新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、度重なるイベントの中止や延期によって大きな打撃を被っている同人誌業界とその即売会。
オールジャンル即売会「COMIC1」「BS祭」の代表は、個々のイベントの延期から、手を取り合い共同イベント「COMIC1 BS祭 スペシャル」を企画。
当初、コミックマーケット99の延期を受けてゴールデンウィークの5月4日に開催を予定していたが、3度目の緊急事態宣言や会場側からの要請によって、そのイベントすら延期せざるを得なくなってしまった。
しかし、運営団体は同人誌を取り巻く文化を絶やさないために、延期からおよそ2週間後の5月23日に開催。コロナ禍の制限の中で、異例とも言えるスピードで、奇跡的に開催できたのはなぜなのか?
快晴の中で行われた「COMIC1 BS祭 スペシャル」会場で、「COMIC1」代表の池上巌さん、「BS祭」事務局代表の北條孝宏さん、「COMIC1」の初代代表で現在は相談役でもあり、「コミックマーケット」共同代表をつとめる市川孝一さんの3人に、開催への紆余曲折や当日の心境をインタビューした。
それでも、緊急事態宣言が続いているという厳しい状況下にもかかわらず、一般参加者の方には前売りのチケットを買って来ていただけましたし、多くのサークルが参加して、新刊を出してくださっています。
検温や消毒の徹底など、コロナ禍における新しいスタイルのイベントとしては十二分に価値が発揮できているし、開催した甲斐もあったのではないかと。池上さんはどうですか?
池上巌 「COMIC1」というイベントは今までGWに開催していたんですが、去年と今年はGWに開催ができませんでした。そんなときに、北條さんからお声がけをいただいて、「ぜひ一緒にやりましょう」と今回のイベントが立ち上がりました。
北條さんと同じく、延期になったにもかかわらず、かなり多くの方に参加いただけているのは非常にありがたいですね。
1月の「BS祭」と2月の「COMIC1」は、政府のガイドライン的には開催できたものの、サークル参加、一般参加の方々から不安の声も多く、中止にせざるを得ませんでした。
緊急事態宣言が長く続いてきた中で意識が少しずつ変わってきていて、今は、多くの方ができることをやっていきたいという想いを持ち、賛同してくださっている。
コロナ禍におけるイベント開催には批判的な意見をいただくことが多い中、これだけの支持を受けて開催できるのは非常に恵まれているし、開催できてよかったと思っています。 ──ありがとうございます。市川さんは、会場を見られてどのように感じているのでしょうか?
市川孝一 やっぱり、リアルな同人即売会は“ハレの日”だなと感じました。これが一番大きいですね。
前日は雨でしたし、来場者ももっと少なくなるかと思っていました。今日は天気もよく、非常にたくさんの人でにぎわっていて、「みんな(同人誌を)買ってるな、ああいいな、これが同人即売会だな」と感じました。
新しいルールの中での開催が増えていけば、コロナ禍が終息したあとの回復も、よりスムーズになるのではないでしょうか。
北條孝宏 そうですね(笑)。まずそもそもの話をすると、3月に市川さんから「コミックマーケット」を延期せざるを得くなったと連絡がありました(関連記事)。
コロナ禍を耐えていた作家さんや一般参加者の中には、「最終的に『コミックマーケット」さえ開催されればなんとかなるんじゃないか」と期待していた人も多かったと思います。そういった人たちの喪失感を考えると心配でしたね。
なので、ちょっとでもみんなが元気になれるように、受け皿になるようなイベントができないかと考えて「COMIC1 BS祭 スペシャル」が動きはじめました。それも緊急事態宣言の発令と会場からの要請があって、5月4日の開催を延期せざるを得なくなって。
北條孝宏 正直な話、延期が決まった月に開催するってめちゃくちゃですよね。
市川孝一 本当に正直ですね(笑)。
北條孝宏 めちゃくちゃなんですけど、みんなでちょっとずつ力を合わせれば実現できるんじゃないかと。
通常は、いろいろな手続きや配慮も多いですが、一度そういった部分を無視してでも「とにかく一回開催をする」ことを目標に動きました。
コロナ禍が終息して正式に開催しようとしたときに、印刷会社さんも、作家さんも、一般参加者も誰もいなくなっていたら、お話にならない。
