6月いっぱいでバーチャルライバーグループ・にじさんじからの卒業、そして引退を発表していた鈴原るるさんが、6月30日に最後の配信を行いました。
主な内容は、披露できていなかった衣装・イラストの紹介、約2年間の活動の振り返り、そして動画アーカイブの期間やTwitterアカウントの扱いなどのお知らせでした。【最後の配信】にじさんじ所属ッ!鈴原るるでしたッ!!
配信のなかで、卒業・引退の理由が本人の口から語られていました。いわく「果たし状なるものを頂きまして、魔界警察にお頼みしまして、対処いたしました」とのことでした。
鈴原さんは3月頃にも、同様の理由で一時的に活動をセーブ。これを解決して同月末から再び配信を行っていたものの、以降も同じような件が──それも「直接的」な出来事が──発生していたそうで、この対処のたびに活動を休止してリスナーに心配をかけるのは自分として心苦しいと考えたことが、卒業と引退を決めた一番の理由だと話しています(ほかにもいくつか理由はあったそうです)。
なお鈴原さんはリスナーを嫌いになったわけではないと話していて、その点は言葉を尽くして強調していました。
執筆:ゆうき 編集:新見直
YouTuber事務所・UUUMも2020年6月に同様の対策チームを設置しているほか、“スマートタグ”による個人情報の漏洩を警戒し対策を講じているバーチャルライバー事務所・LiverCityの例もあります。
近年、表舞台に立つ人間に寄せられる悪意に対して、マネジメント側が所属タレントを守ろうとする姿勢は様々な形で示されています。 前述したように、3月頃にも何らかの攻撃を受けて一時的に活動をセーブしていた鈴原さんが早く復帰できたのは、少なくともANYCOLOR社のそうした対策もあったからではないかと思われます。
しかし、今回については卒業・引退に至ってしまいました。
「ファンに心配をかけたくなかった」。他の選択肢もあったが、自分の身に降りかかったこと以上に、「みなさんに心配をかけてしまうことに、私自身が耐えられせんでした」と、ファンへの配慮から来る精神的な葛藤だったと語っています。
発端は寄せられた悪意でしたが、その結果として「申し訳ない気持ちが重なりに重なってしまった」と心理的なプレッシャーについて、丁寧に言葉を選びながら語っています。
繰り返しになりますが、だから「対策しても意味がない」ということでは決してなく、悪意が本人の目に届く機会を減らし、クリエイターの盾になる役割が、現代ではこれまで以上に運営側に期待されています。
その上で、精神的負担に晒され続けるクリエイター本人への精神的なケア、メンタルヘルス(文字通り「心の健康」)を支えるためのサポートも、多くの分野で求められるようになっています。
ことクリエイター、俳優、スポーツ選手など、好奇の目や誹謗中傷にさらされることも多い職業に就く人々には、一層のケアが必要とされていて、そのため各業界で対策とその試行錯誤が行われています。
例えば講談社は、漫画家とその関係者に向けたオンライン医療相談サービスを5月に開始。
およそ1000人の漫画家とその家族、アシスタントなどが対象になるこのサービスは、新型コロナウイルス感染拡大の長期化に伴う様々な医療・健康上の疑問や不安を、チャットやテレビ電話でいつでも専門医に相談できます。 例えばスポーツ界。弱みを見せることがそのまま対戦相手に付け込まれる隙を晒すことに繋がるという特性上、この世界では長らくメンタルヘルスの問題が重視されていませんでした。
しかし近年、スポーツ選手が一般人よりよほど心を病みやすいという研究結果が広がりつつあり、米NBAや国際プロサッカー選手会が対策に乗り出しているほか、各チームや選手個人がメンタルヘルス専門のスタッフを雇う例も増えています。
