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POPなポイントを3行で

  • 「ニコニコ超会議2019」VTuberステージレポ
  • キズナアイがトリを飾った2018年からの進化
  • 流行りを経た過酷な1年への確かな希望

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VTuberがニコ超で示した美しき反撃 「バーチャルさんがいっぱい」ステージ

「バーチャルさんがいっぱい スペシャルバーチャライブ」

2018年の本格参戦によって「ニコニコ超会議」に新たな風を吹き込んだバーチャルYouTuber(VTuber)。

4月27日・28日の「ニコニコ超会議2019」ではさらにパワーアップして「VTuber Fes Japan 2019」と題した祭典を開催。その大きな目玉としておこなわれたのが「バーチャルさんがいっぱい スペシャルバーチャライブ」だ。

VTuber初のテレビアニメとして大きな話題を呼んだ『バーチャルさんはみている』。そのアフターイベントでもある今回のライブには2日間で総勢20名以上のメンバーが出演し、それぞれの個性が光るオリジナル曲から往年の名曲まで約50曲のスペシャルライブが展開された。

前回「ニコニコ超会議2018」のステージで歌い踊ったのはキズナアイさんだけだった。それから1年、新時代の幕開けを前に、エンターテインメントとしてもカルチャーとしてもVTuberの真価が問われる。

今回は2日目の模様をレポートする。

取材・文:オグマフミヤ

尊い日々はまだ終わらない

トップバッターはミライアカリさん

トップバッターはミライアカリさん

次々と出演者が紹介されるムービーが流れたあと、カウントダウンによって極限まで高められた期待感の中で飛び出したのはミライアカリさん。勢いそのままに中川翔子さんの「空色デイズ」を熱唱すると、会場のテンションは一気に最高潮に。

かつてKAI-YOU.netのインタビュー(関連記事)で、現在に続くVTuberムーブメントを「奇跡のような時間」と涙ながらに語っていた彼女を目にしている筆者。
尊い日々はまだ終わらない そしてまた」と歌う姿を見て、まだ始まったばかりだというのに目頭が熱くなってしまう。

続く自身のオリジナル曲「ミライトミライ」では会場に大シンガロングを巻き起こし、第一走者として充分すぎるほどに盛り上げて後続にバトンを渡す。
振袖をはためかせる天神子兎音さん

振袖をはためかせる天神子兎音さん

すでに高まりきった会場に登場したのは天神子兎音さんだ。DECO*27さんの「ゴーストルール」の切り裂くようなロックサウンドを鋭い歌声で歌い上げる。

フロアの空気がヒリつくほどに研ぎ澄まし、小さな身体をいっぱいに振り回してのパワフルなステージングは、まだまだやれるのかとオーディエンスに問わんばかりのダイナミズムを秘める。

間髪いれずにフロアに投げこまれたのは絶大な人気を誇る黒うさPさんの「千本桜」。伝説級の名曲をそのホームグラウンドたるニコニコ動画のイベントで堂々と歌ってみせる姿は神様兼任の称号に違わず神々しい。

やられてみれば彼女以上にこの曲をここで歌うのにふさわしいシンガーもいないと思わされるほどで、この瞬間はまさしく彼女の独壇場だ。

バーチャルだからどうのこうのなんて関係ない

神様が和風ロックを奏でるのに呼応してか、次に登場した剣持刀也さんはカニミソPさんの「ダンシング☆サムライ」へとつなぐ。長い手足を活かしたダンスは雄々しく優雅で、フロアを一人残らずリズムに乗せると、彼の動きも加速度的にキレを増していった。

ユーモラスかつシャープネスな舞いに続いてはトーマさんの「エンヴィキャットウォーク」へ。矢継ぎ早に展開する曲の疾走感を見事に表現し、ここぞの大舞台をビシッとキメてみせると、我が子を見守るような態度だったコメント欄も絶賛のエアスーパーチャット(※)に溢れる。

※「¥5000」のようなYouTubeのスーパーチャットを模したコメントのこと。収益化申請の通っていない新人VTuberの配信などでも見られるが、剣持刀也さんはその人気に反して申請が通っておらず、より強い応援の意味合いでエアスパチャが寄せられることがある。
キュートとファンキーのギャップで魅せるKMNZ

