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連載 | #3 KAI-YOU編集部ネタバレ全開座談会

『進撃の巨人』完結記念ガチ考察座談会【加筆・ネタバレ全開】

『進撃の巨人』完結記念ガチ考察座談会【加筆・ネタバレ全開】

POPなポイントを3行で

  • 『進撃の巨人』最終巻34巻発売記念
  • ネタバレ全開の座談会を決行
  • マジでガチで議論したら12,000文字になった
2021年4月、堂々の完結を迎えた諫山創さんによる漫画『進撃の巨人』。

人間を捕食する天敵・巨人がいる世界で、“自由”に憧れる主人公・エレンの人生を描いた本作は、世界累計発行部数が1億部を超え社会現象を巻き起こしました。

多くの人が気づいているように、『進撃の巨人』は単なるパニックホラーものではなく、民族間紛争や人間の愛憎、自由や尊厳といったテーマについて真正面から挑んだとんでもない意欲作でした。

6月9日(水)にコミックス最終巻の発売を控えるいま、傑作『進撃の巨人』を読んで黙っていられなくなったKAI-YOUスタッフたちが、ガチで議論しまくる座談会を開催しました。
【別マガ】『進撃の巨人』第34巻 コミックス発売告知!【PV】
※『進撃の巨人』のネタバレのみで構成されています。是非、本編を最終回まで読んでから読み進めてください

目次

『進撃の巨人』座談会登場人物

うぎこ
KAI-YOU広報担当。『シン・エヴァ』座談会に引き続き今回も進行をつとめ、『進撃の巨人』について語りたくてたまらないスタッフたちの手綱を握る。アニメ『進撃の巨人』season 1放映当時、アニクラで流れる「紅蓮の弓矢」を聞いてぶち上がっていた。好きなキャラクターはアニとユミル。
わいがちゃんよねや
KAI-YOUの社長。1986年生まれ。ネットでもリアルでも、論争をしかけがちな血気盛んな論客。『進撃の巨人』は原作しか読んでいなかったが、ふとアニメを見てそのクオリティの高さに驚いていた。本作をエレンとアルミンの物語と捉えている。しかし、今回の座談会を通じて変化が……?
新見直
「KAI-YOU Premium」編集長/株式会社カイユウCOO。1987年生まれ。わりと原作厨なところがあり『進撃の巨人』でも原作しか触れずアニメはほとんど未見。『進撃の巨人』の座談会だって言ってるのに、隙あらば『ゲーム・オブ・スローンズ』の話をしてくる。
五十嵐康太
ライター。1993年生まれ。外国人向けツアーガイドから転身した経歴を持つため、海外から見たポップカルチャーへの知見を持つ。『別冊少年マガジン』創刊時からの『進撃の巨人』読者。
都築陵佑
KAI-YOU編集部のニューカマーにしてラッパー。1996年生まれ。『進撃の巨人』には強い思い入れがある。本企画の発起人であり、座談会開催のために単行本派の上司たちに「マガポケ」で単話課金させた張本人。

どのキャラが好き? KAI-YOUの愉快な仲間たち

というわけで、今回は『進撃の巨人』について話し合いたいテーマをそれぞれ持ち寄ってもらいました。

まずは、よねさん(=わいがちゃんよねや)さんのテーマから……

いや、ちょっと待って。

はい?

その前にみんなの好きなキャラを確認させてほしいんだよね。

なるほど。議論が始まるとガチになりすぎるから、まずは一番楽しい好きなキャラの話で盛り上がりましょうという提案ですね。

全然そういうことじゃなくて、どのキャラに着目するかによってこの作品はだいぶ見え方が違ってくるので、好きなキャラを聞けば『進撃の巨人』をどれくらい読み込んでるのかがわかるんですよね

へえ……(なんだコイツ)。

じゃあ改めて、みなさんの好きなキャラは?

僕は、エレンアルミンです。むしろその他は“風景”だと思ってます

まだ本題に入ってもいないのに炎上しそう……。

それくらいガチで(座談会に)臨んでます!

僕は、やっぱりアルミンと、あとライナーですね。

ライナーもいい。ライナーは悪くない選択だよ

そんな上から(笑)。あんた一体『進撃』の何なんだよ!

いや、よねさんが言いたいこと、僕にはわかります。なぜなら、エレンとアルミンを選んだよねさんと、ライナーとアルミンを選んだ僕とは好対照なんですよね。ある意味で、ライナーはエレンと鏡写しの存在だから。

大事なものを守るためにとことんまでやりきろうとしたエレンではなくて、覚悟と罪悪感の板挟みで苛まれ続けたライナーの視点の方が気になります。

なるほど…(初手から話が長いなコイツら)では若い世代、ニューカマーの五十嵐さんは?

僕もライナーですね。やっぱり精神に支障をきたして、「俺もあいつらと同じだった」という辺りぐらいから、人間臭くて好き。あと、気持ち悪いところも。僕も匂いフェチなので、手紙をもらったら匂い嗅ぐとかのディテールもたまらないです……。

なるほど……? まともな参加者はおらんのかこの座談会には。最後は、座談会の発起人である都築くん。大学を卒業したばかりのホープですね。

僕は王道のエレン一択ですね!

おお!

僕は彼に共感していたというか、エレンを自分にトレースして生きてきたところがあります。

なにか嫌なことがあるたびに、シャワーを浴びながら鏡の前で「戦え、戦え」って自分に言い聞かせて立ち直ってきました

一番ヤベエやつじゃねえか!!!

いつから『進撃』を“ヤバい漫画”だと思っていた?

はい。よねさんも満足したことでしょうから気を取り直して、よねさんのテーマ「『進撃の巨人』がヤバい漫画だと思った瞬間はいつ?」からいきましょう。

この“ヤバい漫画”について、どう定義していましたか?

