長い時間が空いてしまったが、前回は庵野秀明監督の『シン・仮面ライダー』について、その特撮的な意匠や表現を深堀り。日本特撮史の流れも踏まえながら語らった。 これまで様々な漫画やアニメ、映画など、様々なコンテンツに対して喧々諤々の議論(座談会)を繰り広げてきたが、なんとKAI-YOU.net編集長の恩田雄多の参加はゼロ回!
どうやら彼はアニメや漫画、ゲームなどのポップカルチャーよりもフットサルのが好きらしい……編集長を問い詰めたところ「『葬送のフリーレン』なら何か語れるかもしれないっス……」と力弱い声が聞こえた。KAI-YOUフットサル運営始めて1年ちょっと。コートの予約に人集め、お金の回収は面倒だけど、いろんな人と会えるし運動は楽しい(書いてある通り)。
— Yuta Onda (@ondarion) February 29, 2024
訪れるかもしれない氷河期に向けて学びの多い記事でした。
フットサルチームを15年以上運営してきた話|tkq @tkq12 #note https://t.co/H1nWz2Q9dR
そんなわけで「KAI-YOU編集部ネタバレ全開座談会」の記念すべき10回目は、大人気ファンタジーコミック『葬送のフリーレン』についてお送りします。
この記事は『葬送のフリーレン』最新12巻までのネタバレや感想が含まれます。
目次
『葬送のフリーレン』どのキャラクターに注目してる?
本当に久しぶりの編集部座談会! 今日のテーマは『葬送のフリーレン』です。
少年漫画らしからぬ本格ハイファンタジー作品ということで、様々な方面から話題になっていますね。今日もKAI-YOU編集部の語りたがりたちに集ってもらいました!
よろしくお願いします!
ということで、自己紹介をかねて好きなキャラクターなどをまずは教えてほしいです。
私は、実はこの座談会のために読み始めて、1分前に全巻読み終わりました!
好きなキャラはヒンメルで、ヒンメルとフリーレンの関係性がめっちゃ良いなと(´;ω;`)
久々に男女カップリングで燃え/萌えました。 こういう関係性のカップリングが、BLや百合の作品でも好きです。次の方どうぞ!
今日は編集長の恩田さんがめっちゃやる気があるそうで……編集長自ら座談会を企画するなんてめずらしいなと……それで参加させていただきました。KAI-YOUのちゃんよねです。
ちょっと待ってくださいよ(苦笑)!
好きなキャラは、黄金郷のマハトです。まだアニメに登場してないキャラクターですが。あとフリーレンも好きです。この2人かなって思ってます。
マハトはアニメになったら人気なりそうだよね。この記事は原作12巻までのネタバレを含みます。じゃあ次は新見さんどうぞ。
KAI-YOUの新見と申します。よろしくお願いします。好きなキャラクター──パッとは思いつかなかったんだけど、断頭台のアウラが自分としては印象に残ってて。
かわいいよね。
アウラは海外でもミームになったし、めちゃくちゃ象徴的な台詞もあったりして。「ヒンメルはもういないじゃない」っていう。
あれね~!
あのフリーレンをぶち切れさせたセリフ。あれは『葬送のフリーレン』というテーマを理解する上でも重要な台詞なので、物語上の役割を果たすキャラとしてアウラを好きになりました。詳しくはのちほど解説します。
わかります。それでは次、小林くんどうぞ。
編集部の小林です。最近あんま活動してないですが、「漫画コンシェルジュ」という肩書きを持っております。お願いします。1番好きなキャラは南の勇者です。
ほぼ登場してないけどエピソードだけが一人歩きしてるキャラ!
いやいやいや、かっこいいじゃないですか、南の勇者。ひとりで七崩賢3人に加えて、魔王の側近のシュラハトを倒してるんですよ!
しかも、彼は自分が死ぬことを知っていながらわかっていながら、その戦いに赴いているのもカッコいい。さらにさらに、フリーレンと七崩賢たちだけが彼の想いを知っているというのもロマンがありますよね!
では最後に本座談会の主催者である私が──KAI-YOU.net編集長の恩田です。よろしくお願いします。
主催でありつつも『葬送のフリーレン』については、アニメ化されてからガッと読みはじめたって感じなんです。
それぞれのメンバーがどういうところに注目してるのかっていうのを楽しみに、話をしていければなと思います。僕が好きなキャラは、ヒンメルです。
だよね。いやヒンメル、めっちゃいいキャラじゃないですか?!
そう。もう死んでいるのに、本編にめちゃくちゃ影響するっていうか──ある種、半分はヒンメルの物語というか。
まあなんとなく一番良い奴っぽくは見えるかな。
わい、ヒンメルをはじめとする過去のエピソード全般がちょっと邪魔だなって思ってしまいます(汗)
ええ? それ『葬送のフリーレン』自体を否定することになりませんか……? 花畑でフリーレンに指輪したところで死ぬほど泣きました。
みんなアニメ以後でハマったって感じなの?
漫画コンシェルジュたる僕は、当然昔から知ってました。
(ヒッ…古参イキリオタク怖い……)連載がはじまった当初から話題ではあったと思うんですが、もともと小林くんは『葬送のフリーレン』に対してどんな印象だったの?
