コミケ50周年──同人誌即売会という文化の盛り上がり
──「コミックマーケット107」が開催される2025年12月には、いよいよ50周年を迎えますが、大きな節目を前に感じていることはありますか?
市川孝一 50周年なんですけど、コミケの開催期間は東京ビッグサイトの大規模改修工事が決まっているので、その対応が喫緊の課題です。
早めに会場の図面がもらえるようにお願いしているものの、どこが使えてどこが使えないのかを把握して、導線計画を考えなくてはなりません。
──半世紀という節目でも、そればかり考えてはいられない状況ということすね。
市川孝一 思い返すと、直近で大きな節目となった100回目の「コミックマーケット100」もコロナ禍でした。
今回も、工事の関係で使用できるスペースが限られる中で、50周年記念のためにスペースを割き、その分参加サークル数が減ってしまったら本末転倒。
大変な状況ではあるんですが、スタッフの間でも何かできればとは話しています。
──コミケの50周年に加え、2024年はコミティアが40周年、文学フリマは初のビッグサイトで開催と、同人誌即売会周辺でメモリアルな出来事が続いています。そうした全体の盛り上がりはどのようにご覧になっていますか?
市川孝一 同人誌即売会という文化が発展してきた結果だと思っているので、喜ばしい限りです。それぞれのイベントが盛り上がることで、相乗的に参加者が増えていくと思います。
例えば、コミティアでオリジナル作品を描いてきたけど、アニメやゲームにハマって「パロディ作品を描きたいからコミケットに出てみよう」と考える人もいるだろうし、その逆もある。双方に良い効果が生まれるように、これからも頑張っていきたいです。
──これは余談なんですが、そうしたオタク文化に深く関わるコミケットの事務所が秋葉原や池袋などの縁の深い土地ではなく、下北沢にあるのはなぜなんでしょう?
市川孝一 たしかに同じ即売会という意味では、コミティア実行委員会は池袋、博麗神社例大祭の運営は秋葉原(千代田区外神田)なので、意外に感じる人もいるかもしれません。
最初は、当時学生で一番柔軟に動きやすかった米沢嘉博(準備会二代目代表)の家で事務をやっていたのですが、規模が大きくなるにつれて、追っつかなくなり、米沢の住んでいた下北沢界隈で事務所を借りて、そのまま下北沢近辺で続いている形です。
──なるほど。非常に属人性の高い決め方だったんですね。
市川孝一 以来、米沢もこの地に住んでいたんですが、その後は決してしょっちゅう事務所に来ていたかというとそういうわけではなく……(笑)。
僕らが捕まえようと思っても全然捕まらないし、携帯電話も持ってくれなかったので、連絡がつかないことが多かったんです。
むしろ、本人行きつけの喫茶店を回った方が見つかるなんてこともありました。
今後のコミケ「伝統を守りつつ、新しいものを受け入れて」
──そうした歴史の今後を担う今の新しい世代についてもお聞きしたいです。一般参加者同様、準備会スタッフにも若手が増えているのでしょうか?
市川孝一 そうですね。コロナ禍で続けられなくなってしまう人もいて、一時は少し減少した時期もありました。でも最近、ようやくコロナ禍以前よりスタッフが増え、さらに若いスタッフもたくさん入っています。
まだ経験が少ないスタッフもいるので、皆さんにご迷惑をおかけするかもしれません。それでも我々としては非常に頼もしく思っています。
11月に公開された大塚製薬さんのCMでも、若いスタッフをフィーチャーしていただきました。そういうところからも準備会スタッフに興味を持ってもらえるとありがたいです。
イベント当日に動くスタッフ以外にも、設営や終了後の撤収作業はもちろん、事前の集会や関係各所とのやり取りなど、いろんなところで日々みんなが頑張っています。
──例えば、カタログの表紙を誰に描いてもらうか、といった部分も若手スタッフの意見を聞いたり?
市川孝一 そうです。若いスタッフに推しのイラストレーターさんを聞くこともあります。
どんな表現でも受け入れるという理念に基づいて、なるべく間口は広くしたいので、いろんな意見を踏まえて決定しています。
──スタッフや参加者をはじめ、各所に新しい世代が加わってきています。次の世代に受け継いでほしいものや、逆に変えてほしい点はありますか?
市川孝一 やはりコミケットの理念──すべての表現者を受け入れ、継続することを目的とした表現の可能性を拡げるための「場」である──はしっかりと受け継いでいってほしいと思っています。
ただ、我々も以前の理念から読みやすく変更を加えたり、その時の問題意識を追加したりもしています。なので、次の世代も理念として普遍的な部分以外は、必要に応じて伝わりやすい形に変更したり、新しいことを足してもいいというか、時代に合わせて受け継いでほしいと思います。
それから、特別に何かを変えてほしいことはないですが、自然と変化していくものだと思うので、“その時”が来たら怖がらずに、伝統を守りながらも、新しいものを受け入れていってほしいです。
※記事初出時、一部記述に誤りがございました。お詫びして訂正いたします。
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イベント情報
コミックマーケット105
- 開催日
- 2024年12月29日(日)~30日(月)
- サークル
- 10:30~16:00 (サークル入場時間 8:00~9:30(予定))
- 企業ブース
- 10:30~17:00 (1日目のみ・最終日は16:00)
- 場所
- 東京ビッグサイト・全ホール
関連リンク
連載
2024年12月29日(日)・30(月)の2日間にわたって、東京ビッグサイトの東・西・南展示棟(サークル・企業ブース)で開催される“冬コミ”こと「コミックマーケット105」(C105)を特集。
3件のコメント
匿名ハッコウくん(ID:11855)
なるほどね。
あと、元々同人活動は女性文化の側面が強かった結果コミケも女性主導に。
それを目当てに会場にくる男性層も急増して、今のような状況になりました。
女性陣が戻ってくるような状況にしないとこれから先は厳しくなるのかなと。。。
(^_^;)
恩田雄多
KAI-YOUの恩田です。コメントありがとうございます。
ご指摘いただきました件、失礼いたしました。
誤解のないよう、先ほど記述を修正いたしました。
ちょっとしたご褒美……気になります!
僕もいつか有志として参加してみたいです。
匿名ハッコウくん(ID:11852)
1番最後の写真に設営日にあつまった「スタッフ」とありますが、それは一般参加者の有志の方達です。
机や椅子を並べた後にお疲れ様会でちょっとしたご褒美がありますが基本的に無償で参加してくれています。ありがたい事です。