まず前提として、『進撃の巨人』ってめちゃくちゃ人気じゃないですか。でも意外と「最初の方は読んでたけど…」っていう脱落勢も多いんですよね。

なぜかというと、この作品は話が進むにつれて漫画としてのジャンルや質が明らかに変わってくるんですよ。最初はよくあるパニックホラーだったのに、ミステリーになったり政治の話になったり、哲学的な内容になったり、かなり読者を振り回す。

だからそれぞれの「この漫画はヤバい!」と思った瞬間に、ある種、その人にとってのジャンルや見どころが分かりやすく出るのでは、と思って提案させてもらいました。

みなさんどうですか?

僕はわりと初期から読んでいたんだけど、連載開始当時は「よくあるパニックものかな」って思ってたんですよね。わけのわからない、人知を超えた存在と殺し合う作品は数え切れないほどあって。

よく『テラフォーマーズ』とかとも比較されてましたよね。

そうそう。明らかに物語の構造としてはパニックものだったんだけど、「この漫画は何か違うな」って思わせるものがあった。

最初、その“何か”はあの絵柄にあると思ってたんですよ。下手、とも違う、人を不安にさせる不安定さで、それがいつ打ち切りになるともしれない不穏さにも通じているというか(笑)。

ネットでもよく言われているところですよね。

あのギリギリ感……!

よく言われる話ですが、やっぱりそれが最初期にはむしろ謎の緊張感を与えていたとは思います。

もちろん、ここまでの作品になるとは全く想像もしていなかったんですけどずっと「変な漫画だな」って思っていました。だから、明確にいつ「ヤバい!」と思ったとかは言えないんですけど、なんとなく予感がありました。

最初からいきなり答えをはぐらかしてきますね。でも確かに、漫画ってアニメになると絵が崩れることの方が多いけど、『進撃』はアニメになって絵が綺麗になるっていう珍しいパターンでしたよね。そういうアニメが増えたのも『進撃』のおかげかもしれない。

15分で追いつける!アニメ『進撃の巨人』ダイジェスト

僕が一番ヤバいなと思ったのは、ライナーとベルトルトが巨人だったと暴露するシーンですね(第42話「戦士」)。

何がヤバいって、他の漫画だったら大ゴマのメインとして使うところを、わりとあっさり背景の雑談くらいの感じで正体を明かしていて。「このシーン、そんな感じでやるの?」っていうのが衝撃的でした。

あそこいいよね。

当時、「壁を壊した超大型巨人と鎧の巨人の正体」って、最大の謎だったじゃないですか。その正体が読者の視点からほぼ確定したタイミングで、あっさりと明かしたのがすごい。

その「種明かし」がこの漫画のピークかとみんな思ってたら、全くそうじゃないっていう。

そこから二転三転どころじゃなかったですもんね、『進撃の巨人』。

ジャンルすら変わってくるからね。だからこそ、それに着いていけなかった人も多いと思う。話が進むにつれて複雑で難解になっていくし。

確かに。いわゆる「王政編」で、壁の中での殺し合いが始まってからドロップアウトしたって声も聞きます。

その章でのケニーの台詞が、僕が“ヤバい漫画”だと思った瞬間ですね。

リヴァイの師匠のケニーは、死に際に「みんな何かに酔っ払ってねぇと やってらんなかったんだな… みんな…何かの奴隷だった…」という台詞を残すんです(第69話「友人」)。

「少年漫画でこんなこと言っちゃうんだ」って衝撃で、心の傷として残ってますね。

それな!!

『進撃の巨人』も、従来の少年漫画と同様に「自由になりたい」という夢を描いてきた作品だと思うんです。

だからこそ、残酷な世界に抗おうとする登場人物たちの台詞や生き様に勇気付けられた。

それに対して、メタな視点から「酔っ払っているだけ」だと言い切っちゃうのはすごいな、と。

わかる。

これは「KAI-YOU Premium」で漫画評論を連載してくれている岩永亮祐さんとも話したことなんですけど、僕がヤバいと思った瞬間は、いわゆる「マーレ編」でエレンとライナーが地下室で再開するシーンです(第100話「宣戦布告」)。

ヴィリーが世界各国の重役たちをマーレの収容区に集めて、「パラディ島のエルディア人を共通の敵にしよう」と演説する最中、エレンが巨人化してその場を壊滅させる。

それ以降、エレンが完全に悪役というか、もう倫理なんて1mmすらもなくて、「ああ、これもうヤバい漫画なんだな」ってわからされました。

25巻でついに再会したエレンとライナー/画像はAmazonより

岩永亮祐さんのコラムもそれに関する話でしたよね。悪魔としてのエレンみたいな。

そうね。エレンは本当に魅力あるキャラクターで、彼は「他人から自由を奪われるくらいなら、他人の自由を躊躇なく奪う」という思想を持っているんです。ある意味、初期からエレンをヤバい奴だと警戒してたジャンの勘は正しかった……。

たしかに(笑)。

エレンと対比されているライナーは、心のどこかでパラディ島の人々を虐殺してしまったことに重い罪悪感を背負っているんですけど、エレンは最終回までそれをまったく感じさせない。

主人公にそれやらせるのすごいなと。まったく世間とか社会の空気を読んでいないなって思ったんです。現代の価値観と真逆だから。

都築くんが挙げてくれたシーンも近いんだけど、タブーをちゃんとやる、描く。SNSで発言したら炎上しそうなこと、でも誰かは心の中で思っていそうな残酷な薄暗い感情や思想を、この漫画は容赦なくやってくれるなと。

たしかに。それは、物語(フィクション)の役割として正しいような気がしますね。

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