースを控えている、4s4kiさんのメジャーデビューアルバム『Castle in Madness』からのシングルカット。アメリカを拠点に活動するシンガー・Puppetさんを客演に招いている。

これまでもHyperpopやEmo Rapなど、ヒップホップの枠をさらに拡張する最新の音楽ジャンルを独自に解釈した楽曲を発表していた彼女。よりその方向性を強く決定づける1曲となった。

日本語ラップに耳馴染みしたリスナーを置いてきぼりにするような尖った楽曲を聴きたいなら、4s4kiさんしか勝たん。他の収録曲もヤバいのしかない。

Yokai jaki「KiLL BILL」

緊急事態宣言やまん防(まん延防止等重点措置)などによって、音楽で踊ったり暴れることがほとんど完全にできなくなった2021年。無軌道な若者たちが「路上飲み」をしているとして、メディアに取り上げられることも増えました。

顔にまだ幼さの残る若干19歳のYokai Jakiさんが生み出す音楽は、そんな状況そのもののアンチテーゼなのではと思わせるほどに暴れ、狂い、反骨的に響きます。

なんの理由もなくMVでは友だち同士で殴り、蹴り合う様だとか、攻撃的なTrap Metalビートの上で言葉を詰め込んだラップ。かつてのハードコアやパンクの勢いを感じさせる稀有な存在です。

こんな時だからこそ、痛快かつ壮快にすら感じさせてくれる。でも現実で出会ったらなるべき距離を保ちたい。下手な半グレより怖い。

Kvi Baba「Fool in the Moon」

鋼田テフロンことBACHLOGICさんがプロデュースしたKvi Babaさんの楽曲。

夜のドライブで聞きたくなるような透き通ったビートによって、Kvi Babaさんの葛藤やそこからの解放が込められた「今夜は馬鹿になって踊っていたい」というリリックがストレートに届く。

冒頭の『恋のマイアヒ』を彷彿とさせるような小刻みのフロウで溜めてからフックでの解放があるため、上記のストレートさも相まって、独特の爽快感を持っている1曲に。

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