搬入終了かと思いきやトラブル? 迫る撤収時間
と思った矢先、1本の電話。西ホールを担当していたチームからだ。東に比べて、会場内に入るのに時間がかかり、まだ搬入が終了していないという。少しばかり漂う緊張感、全員がクルマに乗り込み、西ホールへと向かう。
到着後、状況を確認しつつ、手分けして各サークルへ搬入。すべての搬入を終えて会場を出ると、ホールから搬入終了のアナウンスが聞こえてきた。 これは余談だが、サークルスペースの机には、サークル名とブース番号が書かれたシールが貼られているが、非常に小さい。
もう少し大きく表示すると、より確認しやすいのではないかと思ったが、「もう長い間この形なので、僕らは慣れてますね」と小早川さんは笑う。 搬入終了後は、しまや出版の全員での終了報告をTwitterに投稿。ちなみに撮影は小早川さんが担当している。
かくして、しまや出版のコミケ前日の長い1日は終わった(そして、翌日はコミケ2日目の搬入を行っている)。
初めての同人誌を待ち続けるしまや出版
「全体的に新刊の数が少なくなっている」取材中に小早川さんが漏らした言葉。同人誌イベントに中止や延期が相次ぎ、イベントが開催されても新刊率が低いという状況が続いた。
少しずつ回復の兆しは見えてきたが、それでも全盛期のコミケに比べると新刊率は低いという。
だからこそ、しまや出版は初めての人にも優しい印刷会社を、より強く意識する。
「価格だけで比較したら、うちよりも安い会社はいっぱいあります。でも、作家さんにとっては一生に1冊の宝物をつくるのですから、僕らが関わる以上、最高の本に仕上げたいと思っています。だからこそ入稿されたものをただ印刷するのではなく、相談にのったり、何か不備があったときに連絡したり、作家さんに寄り添えるのがうちの強み。最近だと、本のタイトルを入れ忘れてる人がいて。最終チェックで気づいて連絡して、箔押しで対応したというケースもありました」
特に初めて同人誌をつくる人の場合、わからないことも多く、失敗する可能性も高い。
「失敗を“勉強代”として受け入れられたらいいですけど、その失敗が原因でつくるのをやめてしまう人もいる。せっかくつくったのに、もったいないじゃないですか。会社としてはコストに見合わない部分もあるかもしれないけど、それでもつくる人に寄り添っていきたい」
実際、Twitterなどでは「初めてならしまや出版を選んだほうがいい」「しまや出版は神」といった評判も多い。その対応力はもちろん、印刷技術そのものも評価されている。
初心者にも優しい──その姿勢は取材中も感じた。なんの比喩でもない文字通り年末の忙しい時期にやってきた印刷素人である筆者に、小早川さんは懇切丁寧に工場内や印刷工程を紹介してくれた。
2025年で50周年のコミケと並走するかのように、歴史を刻んできた同人誌専門の印刷会社・しまや出版は、これからも“初めて”の人を待っている。
この記事どう思う?
関連リンク
連載
2022年12月30日(金)・31日(土)の2日間にわたって東京ビッグサイトの東・西・南展示棟(サークル・企業ブース)で開催される「コミックマーケット101」(C101)を特集。
0件のコメント