HEAVEN (ft. aryy, Lil Soft Tennis) 「BOLT」
関西のコレクティブ・HEAVENの躍進も2021年以降の動きに欠かすことのできないトピックだ。大きな話題となったLil Soft Tennisのレッドブル「RASEN」でのパフォーマンスや、nerdwitchkomugichanの本格的なピーナッツくんをはじめとするプロデュースワークなど、彼ら周辺には閉塞感とは程遠い、常にフレッシュな動きがある。
2000年代のバンド・スーパーカーやTCG『Magic: The Gathering』など、これまでのヒップホップにはない文脈を引用しながら、独自の抜け感のあるラップを聴かせてくれる。
Lil Soft Tennis 「Bring Back」
大阪のアーティスト・Lil Soft Tennisさんの楽曲。MVでも画面が全体的に白飛びするレベルで光り輝いていたり、希望を感じさせるような明るい曲調だったりとぱっと見では明るい曲だが、リックの内容自体は「戻れない二度と 眩しいしグロいから 曲にして残すよ 生活する残像を」など、決してポジティブなだけではないインパクトの強いものになっています。
流して聴いているときにふと歌詞の内容に気を取られたら「なんだこれ!?」と引き込まれること間違いなし。
JP THE WAVY feat. LEX & OZworld「WAVEBODY」
精力的に楽曲リリースも行いノリに乗っているJP THE WAVYさん、LEXさん、OZworldさんという3人による楽曲。「WAVEBODY」の名の通り、JP THE WAVYさんやOZworldさんのメロウなフロウのバースが続いた後に、カマしますよとばかりにLEXさんが登場し締めていく構成が個人的に大好きな1曲です。
個々のバースも魅力的ですが、聴きながら踊りたくなるのに、「前髪より気にしろ足元」と刺すところはしっかりと刺しているHookも一度聴いたらクセになって耳から離れない。
Good Gas & JP THE WAVY「Bushido」
『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』の劇中歌。サントラには数々のラッパーが参加するが、その中にアジア人で唯一選出されたJP THE WAVYと米国プロデューサー・FKi 1stのプロジェクト「Good Gas」のコラボ曲だ。世界で大人気シリーズの最新作に使われ、彼の名が世界に広がるきっかけとなった。楽曲では日本語でガッツリJP THE WAVY節を炸裂。「富士山」「TOKIO」「Samurai」など世界で伝わるワードが印象的に盛り込まれている。
『ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT』で劇中歌を歌った『TERIYAKI BOYZ』のVERBALの名もドロップしており、MVには本人も出演。間違いなく日本のシーンにおいて名を刻んだ楽曲だ。
Leon Fanourakis feat. LEX、SANTAWORLDVIEW、ralph「CHAMPION REMIX」
Leon FanourakisさんとLEXさんによる楽曲「CHAMPION」に、SANTAWORLDVIEWさんとralphさんが参加したリミックスバージョン。楽曲活動だけでなく、「BAZOOKA!!! 高校生RAP選手権」や「ラップスタア誕生!」などで活躍し、高い評価を得ている横浜出身の若手が集結した1曲です。
LEXさんとLeon Fanourakisによる原曲は、彼らの持つ勢いそのままに周囲を煽るように実力を見せつけていく曲で、ABBAの「Mamma Mia」を思わせる爽やかなメロディーに重低音が加わることで、ビートだけでも若い疾走感が表現されています。
リミックスでは完全に曲を乗りこなすSANTAWORLDVIEWさんのスキルフルなバースとralphさんの畳みかけつつパンチラインで黙らせるバースが乗り、まさに「俺らが KING 文句はねーな?」という楽曲に仕上がっています。
BAD HOP feat. Vingo, Benjazzy, SANTAWORLDVIEW & ゆるふわギャング「Chopstick Remix」
ヒップホップクルー・BAD HOPのVingoさんとBenjazzyさんの楽曲「Chopstick」に、SANTAWORLDVIEWさんとゆるふわギャングが参加したリミックスバージョン。原曲「Chopstick」では、箸をテーマに2本でセットであることや、モノを掴んで手に入れるための道具としての側面に注目。