キュートとファンキーのギャップで魅せるKMNZ(リタさんとリズさん)

MCとしても活躍する彼の力量を見せられては彼女たちも黙ってはいない。

MCリズさんとMCリタさんによるユニット・KMNZギガPさんとれをるさんによる「LUVORATORRRRRY!」を披露すると、見た目のキュートさにそぐわぬメロウなフローの応酬で一気にフロアの空気を自分たちのものにしてみせる。

続いてオリジナル曲「VR-Virtual Reality」をドロップ。大舞台もなんのその、歌詞の通り畳み掛けるリリックで観衆を湧き上がらせる姿を前に、バーチャルだからどうのこうのという疑念はもはや持ちようがない。
清楚キャラとしても知られる八重沢なとりさん

清楚キャラとしても知られる八重沢なとりさん

次に.LIVEアイドル部から八重沢なとりさんがオンステージ。登場早々に緊張すると言っていた少女の姿もどこへやら、ゆうゆさんの「天樂」では堂々たるパフォーマンスを披露し、彼女のファンカラーで一杯になったフロアに張り裂けそうな激情をぶつけていく様はまごうことなく本物のアーティストだ。

討論会という名の大喜利で見せるトークスキル

息のあったコンビネーションをみせる鈴木ヒナさん、ミライアカリさん、田中ヒメさん

息のあったコンビネーションをみせる鈴木ヒナさん、ミライアカリさん、田中ヒメさん

今度はミライアカリさんが田中ヒメさん、鈴木ヒナさんとわいわいと袖から現れると、日向電工さんの「ブリキノダンス」をスペシャルユニットで歌い踊る。

難解な楽曲を時にふざけあいながらもコンビネーション抜群に歌ってみせ、目まぐるしく変わるステージ模様にオーディエンスの感情もガンガン揺さぶられていく。
ライブパートに負けじと盛り上げるばぁちゃるさん、電脳少女シロさん、猫宮ひなたさん、月ノ美兎さん

ライブパートに負けじと盛り上げるばぁちゃるさん、電脳少女シロさん、猫宮ひなたさん、月ノ美兎さん

百花繚乱の前半パートを終えると、ばぁちゃるさん、電脳少女シロさん、猫宮ひなたさん、月ノ美兎さんが登場してトークパートがスタート。

前半をふりかえって「みんな可愛いし格好いいしでもうずっと泣いてる」という猫宮ひなたさんだったが、これには我々オーディエンスも諸手を挙げて同意せざるを得ない。

続く討論会という名の大喜利では「“は”で始まる”ライブ前にすること」というお題を受けて、月ノ美兎さんが「歯ブラシを他人に持っていかれないようにかばんにしまっておく」と個性的どころではない回答をすると、前半の出演者たちに負けない強烈な存在感を醸してみせた。

退場する前に「シロちゃん!ミトミト!ヒナタ!」と共演者たちのコールを煽ってバーチャル界の名司会っぷりを披露するばぁちゃるさんだったが、最後にちゃっかり「ウビバ!」と自らのものも挟んで会場の笑いを誘う。

場数を踏んできたシンガーの本気

自ら作詞作曲もする本格ミュージシャンかしこまりさん

自ら作詞作曲もする本格ミュージシャンかしこまりさん

小休止かと思ったらとんだ怪獣大戦争だったトークパートが終わると「ポケモンゲットだぜ!」の元気な声と共にかしこまりさんが登場。

往年の名曲である松本梨香さんの「めざせポケモンマスター」を最新のバーチャルシンガーがカバーする姿に、時節も合わさって時代の移り変わりを実感させられたのか、「平成終わるのか…」というコメントが流れていたのがなんとも印象的。美しい時間はただただ流れていく。

一抹の哀愁を漂わせながらも、誰もが知っている伝説級のアニソンでバッチリ盛り上がると、オリジナル曲「ルーティン」でフロアは一転じっくりと聞き入るモードに変わっていく。

単独ライブシリーズ「MARism」をはじめ、いくつもの現場を積み重ねてきた実力に裏打ちされるダイナミックな歌声で観客を圧倒すると、曲が終わるとともに割れんばかりの歓声が会場を包んだ。
破天荒さで人気を博す犬山たまきさん