「とにかく一度でも開催することがみんなのためになるんだ」という想いで、市川さんや池上さん、赤ブーブー通信社さんにもお話をさせていただいて、みんなで力を合わせた結果、奇跡的にイベントが成立しました。
印刷会社に保管を頼む場合は、印刷会社の倉庫代がかかってしまう。そういった余波もあるので、サークルさんや印刷会社の方々も本当に大変だったと思います。
──一般参加者やサークル参加者だけでなく、スタッフの方々にとっても急ピッチで進んだイベントになりました。連携面での問題はなかったんでしょうか? また、それぞれのモチベーションも気になりました。
北條孝宏 今回は全然違う毛色のイベントからスタッフも集まってきているので、イベント運営のやり方もそれぞれで違いました。準備段階では考え方の違いが露見して、衝突したこともあります(笑)。
でも最終的には「今回のイベントは自分たちのためにやるイベントじゃなくて、同人誌の世界のためにやるイベントでしょ」と思い至って。
いつものやり方は一回忘れて、イベントを開催するための方法を考えることで、1つにまとまることができました。前日準備の段階ではもう士気も高かったですよね。
市川孝一 同人誌即売会の楽しさをわかってくれている多くのスタッフが参加してくれた。日頃から即売会を開催したいと思ってくれているので、個々のモチベーションは高いですよね。
また、リアルで会うことの大切さを改めて感じました。ちょっと挨拶するだけなんですけど、お互いに顔を見せ合って語りかけるというのは大事です。
北條孝宏 そのちょっとのコミュニケーションが大きいんですよね。
オールジャンル即売会「COMIC1」「BS祭」の代表は、個々のイベントの延期から、手を取り合い共同イベント「COMIC1 BS祭 スペシャル」を企画。
当初、コミックマーケット99の延期を受けてゴールデンウィークの5月4日に開催を予定していたが、3度目の緊急事態宣言や会場側からの要請によって、そのイベントすら延期せざるを得なくなってしまった。
しかし、運営団体は同人誌を取り巻く文化を絶やさないために、延期からおよそ2週間後の5月23日に開催。コロナ禍の制限の中で、異例とも言えるスピードで、奇跡的に開催できたのはなぜなのか?
快晴の中で行われた「COMIC1 BS祭 スペシャル」会場で、「COMIC1」代表の池上巌さん、「BS祭」事務局代表の北條孝宏さん、「COMIC1」の初代代表で現在は相談役でもあり、「コミックマーケット」共同代表をつとめる市川孝一さんの3人に、開催への紆余曲折や当日の心境をインタビューした。
目次
「開催できて本当によかった」代表たちの想い
──本日はコロナ禍でのイベント開催となりましたが、どのように感じられていますか?。 北條孝宏 正直、本来の予定日であった5月4日に開催できていたならば、もっと参加者も来てくれたんじゃないかという想いはあります。それでも、緊急事態宣言が続いているという厳しい状況下にもかかわらず、一般参加者の方には前売りのチケットを買って来ていただけましたし、多くのサークルが参加して、新刊を出してくださっています。
検温や消毒の徹底など、コロナ禍における新しいスタイルのイベントとしては十二分に価値が発揮できているし、開催した甲斐もあったのではないかと。池上さんはどうですか?
池上巌 「COMIC1」というイベントは今までGWに開催していたんですが、去年と今年はGWに開催ができませんでした。そんなときに、北條さんからお声がけをいただいて、「ぜひ一緒にやりましょう」と今回のイベントが立ち上がりました。
北條さんと同じく、延期になったにもかかわらず、かなり多くの方に参加いただけているのは非常にありがたいですね。
1月の「BS祭」と2月の「COMIC1」は、政府のガイドライン的には開催できたものの、サークル参加、一般参加の方々から不安の声も多く、中止にせざるを得ませんでした。
緊急事態宣言が長く続いてきた中で意識が少しずつ変わってきていて、今は、多くの方ができることをやっていきたいという想いを持ち、賛同してくださっている。
コロナ禍におけるイベント開催には批判的な意見をいただくことが多い中、これだけの支持を受けて開催できるのは非常に恵まれているし、開催できてよかったと思っています。 ──ありがとうございます。市川さんは、会場を見られてどのように感じているのでしょうか?
