その後は、今回のイベントで掲げられた“みんなで一緒に”というテーマ通り、来場者一体型の楽しい企画が目白押しだった。
会場で皆で歌った音声とカンタさん、トミーさんの2人による即興ラップを録音、トラックダウンしてその場で音楽をつくる「みんなで1曲作ってみよう」のコーナーや、事前に来場者から寄せられたメッセージや画像を使って、お互いが相方の動画をつくり「相方をプレゼンする」という実験的なもの。
さらに水溜りボンドのファン(=ボン人)の間ではおなじみのコント「勇者の大冒険」を特別バージョンで披露したり、フリートーク中に「お父さんが来ているかもしれない」と言い出したカンタさんに、客席のお父さんにスポットライトが当たるというサプライズ場面もあった。
最後には、ここまで自分たちを連れてきてくれた視聴者への感謝の手紙で2人が涙ぐむ一面もあり、今回千葉の台風被害への配慮で開催が叶わなかった花火大会を2人からのメッセージが書かれたテープを飛ばすことで室内で再現。最初から最後まで会場があたたかい雰囲気に包まれた公演だった。
そんな2人に公演終了後、取材をさせてもらえることに。
2014年に大学のお笑いサークル内でコンビを結成して以来、数十人規模の教室ライブやライブハウスから始め、約5年。
視聴者と共に常に歩幅を合わせ、築き上げてきたその先で見えたものは?
イベント終了直後の熱気冷めやらぬ状態の2人に、その切実な思いと今後についてを聞いてきた。
取材・文:こたにな々 撮影・編集:吉谷篤樹
「水溜りボンドが水溜りボンドであるための挑戦への調整」
──イベントお疲れ様でした。動画を見る限り会場をおさえたのがかなり最近で、イベントまでかなりタイトなスケジュールだったと思うのですが、当日に向けての心境はどうでしたか?カンタ そうですね、なんていうか「YouTubeもあってイベントもある」というのが僕らのスタイルなので、それを2つ両立しなきゃいけないじゃないですか。イベントが大きくなればなるほど、準備にも時間かかったりして大変ではあるんですけど、どっちも楽しめたかなって。
今までもイベントをずっとやってきたから、自分たちの予定の調整の仕方とかも慣れてきました。だから、YouTubeとイベントがお互いの良い息抜きになってたのかなって思います。 トミー リアルイベントをやる意味として「なんで幕張でやるの?」ってなった時に、もちろん大きい会場でやったらすごい、みたいな考えもあると思うんですけど、視聴者のみんなに会うと調整のネジが合うというか…
動画だけだと僕らと視聴者の温度感が乖離しちゃう気もして、生の反応を見て「俺らはこういうエンターテイメントだよね!」っていうのをちゃん再認識できるから、イベントってやっぱり大切な場で。
水溜りボンドが水溜りボンドであるための挑戦への調整をする気持ちでいました。例え短いスケジュールだったとしても「幕張をやらない」っていう選択肢は一切なかったですね。
──イベントでは“みんなで一緒に”というテーマを掲げられていましたが、お二人の活動の中で視聴者に対して意識されていることがあれば教えてください。
トミー 「素直でいる」ですね。僕らはこういう人間ですっていうのを素直に見せるというシンプルな考えです。
それが視聴者のみんなの不安を取り除くこともあれば、逆に離れる原因にもなると思うんですけど、それでも僕らという人間を素直に表現することの大切さはありますよね。 カンタ 僕らも人間だし、日々何かしらあるわけじゃないですか。やっぱりちょっと怖いなと思うネットの性質として、YouTubeには当たり前のように僕らの動画が載ってて、そこでの自分たちの振る舞いや姿勢について色々な、たくさんの意見がありますよね。そして、その一つ一つに対して返すことはできないところなんです。
昔は「水溜りボンドのファンの方ってだいたいこういう人なんだろうな」っていう像を一個つくり上げていたんですけど、今ではそれが増えすぎて、片方の人にとってはいいことでも、もう片方の人にとってはいいことではないことがどうしても生まれてしまいます。
でもそのどっちに対してもフォローしていったらいつかそれが矛盾になってしまうので、素直に自分が思う通りの対応をする。それがネットで一番大切なことだなと思いますね。
なので、こんな考えとか活動をしていなくて有名になったら「すごいスター」みたいに見えたりすると思うんですけど、僕らはもう「スターにしてもらいました」っていうしかないんですよね。 トミー そうだね。
カンタ それをもう「僕らは生まれつきスターです」なんて言ったら、なんか違うよね。そこはもう正直に、俺らは田舎で生まれてたしね。
