“This is にじさんじ”な祝祭空間「FANTASIA」レポ　成し遂げた夢の景色

スペシャルなライブならではのゴージャスセッション

満を持して登場した戌亥とこさんによって披露されたのは緑黄色社会の『Mela!』だ。 アコースティックギターと鍵盤の旋律が合わさり、夏の終わりにピッタリな爽やかなサウンドが鳴り響くが、ゆったりとステージを漂いながら届けられる歌声はパワフルそのもの。メラメラとたぎるフロアをさらに煽るように銀紙が降り注ぎ、乱反射する光がステージを眩しいほどに美しく彩る。 白雪巴さんが登場すると戌亥とこさんと2人で、takamattさんの『トキヲ・ファンカ』をパフォーマンス。和の調べにのせて緊張感のあるダンスセッションを繰り広げる2人の姿は、触れがたい神秘性を纏い、艶やかな歌声も合わさって目を離すことを許さないまでの迫力を放つ。 白雪巴さんに代わって今度は樋口楓さんが合流し、『虎視眈々』へ。 組む相手によって千変万化の表情を見せる戌亥とこさんのパフォーマンスも圧倒的だが、樋口楓さんも負けじとポニーテールを雄大に揺らしながらダイナミックなステージングを披露。スペシャルなライブならではの組み合わせの妙が光り、相乗的にクオリティを上げていく。 3曲連続で歌いきるも飄々としたいつもの調子をみせる戌亥とこさんだったが、そんな彼女のクールな表情を崩すほどのモンスターが乱入する。笹木咲さんと椎名唯華さん、さくゆいの2人だ。

登場するやいなや練習してきた感バリバリのショートコントを展開し、ボケっぱなしの2人と呆気にとられるケルベロスという不思議な空間を完成させる。困ったらキメポーズというお決まりの流れも生み出し、3人によるゆるいやりとりがなんとなく板についてきたところで惜しまれる中にぎやかMCパートは終了。

ドラマチックな演出も醍醐味

MCの和気あいあいとした雰囲気そのままになだれ込んだのはさくゆいの2人による、Junkyさんの人気曲『キミペディア』。跳ねるリズムにキュートなハーモニーを重ねて、先ほど以上の以心伝心っぷりを見せつけると、これからも続いていく2人の歴史に最新ページを書き足した。 スタンドマイクが召喚されると、続いてはさくゆいに月ノ美兎さんと樋口楓さんの「楓と美兎」も合流した4人で、アニメ『さよなら絶望先生』の楽曲『強引niマイYeah～』。 ライブ映え必至のモダンサウンドに合わせて鮮烈に生きる各々の生き様を叫ぶように歌い上げる姿はなんとも痛快。誰に阻まれようと我が道を行く強固な姿勢を知らしめて、満員のフロアから画面の向こうまで圧倒してみせた。

つづく椎名唯華さんのソロによる、MAISONdesの『ヨワネハキ』カバーでは、無為に生きてしまう日々のささやかな憂鬱を淡々と歌いあげる。相方との楽しそうな掛け合いに、先輩たちとのマジのパフォーマンスときてから、らしさ全開のゆるく優しいポップサウンドでオーディエンスの情緒をかき回す。 真意を見極めようと注がれる熱心線を躱すようにゆらゆらとステージを彷徨い、一人残らず化かしたところでバトンタッチ。

ステージ両袖から向かい合ってゆっくり登場した月ノ美兎さんと樋口楓さんが披露したのは、ぬゆりさんによる『命ばっかり』カバー。ジャジーな調べに乗せられた心を搔きむしるような切ないリリックを、繊細なハーモニーで歌い上げる様は儚くも美しい。

楽曲の奥へ広がる物語を想起させるように、間奏に差し込まれた月ノ美兎さんの背中を見つめる樋口楓さんのバックショットがなんとも印象的で、細部にまでこだわって完成されたステージが見る者それぞれの心に焼き付く。 次は白雪巴さんが、eillさんによる『ここで息をして』をソロで披露。長い手足を活かしたセクシーな舞いと妖艶なる歌声で楽曲の世界観を思うがままに表現する様はまさに圧巻で、事前のツイートで「ご飯が喉を通らない」と言っていたほどの緊張を微塵も感じさせない。 スケールの大きなパフォーマンスを繰り広げながらも、彼女の放つメッセージはいつだって一人一人のあなたへと向けられている。大舞台になってなお変わらぬ自らの哲学を貫き通した彼女に割れんばかりの拍手が送られた。