石川県珠洲市で同人誌などの印刷事業を展開する有限会社スズトウシャドウ印刷が、7月25日(金)をもって事業を終了すると発表した。
同社は5月23日、公式Xと公式サイトで約40年間に及ぶ事業の終了を報告。理由については「近年の紙媒体の需要減少、相次ぐ材料費の高騰、人材不足等、様々な事情が重なり、これまで通りの事業を継続することが困難と判断いたしました」と説明している。
スズトウシャドウ印刷は、2024年1月1日に発生した令和6年能登半島地震で被災。同年4月1日に営業を再開したが、1年での事業終了となった。
同人誌印刷に40年携わるスズトウシャドウ印刷
スズトウシャドウ印刷は、1986年(昭和61年)に設立。石川県珠洲市にて、同人誌を含む印刷事業を展開している。能登半島の最北端で、日本を代表する文化の一つである同人誌に長年関わってきた。
前述した通り、同社は令和6年能登半島地震で被災。機械の故障などをXで発信して被害の深刻さが伝わると、「日本同人誌印刷業組合」加盟企業がスズトウシャドウ印刷に有志で協力体制を構築していた。
その後、2024年4月1日に営業再開。
2025年4月には、Xで「つらい事はたくさんありましたが、かけがえのない出会いもあり、皆様からの温かいお言葉やご支援に力をいただきながら今日を迎える事が出来ました」「感謝を忘れず出来る事から頑張ります」と再開からの1年を振り返っていた(外部リンク)。
スズトウシャドウ印刷代表「事業の終了は苦渋の決断」
事業終了の発表で、スズトウシャドウ印刷の代表取締役である平野英明さんは、「これまで多くのお客様にご利用いただいた事、また令和6年能登半島地震被災後には全国からたくさんの応援および多大なご支援をいただいた事心より感謝申し上げます」と、被災時のサポートに感謝を述べた。
一方で、「再建をする事で恩返しが出来ず誠に申し訳ございません。 全ては私個人の力不足によるものです」と謝罪しつつ、「これまで支えてくれたスタッフには感謝しかありません」とコメント。
また、営業再開後の1年について、「『いつまでも同人誌業界に携わっていたい』、『北陸唯一の同人誌印刷会社を継続したい』、『独自の印刷技術を継承していきたい』という思いがある反面、あらゆる変化を恐れずに前進する事の難しさを感じた1年でした」と振り返っている。
その上で「事業の終了は苦渋の決断」と明かしつつ、最後は「末筆となりますが、1日も早い能登の復興、今後益々の同人誌文化の発展を願っております。 長い間本当にありがとうございました」と締めくくった。
スズトウシャドウ印刷の独自技術は協力会社へ引き継ぎ
スズトウシャドウ印刷は今後の対応についても発表。7月14日(月)8時を最終入稿締め切りとして、予約された作品については同社から納品されるという。
加えて、7月26日(土)以降ですでに予約済の作品や預かり在庫等については、個別に連絡をした上で「可能な限りの対応をいたします」と説明している。
また、同社と長年協力関係にある有限会社あかつき印刷が、スズトウシャドウ印刷独自の印刷仕様(特色インキなど)を一部引き継ぐことも決定。
あかつき印刷は発表で、「スズトウシャドウ様とは今後も『心の協定』を結び続けていきたく、できるだけの協力を考えております」とコメント。
引き継ぐ印刷仕様については、「全てが同様の仕様・価格・納期とするのは難しいですがご相談いただければスズトウシャドウ様とも連携し、できるだけご希望に沿えるよう提案させていただく所存です」と説明している。

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