コミケ搬入前日のしまや出版に潜入
12月29日10時30分。しまや出版の本社兼工場を訪ねると、印刷機や断裁機などが稼働する音が聞こえてくる。それでも、例年に比べると「コミケ前日としては落ち着いている方」だという。「うちの会社は割合的に女性向け同人誌も多いんです。今年は12月前半に開催された赤ブーさん主催の即売会に向けて多くの入稿がありました。ただコロナ禍で入場制限もしているので、コミケに向けた新刊という意味では、コロナ前よりは確実に少ないです」
年末年始に即売会が連続する2022年。そのためしまや出版では、赤ブーブー通信社主催イベントへの入稿締め切りを11月18日に設定。“業界最速”の締め切りとして注目を集めた。
それでも、「この本は昨日(28日)入稿されて、明日のコミケ初日に向けて、今日搬入するものですね」と、今まさに印刷・製本中の同人誌もある。
加えて、年明け大阪で開催される「COMIC CITY 大阪 123」用の同人誌も作業中だ。
「昔は夜中まで作業することもありましたけど、今は社員もきちんと休ませたいですし、それも踏まえて入稿の締め切りを設定しています。だからといって、少しでも遅れたら対応しないわけではなく、作家さんがつくった“宝物”を、できるだけ満足する形で世に出せるようにサポートしたいです」
搬入は積み込み時から始まっている
11時30分。同人誌の積み込みがスタート。すでにコミケ1日目分として仕分けされていたものを、車両3台に、順番に注意しながら積み込んでいく。順番とは、搬入する順番を意味する。ダンボールに貼られたラベルを確認しつつ、搬入時、どこのホールの、どのサークルから搬入するのが最も効率的かを考えながらの作業だ。 「サークルスペースは、まずは作家さんからいただいた情報を参照しています。全てのサークルさんの入稿が終了したら、最終的にコミケ公式のWebカタログに記載されたサークル番号と照らし合わせてチェックします。位置を間違えていると、搬入の際に混乱してしまいますので」
15時30分。昼の休憩を挟んで、8人体制で会場である東京ビッグサイトへ出発。首都高を使っておよそ30分程度で到着。指定された駐車場に入ると、搬入待ち車両の行列が目に飛び込んできた。 コミケといえば当日取材しかしたことがない筆者にとって、現地で見るその光景は新鮮。大量のトラックやバンの姿に圧倒されるも、小早川さんは「いつもより少ないですね」と余裕を見せる。
過去には搬入時間になっても車両が動かない状況も多かったという。今年は珍しく搬入時間が30分前倒しになったとアナウンスがあり、16時30分からスタートした。
コミケ搬入時の東京ビッグサイトの風景
印刷会社は、大小様々なトラックやバンで、東と西それぞれの展示棟に向かう。遠方からの搬入時は、複数の会社が大型トラックを使って輸送するケースもあるという。搬入がスタートすると、まずは直接会場に入れない大型トラックから荷物を下ろすフォークリフトが各ホールへ移動。その後に大型トラック、そしてサイズの小さな車両が続く。 16時45分頃、しまや出版もホール内にイン。筆者が同乗していたクルマは東ホールを担当。机が並べられた会場にクルマが直接入っていく姿は貴重だ。
到着後、東5ホールを拠点に、社員が手分けしながら各サークルスペースへ搬入。筆者も付いていくが、歩くスピードがめちゃくちゃ速い。
実は搬入の時間は2時間(通常は17時から19時)と決められていて、時間になるとホールは閉鎖。限られた時間内に撤収まで終える必要がある。 「普段はもっと早歩き」と小早川さんは笑うが、正直、十分速い。気を抜くと置いてかれそうになった。
搬入は、荷物を一通りサークルスペースに届けたあと、再度サークル番号と荷物の個数をチェックして回る。丁寧な仕事に感動している間に、1時間程度で終了した。
この記事どう思う?
関連リンク
連載
2022年12月30日(金)・31日(土)の2日間にわたって東京ビッグサイトの東・西・南展示棟(サークル・企業ブース)で開催される「コミックマーケット101」(C101)を特集。
0件のコメント