これはいつの時代も心を病むアーティストが絶えなかった音楽の世界も同様です。自身が抱えているメンタルヘルスの問題を積極的に発信しているビリー・アイリッシュさんやジャスティン・ビーバーさんを筆頭に、変化の兆しが感じられます。Billie Eilish Teases Upcoming Documentary, Working with Finneas & More! | Grammys
目立つところの話にはなりますが、体調不良などを訴えて活動を休止するVTuberの例は後を絶ちませんし、何が理由なのかもよくわからないまま表舞台から姿を消すケースも散見されます。
鈴原るるさん本人は卒業の配信で、はっきりと新しい道をいくこと、そして自分自身にとって卒業が「ポジティブ」な選択であることも説明されていました。
その上で、本人の口から語られた卒業理由について、スポーツ誌なども「魔界警察にお頼みしまして」と語った部分を取り上げるほどの波紋を広げていることもまた事実としてあります。
急成長したネットカルチャーとしてのVTuberシーンが、持続可能性を持ち得るかどうかは、運営もファンもメディアも、一つ一つの事例を受け止め、それぞれの立場から考えて一歩ずつ改善していくことができるかどうかにかかっているのではないでしょうか。
主な内容は、披露できていなかった衣装・イラストの紹介、約2年間の活動の振り返り、そして動画アーカイブの期間やTwitterアカウントの扱いなどのお知らせでした。
鈴原さんは3月頃にも、同様の理由で一時的に活動をセーブ。これを解決して同月末から再び配信を行っていたものの、以降も同じような件が──それも「直接的」な出来事が──発生していたそうで、この対処のたびに活動を休止してリスナーに心配をかけるのは自分として心苦しいと考えたことが、卒業と引退を決めた一番の理由だと話しています(ほかにもいくつか理由はあったそうです)。
なお鈴原さんはリスナーを嫌いになったわけではないと話していて、その点は言葉を尽くして強調していました。
執筆:ゆうき 編集:新見直
ANYCOLORやUUUMは対策チームを立ち上げ
にじさんじを運営するANYCOLOR社は、2020年9月に「攻撃的行為」「誹謗中傷行為」などへの対策チームを設置しており、ファンにも協力を呼びかけています。YouTuber事務所・UUUMも2020年6月に同様の対策チームを設置しているほか、“スマートタグ”による個人情報の漏洩を警戒し対策を講じているバーチャルライバー事務所・LiverCityの例もあります。
近年、表舞台に立つ人間に寄せられる悪意に対して、マネジメント側が所属タレントを守ろうとする姿勢は様々な形で示されています。 前述したように、3月頃にも何らかの攻撃を受けて一時的に活動をセーブしていた鈴原さんが早く復帰できたのは、少なくともANYCOLOR社のそうした対策もあったからではないかと思われます。
しかし、今回については卒業・引退に至ってしまいました。
好奇の目にさらされがちだからこそ一層のケアを
鈴原さんが言った卒業・引退の一番の理由は、寄せられる「果たし状」なるものについて、「一つ一つちゃんと対処すればよい話なのですが、そのたびに休止しては何もちゃんと話せなくて中途半端になってしまうことが、どうしても私の中で嫌だった」というものでした。「ファンに心配をかけたくなかった」。他の選択肢もあったが、自分の身に降りかかったこと以上に、「みなさんに心配をかけてしまうことに、私自身が耐えられせんでした」と、ファンへの配慮から来る精神的な葛藤だったと語っています。
発端は寄せられた悪意でしたが、その結果として「申し訳ない気持ちが重なりに重なってしまった」と心理的なプレッシャーについて、丁寧に言葉を選びながら語っています。
そもそも、どんなに対策を講じても、ファンあるいはアンチ、そのどちらでもない匿名の誰かから寄せられる、誹謗中傷やもっと直接的な「果たし状」を含めた一定数の悪意を、完全に防ぐ手立ては原理的に存在しません。みんなああああ!