僕はマジで「オタクの好きそうな漫画だな」って評価で、今でもそう思ってます。
連載が始まったのは2020年なんですけど、その直後からめちゃめちゃ漫画賞を獲りまくってるんですよ。
それこそ漫画大賞も、連載開始の翌年には獲っています。「このマンガがすごい!」とか「次にくるマンガ大賞」にも上位にランクインしていた。
ただ、漫画業界で話題であった一方で、『ブルーロック』や『東京卍リベンジャーズ』、『鬼滅の刃』や『チェンソーマン』ほど「読んでる」って人がいたかというと、実はそうでもなかった印象です。ただコアな漫画好きは当然みんな読んでましたね。
俺もアニメ前から読んでた派ではあるんだけど、ここで言う「オタクが好きそうな漫画」ってどういうニュアンスなの?
好きなキャラクターに僕は南の勇者を挙げたんですけど──南の勇者の存在とか、ゾルトラーク(人を殺す魔法)の描写だったり──なんというかオタク心をくすぐるんですよ。
漫画オタクの間でも、そのファンタジー的な設定の緻密さや妙で話題になっていた印象です。
最近はキャラクターの「格」に注目する人が増えている印象がありまして。クヴァールのゾルトラークが「一般攻撃魔法」として普及するほど後世に影響を与えていたり。そういう「こいつって思ってたよりもすごかったんだ」みたいな描写や、「確かにこいつならこれくらいのことはやってのけるよな」という、キャラクターの凄さを再認識させるような描写は特に漫画好きの間ではよりウケやすくなっていると思います。
とはいえ、それは漫画好きにおいての話なので……こんなに世間的に流行るとは思っていなくて驚いています。
チルいテンションでしっとりと話が進んでいく『葬送のフリーレン』は、僕にとっては面白いけど、良い意味でも悪い意味でも「サンデーっぽい漫画」だなとずっと思っていました……。
なるほど。わいがKAI-YOU社内で1番最初に『葬送のフリーレン』を取り上げたいって言ったんですけど……それこそ2020年頃です。
KAI-YOU Premiumで漫画批評の連載があって、そのネタを探す中でいろいろ調査したんです。それで、Amazonレビューが1000件を超えてる漫画って、実はほとんどジャンプ作品なんです。あるいは『進撃の巨人』とか。
その中で『葬送のフリーレン』はサンデー作品なのに1000件以上のレビューを連発していたんです。その点で、当時から明確にサンデー/マガジン漫画の中でも、頭抜けてた存在になっていました。それで気になっていました。
『葬送のフリーレン』はなぜ流行ったのか──少年漫画らしからぬ構造について
なるほどね。私も実際読んでみて、掲載誌が『サンデー』だから世間的に取り上げられるようになるまで、遅くなったのかなとは思った。あと少女漫画的じゃないですか、かなり。
男女の話の部分が、少女漫画好きな層にも刺さるんじゃないかなって思った。もっと早くに話題になるべき作品だと思ったけど、掲載誌が『サンデー』だったから、小林くんみたいなハードコアな漫画好きしか読んでなかったんだろうなっていう。
なるほど。掲載誌問題。
僕のような漫画オタクしか知らなかったと。
こんなにいい恋愛も描く漫画なのに!
とはいえ、少年誌の中では『サンデー』が一番あっているとは思いますよ。『犬夜叉』『名探偵コナン』『マギ』みたいな女性人気高い作品も多いですし、『結界師』みたいなしっとりした作品もウケてきた。
やっぱり!『葬送のフリーレン』は『サンデー』のエッセンスを色濃く受け継いでいる作品なんですよね!!!😤
(コワ……無視しとこ)俺は恋愛ものとして全く読んでない>< いやまあそういう見方もできるけど、たしかに。
私は壮大な愛の物語として読んでた。私はずっとヒンメルとフリーレンに着目してね。12巻のラストで感激して号泣しました。
ヒンメルの空想の中で、フリーレンと結婚式を挙げるっていうシーン。うわー!!ってなりましたよ。
俺も連載開始からずっと読んでるけど、恋愛要素に限らずみんなに受けるだろうなっていうか、オタクに限らずいろんな人が好きな話だと思ってました。
そうですよね! ファンタジー苦手なぼくがハマるくらいですから。
俺はそこに異を呈したいんだけど……
え!?
いや、みんなに刺さるっていう点には同意なんですけど、言うてかなり特殊な漫画だと思うます。
っていうのも、いわゆる少年漫画と全く違う構造になってると思う。
普遍性はあるけど、たしかに少年漫画の文法ではないですね。
いわゆる「流行ってる少年漫画」じゃなくない?って思うよ。この話は後で話そうかと思います……。
少年漫画としてのセオリーやロジックからは外れてるけど、それこそ少女漫画的な観点から見ると、そんなにおかしくないというか。
アニメをきっかけに世間的に流行したのは間違いないとして、最近、流行った漫画ってほとんどジャンプ作品だったじゃないですか。
そうですね。マガジンの『東京卍リベンジャーズ』『ブルーロック』は異例でしたが。その2作も含めて、最近のヒット作にはハイテンションな漫画が多かった。
そんな中で『葬送のフリーレン』が流行ったってのは、恋愛漫画が好きな層の一定の需要もあったんだなって思ったんです。久々にこういうしっとりした漫画がドーンとキテる感じがします。
そうだね。まあXで茶化すようなミームが流行ってるっていうのも、悪趣味というかオタク的ではあるけれど^^;
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その時々のエンタメ業界に現れた覇権コンテンツについて編集部が議論する連載。コンテンツ自体はもちろん、そのコンテンツが出てきた背景や同時代性、消費のされかたにも目を向け、ネタバレ全開で思ったことをぶつけ合っていきます。
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