SNS上でアカウント名の最後にスペース番号が付きはじめると、コミックマーケットへの期待が高まってくる。
コミケ、あるいは開催時期によって夏コミ/冬コミとも呼ばれる同人誌即売会「コミックマーケット」。今回の冬コミ「コミックマーケット105」(C105)は、12月29日(日)30日(月)に東京ビッグサイトで開催される。
3桁に到達したシリーズナンバーが示す通り、1975年に初開催されて以降、長い歴史を持つ大型イベントは、2025年12月に50周年を迎える。コロナ禍での開催中止や規模縮小を経て、近年は若年層の参加者も増え、夏には26万人を動員した。
今回は迫る「コミックマーケット105」へ向けて、コミックマーケット準備会共同代表・市川孝一さんにインタビューを実施。
半世紀という節目を迎えるコミックマーケットはもちろん、クレジットカード会社による決済停止問題やオタクカルチャーの政治との接近など、表現を取り巻く周辺トピックスについて話を聞いた。
文:オグマフミヤ 取材・編集:恩田雄多
※取材は2024年11月28日に実施
目次
「コミケは年寄りが多い」は大きな間違い!
──コロナ禍での開催を経て、コミックマーケットにも様々な変化が生じたと思います。特に実感している変化について教えてください。
市川孝一 徐々に参加者が増えてきていることに加え、会場内の滞留時間がすごく長くなったと感じています。
以前は、14時くらいにはだんだんと帰りはじめる傾向が強かったんですけど、特に一般参加者の入場を有料化して以降は閉会まで楽しんでいる方が多いようです。
あとは海外からの参加者も相当増えています。
アメリカやヨーロッパ、アジアなど様々な国からの参加者が増えていて、対応としてポスター等になるべく英語表記を入れたりしています。準備会の国際部がいろいろと頑張ってくれていますね。
──海外からの参加者はコロナ禍以前と比較しても多くなっていますか?
市川孝一 コロナ禍後一旦減ったのですが、以前より増えていますね。
台湾やアメリカなどのイベントに行くと「コミケに行ってみたい」という声もよく聞くので、非常に喜ばしいことだなと思っています。
それと実は国内でも若い参加者も増えているんです。「コミケってお年寄りが多いんでしょ」ってよく言われるんですけど、参加者の携帯電話の登録者情報や、リストバンド型参加証の専門店での購入者情報を教えてもらうと、どちらも50%が20代以下でした。正直、我々も驚いています。
──要因についてはどう考えてらっしゃいますか?
市川孝一 はっきりとした要因はわかりません。データを取りはじめたばかりなので、蓄積してきたら動向も見ていきたいと思っています。
年齢が上の方がずっと楽しんでいるので、そういう印象をより強く受けるのかもしれません。
ただ、やはり若い方々も漫画やアニメに強い興味や関心を持っていて、リアルな場として「コミケットのようなイベントに行ってみよう」と考えているのかなと思います。
そういった若い世代が一般参加者として訪れ、将来的にサークル参加するようになってくると、イベントとしては理想的なのではないでしょうか。
クレカの表現規制、政治との接近──オタク文化を取り巻く環境
──近年、海外資本のクレジットカード会社が、成人向けの同人誌やゲームなどを取り扱うサービスで決済を停止する流れがあります。それらを背景とした、同人誌即売会の需要の高まりや問題などは感じられていますか?
市川孝一 そういう問題があるのはもちろん把握していますが、今のところ同人誌即売会における影響は感じていません。
──規制する側の判断で「流通させていい作品/悪い作品がある」という審級でもあるように思えますが、作品を審級するのは難しいようにも思えます。
市川孝一 コミケットの場合、絵についてはわいせつにあたるようなものは、必要に応じて修正していただく場合がありますが、内容については問わないという姿勢でずっとやってきています。
クレカ問題は審査されるにも、どういう審査がされているかわからないのが不透明なんですよね。
獣姦などがNGになっているようなので、海外の価値観のバイアスがかかっているのかなとは見受けられますが、それに対して意見があったとしても誰にどう話せばいいのかがわからない。
どの会社にどういう話をすればいいのかわからないのが、難しいし怖いなと感じています。
たとえば修正については、コミケットでは11月から12月頭に出る商業の単行本を買い集めて、それを参考に勉強するということをしているんですが、このクレカ問題については勉強しようにも難しく、わからないところが多すぎるというのが率直に思うところです。
──以前よりクールジャパンとして、アニメや漫画などを国の基幹産業とする流れはありましたが、近年はまた新たな動きを見せているようにも感じます。コロナ禍においてはコミックマーケット開催へ向けて議員の方々と連携を図っていたこともあったと思いますが、そうしたオタク文化と政治の接近についてはどのように感じてらっしゃいますか?
市川孝一 国会議員に関しては、山田太郎さんや赤松健さんをはじめ、ひと昔前よりも話を聞いてくれる方々が増えていると感じます。
今の若い議員の方は、漫画やアニメ、ゲームなどに子供の頃から親しんでいるので、そうした文化の根幹に日本の自由な表現を尊重する考えがあること、さらには二次創作を中心とする草の根のファンの文化があることを理解してくれているのは心強いです。
──オタク文化に理解のある方が増えるのは心強い一方で、それで支持者を得ようとする「オタク文化の政治利用」的な見られ方をされてしまう場合もあるのではないかと思うのですがいかがでしょうか?
市川孝一 表立って公言する国会議員の方が何十人もいるならそういう話にもなると思いますが、今はそこを問題視する規模にはなっていないんじゃないでしょうか。
まだまだコネクションが薄い部分もあるので、そこは紹介してもらったりしながら連携を強めつつ、今後も自由な表現を大切にしていくための仲間を増やしていくのは重要なのかなと思っています。
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イベント情報
コミックマーケット105
- 開催日
- 2024年12月29日(日)~30日(月)
- サークル
- 10:30~16:00 (サークル入場時間 8:00~9:30(予定))
- 企業ブース
- 10:30~17:00 (1日目のみ・最終日は16:00)
- 場所
- 東京ビッグサイト・全ホール
関連リンク
連載
2024年12月29日(日)・30(月)の2日間にわたって、東京ビッグサイトの東・西・南展示棟(サークル・企業ブース)で開催される“冬コミ”こと「コミックマーケット105」(C105)を特集。
2件のコメント
恩田雄多
KAI-YOUの恩田です。コメントありがとうございます。
ご指摘いただきました件、失礼いたしました。
誤解のないよう、先ほど記述を修正いたしました。
ちょっとしたご褒美……気になります!
僕もいつか有志として参加してみたいです。
匿名ハッコウくん(ID:11852)
1番最後の写真に設営日にあつまった「スタッフ」とありますが、それは一般参加者の有志の方達です。
机や椅子を並べた後にお疲れ様会でちょっとしたご褒美がありますが基本的に無償で参加してくれています。ありがたい事です。