破天荒さで人気を博す犬山たまきさん

そんな本格シンガーに続いて登場したのはイラストレーター・佃煮のりおさんがプロデュースする男の娘VTuber・犬山たまきさん。

dorikoさんの「ロミオとシンデレラ」という選曲には特定の誰かを思ってなのでは? と勘ぐらせられることもあったが、曲が進むにつれてイロモノではない歌唱力に気づかされていく。

普段の大暴れっぷりとのギャップをこれでもかと感じさせられたがそれでは終わらない。アニメ『とらドラ!』のED「オレンジ」では蜜柑の酸味になぞらえた切ない恋心を情緒たっぷりに歌い上げ、表現者としての幅の広さをマイクひとつで知らしめてみせた。

念願の3Dモデルをニコ超で初披露

念願の3D化を果たした名取さなさん

念願の3D化を果たした名取さなさん

驚かされっぱなしの我々オーディエンスだったが、まだまだ序の口だったことをすぐに知ることになる。

続いて登場したバーチャルナース・名取さなさんはかねてより示唆していた3Dの姿をなんとこの大舞台で初披露。

ファンにとっても思い出深いナユタン星人さんの「惑星ループ」の中で「あー あなたに逢いたいな って気持ちがループループする」と歌うように、この日を長く夢見てきた両者にとってこの出会いはこれ以上なくドラマチックだ。

いつもはバーチャルサナトリウムで一人だから、こんな広い会場はじめて!」と無邪気に走り回る姿には、胸が強く締め付けられる。続く桃井はるこさんの「愛のメディスン」でも跳ねて回って元気な姿を見せつけ、いっぱいの愛を満員の幕張メッセに振り撒いた。
ファンを公言するVTuberも多い花譜さん

ファンを公言するVTuberも多い花譜さん

名取さなさんをはじめ優れたVTuber、いやアーティストはその世界観で人々を魅了する。花譜さんも独特で強固な世界観を持ち、デビューからすぐにその頭角を表した一人だ。

いまだ多くの謎に包まれる大注目プロジェクト「KOTODAMA TRIBE」のイメージソングであるオリジナル曲「魔女」では、消え入りそうな存在の儚さと聴くものの心を突き刺す確かな歌声の二律背反で、先ほどまでの熱狂を自らの物語に変えていく様はまさに圧巻の一言。

活動休止を経て「本当のはじまりの歌」としてリリースされた「雛鳥」で歌われる終わりと始まり、15歳の少女の剥き出しの感情の奔流に、会場の空気が痛いほどに張りつめていく。同業者にもファンを多く持ち、新時代の歌姫として期待されるその実力を深々と刻み込み、静かにステージを去った。
『バーチャルさんはみている』のEDも担当した田中ヒメさんと鈴木ヒナさん

『バーチャルさんはみている』のEDも担当した田中ヒメさんと鈴木ヒナさん

なにを終わった雰囲気になってるのかとフロアを叩き起こさんばかりに元気一杯で飛び出したのは田中ヒメさんと鈴木ヒナさんによるユニット・ヒメヒナ

多くのVTuberがカバーする大人気曲であるバルーンさんの「シャルル」で再びフロアに火を着けると、息つく間もなくナユタン星人さんの「太陽系デスコ」、れるりりさんの「脳漿炸裂ガール」へとつなぐ超豪華メドレーを披露。
どれも難しいとされる楽曲を熱唱しながら、普段と変わらずふざけ合う二人の姿は軽快で、すっかり会場は彼女たちの遊び場になってしまう。

そこからさらに変幻自在のエンターテイナーっぷりを見せつける。『バーチャルさんはみている』EDのオリジナル曲「ヒトガタ」で繰り広げられた重低音とハイトーンボイスのコントラストはまさしく命の叫び。真に迫るその生きざまで空間を一気に支配してみせた。

出会ってくれてありがとう

揃って例の自己紹介をする、月ノ美兎さん、電脳少女シロさん、猫宮ひなたさん

揃って例の自己紹介をする、月ノ美兎さん、電脳少女シロさん、猫宮ひなたさん

先ほどは軽妙なトークで場を盛り上げた電脳少女シロさん、猫宮ひなたさん、月ノ美兎さんが再び壇上に上がり、せーので何か言おうと試みるがどうも息が合わない。

やっと3人揃ったかと思えば「ただの人間には興味ありません。」から始まるあの台詞で会場をザワつかせると、そのまま異色のトリオで『涼宮ハルヒの憂鬱』ED「ハレ晴れユカイ」に突入。