市川孝一 やっぱり、リアルな同人即売会は“ハレの日”だなと感じました。これが一番大きいですね。
前日は雨でしたし、来場者ももっと少なくなるかと思っていました。今日は天気もよく、非常にたくさんの人でにぎわっていて、「みんな(同人誌を)買ってるな、ああいいな、これが同人即売会だな」と感じました。
新しいルールの中での開催が増えていけば、コロナ禍が終息したあとの回復も、よりスムーズになるのではないでしょうか。
めちゃくちゃなスケジュール、だけど“賭けた”
──延期の発表から時間がない中での開催となりましたが、実現にあたってはかなり紆余曲折があったのではないでしょうか?北條孝宏 そうですね(笑)。まずそもそもの話をすると、3月に市川さんから「コミックマーケット」を延期せざるを得くなったと連絡がありました(関連記事)。
コロナ禍を耐えていた作家さんや一般参加者の中には、「最終的に『コミックマーケット」さえ開催されればなんとかなるんじゃないか」と期待していた人も多かったと思います。そういった人たちの喪失感を考えると心配でしたね。
なので、ちょっとでもみんなが元気になれるように、受け皿になるようなイベントができないかと考えて「COMIC1 BS祭 スペシャル」が動きはじめました。それも緊急事態宣言の発令と会場からの要請があって、5月4日の開催を延期せざるを得なくなって。
──通常、イベントが延期した場合、前もってスケジュールを組んでいる会場の都合もあり、近々で開催するのは難しいと思います。5月中に開催できたのは驚きました。先ほど東京ビッグサイトの担当者より、「緊急事態宣言を受け、東京都から「催事は無観客でのみにしてほしい」の要請があり会場の貸し出しが出来ない」との連絡をいただきました。これを受けて5月4日の開催を延期することといたします。
— COMIC1 BS祭 スペシャル (@comic1_BS_sp) April 23, 2021
北條孝宏 正直な話、延期が決まった月に開催するってめちゃくちゃですよね。
市川孝一 本当に正直ですね(笑)。
北條孝宏 めちゃくちゃなんですけど、みんなでちょっとずつ力を合わせれば実現できるんじゃないかと。
通常は、いろいろな手続きや配慮も多いですが、一度そういった部分を無視してでも「とにかく一回開催をする」ことを目標に動きました。
コロナ禍が終息して正式に開催しようとしたときに、印刷会社さんも、作家さんも、一般参加者も誰もいなくなっていたら、お話にならない。
「とにかく一度でも開催することがみんなのためになるんだ」という想いで、市川さんや池上さん、赤ブーブー通信社さんにもお話をさせていただいて、みんなで力を合わせた結果、奇跡的にイベントが成立しました。
準備段階では考え方の違いで衝突も
──会場で参加されたサークルにお話をうかがったところ、イベントを継続してもらいたいという想いから、参加を決めた方が多かったです。 市川孝一 本当にありがたいです。今回は5月4日の予定から2週間半延期となりましたが、サークルさんは当然もう本をつくってしまっている。延期された間、その本は自宅にあるわけですが、少ない部数でも在庫を抱えるのはストレスになりかねない。印刷会社に保管を頼む場合は、印刷会社の倉庫代がかかってしまう。そういった余波もあるので、サークルさんや印刷会社の方々も本当に大変だったと思います。
──一般参加者やサークル参加者だけでなく、スタッフの方々にとっても急ピッチで進んだイベントになりました。連携面での問題はなかったんでしょうか? また、それぞれのモチベーションも気になりました。
北條孝宏 今回は全然違う毛色のイベントからスタッフも集まってきているので、イベント運営のやり方もそれぞれで違いました。準備段階では考え方の違いが露見して、衝突したこともあります(笑)。
でも最終的には「今回のイベントは自分たちのためにやるイベントじゃなくて、同人誌の世界のためにやるイベントでしょ」と思い至って。
いつものやり方は一回忘れて、イベントを開催するための方法を考えることで、1つにまとまることができました。前日準備の段階ではもう士気も高かったですよね。
市川孝一 同人誌即売会の楽しさをわかってくれている多くのスタッフが参加してくれた。日頃から即売会を開催したいと思ってくれているので、個々のモチベーションは高いですよね。
また、リアルで会うことの大切さを改めて感じました。ちょっと挨拶するだけなんですけど、お互いに顔を見せ合って語りかけるというのは大事です。
北條孝宏 そのちょっとのコミュニケーションが大きいんですよね。
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