リミックスではそこから発展し、SANTAWORLDVIEWさんが英語の「sober」と蕎麦をかけたり、ゆるふわギャングのNENEさんが曲自体とかけて「耳からぶっ刺す」など箸の新たな解釈を示したりと連想ゲームのように遊んでいっています。
「箸」をテーマにここまでいろいろな発想ができるのかというユニークな楽曲になっています。
LibeRty Doggs 「柄悪いけど」
2020年に結成されたクルー・LibeRty Doggsが同年にリリースし、以降、じわじわと話題を呼び間違いなく注目のアンセムとなったこの曲。彼らの愛する地元・鎌倉市大船から聴こえているリリックとビートには、遠くない海の気配とスナックと煙とピースな魂が詰まっている。
肩肘張らない程よい抜け感と、音楽的ルーツや年齢層さえバラバラな5人それぞれのリリックとフロウによるマイクリレーが、最高のヒップホップを奏でる。「柄悪いけど良いヤツら」のHookは本当に天才。
LibeRty Doggs「Good Bye」
今年上半期に現れた新星、ガラ悪いけどいい奴らことLibeRty Doggsの一曲。ノリのいいビート何といっても彼らの魅力はその声。全員が特徴的な声をもっていて、それがフロウとあいまって独自の味をつくり出している。個人的には、Cannabi$さんとbabe bonitoさんによるフックが、その喉を震わせるような歌い方も相まって大好き。
KAI-YOUのインタビューに対して、「日本にバブルを起こして貧富の差を埋める」という今後の野望をブチ挙げた彼らが、来年はどんな活躍をするのか楽しみ。
VaVa feat. Yo-Sea, OMSB「Triforce」
才気あふれるビートメーカー・VaVaさんが、シンガーのYo-Seaさんと、同じSUMMITに所属するレーベルメイトのOMSBさんを客演に呼んだ一曲。VaVaさんらしいゲームへのイマージュを散りばめた世界観とリリック、軽やかなフロウ。それに応えるOMSBさんの絞り出す、重たいフロウ。高低差のある2人のトーンの振れ幅も非常に心地いいものです。
そこにYo-Seaさんの透き通る歌声によるHookが乗って、文字通り、3人が揃ったTriforceには無敵感さえ漂っています。
kZm「Aquarius Heaven」
注目を集めるkZmさんが、アメリカの老舗Atlantic Recordsの日本レーベルからという驚きのデビューを果たした曲。サンプリング元はASIAN KUNG-FU GENERATION「ラストシーン」というチョイスも憎い。Hookで繰り返される「水瓶座のHeaven」が、後半で加速を見せるビートに乗って、聴いているこの身を彼我に誘います。
どこか内省的で葛藤と痛みを抱える曲が印象的なkZmさんながらも、今作では疾走感が極まって今にも飛び立ちそうな奇妙な高揚と飛翔感をたたえています。2021年を代表する名曲。
KANDYTOWN「One More Dance」
コロナ禍の真っ只中で発表された、KANDYTOWNの新曲。2021年に正式リリースされた「One More Dance」はより洗練されダンサブルになっていますが、つくりこんだMVではなく静止画で投稿された「STAY HOME EDITION」の方がよりシンプルで彼らの息遣いが伝わってきます。阿修羅MIC feat. 孫GONG & 漢 a.k.a GAMI「言魂」
阿修羅MICさんが、孫GONGさんと漢 a.k.a GAMIさんを客演に迎えた曲。見た目の強度が高すぎるストリートな面々が、舐達麻の楽曲で知られるGREEN ASSASSIN DOLLARさんと、REAL-Tさんの楽曲を手がけるFEZBEATZさんというダブルプロデューサーで贈るという、かなり最強の布陣です。
三者三様の生き様がそのまま刻まれています。
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日夜生み出される現象や事象を“ポップなまとめ記事”として紹介する人気連載。 いま注目を集めるジャンル、気になったときにチェックしたいトレンド──。 KAI-YOUでは「POP」を軸に、さまざまな対象をまとめて紹介していきます。
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