色合いこそ不一致ながらもそのコンビネーションは完璧で、ニコニコ動画でも一世を風靡した名曲を華麗に歌って躍り、年に一度の祝祭を見事に彩っていく。
最後に勢揃いしたバーチャルリアルのみなさん

最後に勢揃いしたバーチャルリアルのみなさん

ミライアカリさん、田中ヒメさん、鈴木ヒナさんが合流すると、絢爛豪華なスペシャルステージの最後は、6人のユニットバーチャルリアルによる『バーチャルさんはみている』OP「あいがたりない」でフィナーレ。

2時間に及んだステージのラスト、2日間にわたるイベントの締めくくり、『バーチャルさんはみている』という作品の一区切り──さまざまな意味合いのこもった最後の曲を楽しそうにパフォーマンスする6人のステップは軽やかに見えながらも、ムーブメントの最前線を必死に駆け抜けたものに宿る重みが確かに感じられた。
曲が終わってエンディングに移ると、電脳少女シロさんは両手を大きく挙げて「出会ってくれてありがとう」と真っ直ぐな感謝を告げる。

バーチャルリアルへのインタビューで「誰が欠けてもここに辿り着けてはいない」と世の中を変えたあのブームとそれに連なる今がどれだけの奇跡かを語るミライアカリさんの言葉に、シロさんを含め全員が深く頷いていたのをよく覚えている。

そんな彼女たちだからこそ、このステージに立つ意味と責任を誰より理解し、我々には一切察知させることはなかったが大きなプレッシャーに襲われていたであろうことは想像に難くない。

そういった状況で大舞台をやりきった彼女から届けられた感謝の言葉には溢れ出す涙を止めることができず、崩れかけた膝をしっかりと直してただ拍手を送るほかなかった。

勝負の1年、新たな時代がはじまる

ブームもそろそろ終わってきたなってそんなことはなからわかってる」──バーチャル界の闇の詩人・ミソシタさんは2018年11月の時点でそう歌っている。

新元号「令和」のその初日にライブをおこなったトップスター・輝夜月さんも、先日のインタビューの中で「ひとつのコンテンツとしての流行りはもう終わっちゃったんじゃないかな」と語っていた。 地上波への進出、続出するメジャーデビュー、数えきれないほどのリアルイベントの開催。前代未聞のブームを世間が騒ぎ立てる中、最前線を戦う当事者たる彼・彼女らはその終息を確実に感じ取っていた。

そして現在。ブームを越えてその真価を問われるフェーズにあるVTuberカルチャーのひとつの集大成として行われたのが「VTuber Fes Japan 2019」であり、「バーチャルさんがいっぱい スペシャルバーチャライブ」だ。

かつてはキズナアイさんが一人で立ったステージ。それから1年の積み重ねがつくり出したエンターテインメントとしての魅力、テクノロジーとしての可能性、カルチャーとしての深み、そして会場に広がっていたあの美しい景色は仮想でも虚像でもなかった。 超会議の来場者数は過去最高を記録、ライブ自体のチケットも完売と数字という意味ではこの上ない成功をおさめたが、この先の1年はさらに過酷なものになるだろう。それを予感させるかのような暗いニュースが目立っているのも事実だ。

アニメ『バーチャルさんはみている』を手がけたドワンゴ、KADOKAWA、カラー、インクストゥエンター、アソビシステムホールディングスの5社による合弁会社として設立されたリドは4月に解散を発表(外部リンク、※なお、ドワンゴはCG映像制作を展開する新事業ブランド「TUNEDiD」(チューンディッド)のスタートも発表している)。

それでも今日のステージに、混迷の未来を照らす確かな希望を見たのはきっと私一人ではない。

示し合わせたかのように新時代はすぐ到来した。その暁と共にやってくるのは真の終焉なのか、そう思われているならその逆境ごと背負って輝いてみせる。今回のライブで焼き付けられたのはそんな美しき反撃の意志だった。

バーチャルという生き方について

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