— 鈴原るる🎨 (@lulu_suzuhara) June 30, 2021
今まで本当に本当にありがとうございました。
ライバーとして至らない点も多々ありましたが、にじさんじに入れて本当に良かった、受け入れてくれてありがとう。
本当に一瞬一瞬がみんなとの大切な時間でした。
全Vtuberとリスナーさんがこれからもたくさんの笑顔で溢れますように…。
繰り返しになりますが、だから「対策しても意味がない」ということでは決してなく、悪意が本人の目に届く機会を減らし、クリエイターの盾になる役割が、現代ではこれまで以上に運営側に期待されています。
その上で、精神的負担に晒され続けるクリエイター本人への精神的なケア、メンタルヘルス(文字通り「心の健康」)を支えるためのサポートも、多くの分野で求められるようになっています。
米NBA、講談社…世界で注目されるメンタルヘルスケア
メンタルヘルスを含む心身のケアについては、コロナ禍がもたらした社会全体を分断させる事態を機に改めて注目されている分野です。ことクリエイター、俳優、スポーツ選手など、好奇の目や誹謗中傷にさらされることも多い職業に就く人々には、一層のケアが必要とされていて、そのため各業界で対策とその試行錯誤が行われています。
例えば講談社は、漫画家とその関係者に向けたオンライン医療相談サービスを5月に開始。
およそ1000人の漫画家とその家族、アシスタントなどが対象になるこのサービスは、新型コロナウイルス感染拡大の長期化に伴う様々な医療・健康上の疑問や不安を、チャットやテレビ電話でいつでも専門医に相談できます。 例えばスポーツ界。弱みを見せることがそのまま対戦相手に付け込まれる隙を晒すことに繋がるという特性上、この世界では長らくメンタルヘルスの問題が重視されていませんでした。
しかし近年、スポーツ選手が一般人よりよほど心を病みやすいという研究結果が広がりつつあり、米NBAや国際プロサッカー選手会が対策に乗り出しているほか、各チームや選手個人がメンタルヘルス専門のスタッフを雇う例も増えています。
— NaomiOsaka大坂なおみ (@naomiosaka) May 31, 2021「スポーツ選手は強くあるべし」という固定概念からスポーツ選手自身が抜け出そうとする意思は、テニス選手の大坂なおみさんがメンタルの問題を告白した勇気に競技の枠を超えて多くのアスリートが連帯を示したことからもうかがえます。
これはいつの時代も心を病むアーティストが絶えなかった音楽の世界も同様です。自身が抱えているメンタルヘルスの問題を積極的に発信しているビリー・アイリッシュさんやジャスティン・ビーバーさんを筆頭に、変化の兆しが感じられます。
急成長を遂げるVTuberシーンの痛み
バーチャルYouTuber(VTuber)が勃興して数年。急成長を遂げてきたカルチャーだけに、そのスピード感がもたらすクリエイターへの影響力の大きさは、最近至るところで感じます。目立つところの話にはなりますが、体調不良などを訴えて活動を休止するVTuberの例は後を絶ちませんし、何が理由なのかもよくわからないまま表舞台から姿を消すケースも散見されます。
鈴原るるさん本人は卒業の配信で、はっきりと新しい道をいくこと、そして自分自身にとって卒業が「ポジティブ」な選択であることも説明されていました。
その上で、本人の口から語られた卒業理由について、スポーツ誌なども「魔界警察にお頼みしまして」と語った部分を取り上げるほどの波紋を広げていることもまた事実としてあります。
急成長したネットカルチャーとしてのVTuberシーンが、持続可能性を持ち得るかどうかは、運営もファンもメディアも、一つ一つの事例を受け止め、それぞれの立場から考えて一歩ずつ改善していくことができるかどうかにかかっているのではないでしょうか。
何ができるのかを考え続ける
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1件のコメント
匿名ハッコウくん(ID:4580)
vtuberネットリンチに加担する記事を掲載して取り下げもしなかったのにどの口が・・・