トミー (カンタは)ちなみにマレーシア生まれだけどね。
カンタ で、一人ずつ登録者が増えた結果、ここまで来てるんだよっていう。「生まれつきスターです」とかは無理ですよね。でも、それは武器だとも思っていて、人間味があるなって。
YouTubeの総再生回数が何億再生とか言いますけど、リアルなイベントに来てくれるお客さんってほんとにごく一部なんですよね。それは「動画でいいじゃん」って思われるからだと思うんですけど、それでも僕らのイベントにはこんなにたくさんの人が来てくれて、「応援されてるんだな」って強く思います。
トミー 胸張れるよね。「この人が水溜りボンドで笑ってる」っていう。ファンがどんどん僕らと同じ年齢層になってて、僕らと一緒に歳とっているように感じているんですけど、それってもう同級生じゃんって思いました。僕らは相方を笑わせる延長で同年代の見てくれる人を笑わせている感覚があって。だから、下とか上とかないんです。
カンタが持つ、人がまだ触れたことのないエンターテイメント性
──今回のイベントの中で「相方プレゼン」という企画がありましたが、普段からお互いを尊敬し合っているお2人は、どの時点で相方の才能や魅力に気づかれたのでしょうか。トミー 見たことないけどなんか面白い気がするっていう感じ。カンタの魅力は人が触れたことないエンターテイメントなんだろうなって思います。
カンタの言う言葉って変なんで基本ツッコミに正解がないんですよね。「いや、お前〇〇じゃねぇんだから!」とかっていうのもちょっと違くて。
どうするのが一番いいのかめちゃくちゃ悩んだ時期もあって、ある時から「笑う」っていうツッコミに切り替えたんです。「これはみなさん、笑っていいですよ」って見せることが、逆に自分がツッコミをしていく上でやらなきゃいけないことなんじゃないかなって。そういう風に僕が思ってる時点で、人が触れたことないエンターテイメントなんじゃないかなって思います。
カンタが人の心を掴む力ってとんでもないものだと思っていて、そんなやつとシンプルに仲良かったっていうのが「すげぇな」って自分でも思えるんですよね。自分が怖そうな格好してるのに“YouTubeのNHK”って言われた時「ずるいな、俺」って思ったのを覚えています。 ──トミーさんはカンタさんの笑いを導く役目があるんですね。
トミー 僕はめっちゃ面白いと思ってるんですけど、変すぎて伝わらないんじゃないかなって。今日のイベントでも写真撮る時に「ゴーゴー!ホワイトソックス!」って訳分からないこと言ってたし。
カンタ そういえば、そんなこと言ったわ。
トミー あれがボケなのか、それとも間違えてるのか、僕が笑うことで見ている人の笑いに繋がると思っています。
──今日の会場の様子を見た限り、ボケだということがちゃんと伝わっていたと思いました。
トミー イベント中、みんな座ってるしね(笑)。
カンタ 俺らのイベントは着席。 トミー みんな重心後ろだったからね。「うんうん、それで?」みたいな。それも、僕らっていう人間をスターに見せないから起こりえるっていうか。
今26歳と25歳のコンビで、キャーキャー言われることもあったりして。それで見せ方をめちゃくちゃかっこよくすると、イベントでも全員立ってると思うんですよね。ステージに出てきて「かませよ!」って言ったら、みんなずっと立ちっぱなしでペンライト振ってくれたと思うんですよ。
でも例えば「それで俺ら、32の時の大丈夫?」って思ったりもして。だってもう見た目おじさんじゃないですか僕ら。おかしいじゃないですか。違うんですよね、そういう系じゃないし。
幕張メッセでこのイベントできるやついないなってやっぱ思います。そこはもう、めちゃくちゃ胸張れるところで。お客さん全員座らせて幕張メッセでイベントできるってことは、今の僕らの本質を見てついてきてくれる人たちがこんだけいるっていうことだと思います。
カンタ 僕らはお笑い芸人にやっぱ憧れてて、普通にその人たちがかっこいいと思ってて。そこからの影響されているところもあると思います。でも25歳で幕張メッセってすごいよな!バイトとかでは来たことあったけど(笑)。
水溜りボンドの将来像「コンビとして転換期を迎えている」
──先ほど26歳と25歳になったと言われてましたが、お2人でAERAの表紙を飾られたり幅広いジャンルの方々に認知されていく中で、今後「こんな大人になりたい」という将来像はありますか?カンタ 今よりもたぶん何年後とかの方が面白いと思うから、その時なにしてるんだろうなぁとは思いますね。
トミー オモシロおじさんってこと?
カンタ そうなったらもう自分がファンですよね(笑)。
今日、幕張メッセに立ったじゃないですか。5年前の僕らが見たらテンション上がると思うんですよ。「マジかい!」っていうことじゃないですか。今から5年後もそういたいとは思いますね。相方に対してもそうだし、自分に対してもそうだし。なんか「俺ら、やったな!」っていう感覚でいたいです。 会場が大きくなるとかそういうことじゃなくて、今日の幕張メッセのような良いものを、僕の人生において良い出来事を、これからも一緒にやりたいです。コンビとしてもそうだし、ファンの人もそれを喜んでくれる人がいたらもう最高ですよね…オモシロおじさんです(笑)
トミー いや、ヤバいだろそれは(笑)。
──トミーさんはいかがですか?
トミー まぁ、もう26歳なんでちょっと大人になったなと。落ち着いてはないんですけど、基本的な考え方は変わらないですけどこの辺りでコンビとして転換期を迎えるなと思ってますね。
同じところにいるのがたぶん無理なので、挑戦や変化、進化をしないといけないんですよね。今の僕らにはけっこうそれが求められるというか。自分たちにおいて大切なタイミングだなって、要は正念場ですよね。それは歳というよりかは、大学生から一個抜けた「水溜りボンド」というコンビが何をするのかという意味で。
沈む可能性もあるけど、さらに楽しい方向に向かうちょうどターニングポイントが来たのかなって思います。 カンタ でもそれはすごく良いことだと思っていて。ある種その一個の僕らのストーリーが5年くらいあって、もうマックス良い方向に行ったんですよね、その5年間。でも「良い感じにもうやりきった!」っていうよりかは、こっからどうなって行くんだろう?って自分でも気になっています。
──それは個人的にファンとしても楽しみです。
トミー 僕らもめちゃくちゃ楽しみですね。来年とかに向けて、もう今までにない話がどんどん出るようになってきていて、とても生きがいを感じています。ここまで来れたのは水溜りボンドを組んだからこそだと思ってるので、これからも挑戦をしないという選択肢がないんですよ。
僕らが素直に目の前の挑戦をやりたいって思ったあとで、やらない選択肢をしたらその瞬間自分たちに嘘ついたことになるので終わりだなと思っています。
視聴者と共に築き上げてきた「水溜りボンド」
2015年1月1日に活動を始めて以来、“1日も”休むことなく動画投稿を続けている人気YouTuberユニット。メンバーのカンタさんとトミーさんは、大学時代よりお笑いサークルでコンビを組んでおり、YouTubeを始める以前から、ステージに立ってきた。
投稿した全動画の中で4本の動画が1000万再生を突破しており、突破された動画はカンタさんの発案でなぜか猿の格好でリメイクしなければいけないという謎シリーズも始動。そこから生まれた『猿でもわかる』という元ぼくのりりっくのぼうよみことたなかさんが提供した楽曲が人気爆発。今回のイベントでも大事な登場曲を飾った。(関連記事)
動画内で使われたチャーハンの大鍋食品サンプルを振るうカンタさんの画像がネット上で海外まで広がり、米『TIME』に掲載されるなど、誰も予想できない出来事を巻き起こしながら、YouTuberと世間一般の垣根を越えて、確実に幅広い層に浸透している水溜りボンドの人気はとどまるところを知らない。(関連記事)
なお、2019年11月9日(土)には、大阪Zepp Nambaで『水溜りボンド SPECIAL STAGE 2019 in OSAKA』を開催することも発表されている。今回幕張に来れなかった関西圏の方々はぜひ期待して待とう。
【幕張メッセ】
— カンタ(水溜りボンド) (@kantamizutamari) September 29, 2019
20人から7000人。
水溜りボンドはたくさんの人に支えられてここまで来ました。
まだまだ僕らのこれからをお楽しみに。
いつもありがとう。 pic.twitter.com/CwloSsw5eM
イベント直後の余韻と共に取材に応じてくれたお二人の言葉は熱く、今日の日を噛み締めながらも、もうしっかりと先を見据えていたように感じた。幕張メッセありがとうございました!
— トミー(水溜りボンド) (@miztamari_nikki) September 29, 2019
いつも応援ありがとう。
僕は本当に本当に幸せでした。
夜中に裏側のサブチャンネルあげますね!
そして千葉県の台風被害へたくさんの義援金、ありがとうございました。
後日僕らの花火大会の開催費用とともに然るべき機関に寄付させていただきす。 pic.twitter.com/bEAM5jE9j4
インタビュー中もどちらかが言葉に詰まれば、必ず一方が自然とアシストする。それは動画を通して魅かれていた彼らの魅力そのもので、いち視聴者でファンである筆者の胸もまた熱くなった。
私たちと歩む、水溜りボンド
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イベント情報
水溜りボンド SPECIAL STAGE 2019 in OSAKA
- 日時
- 2019年11月9日(土)
- 【第1部】 OPEN 13:00/START 14:00
- 【第2部】 OPEN 17:30/START 18:30演者
- 会場
- Zepp Namba (Osaka)
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