社内に「MTG部」を擁する我々KAI-YOUは、これまでも度々、90パーセントくらい趣味で『MTG』に関連にした取材・執筆を行なってきました。 そしてなんと、ついに販売元であるウィザーズ・オブ・ザ・コースト社(WotC)から新カードのプレビュー発表の機会をいただくことができたのです。
WotCからの突然の吉報によって社内は大混乱に。メディア運営開始から苦節8年、ついに公式からMTGメディアとして認められたのか……と感慨もひとしおです。
多分、この記事を読みにきた世界中のプレイヤー諸氏は「そんな御託はどうでもいいから新カードをはよ見せろ!」という血気盛んな方が多いでしょう。
落ち着いてください。私も落ち着きます。
そんなわけでKAI-YOU.netが託されたのはこの2枚。
《原初の命令/Primal Command》と《立腹/Infuriate》です。 うおおおおおおおお!!!!!
「おい! 期待させておいて両方再録じゃねーか!」とお思いの皆様、落ち着いてください。というより、さすがにこのカードデザイン(特殊枠)を観れば普段は思慮深いプレイヤーの皆様はすでに納得して下さっているはず。
そう、これは『ストリクスヘイヴン:魔法学院』の目玉であるミスティカルアーカイブ・カード(グローバル版)なのですから!
時を越える呪文書庫「ミスティカルアーカイブ」。強力な古代魔法たちが、装いを新たに現代に蘇っています。
今回、急なプレビュー依頼に戸惑いながらも、KAI-YOU MTG部のみんなで『ストリクスヘイヴン:魔法学院』の解説を兼ねた座談会も行なってみました。
『ストリクスヘイヴン:魔法学院』座談会・登場人物
わいがちゃんよねや
KAI-YOUの社長。MTG歴5年+小中学生のときも少しやってた。世界最高峰の大会・プロツアーに憧れて周囲に「わいはカードゲームで食ってく」と豪語して度々会社を休んでまで遠征したりもするが、その実態は情を捨てきれないただのエンジョイ勢。でも負けると激しい鬱状態になる。好きな色は青赤(イゼット)、好きなカードは《弧光のフェニックス/Arclight Phoenix》《秘密を掘り下げる者/Delver of Secrets》。嫌いなカードは《王冠泥棒、オーコ/Oko, Thief of Crowns》と《自然の怒りのタイタン、ウーロ/Uro, Titan of Nature's Wrath》。古見湖
KAI-YOUの最有力MTGプレイヤー/KAI-YOU Videosディレクター。学生時より某国内最大規模のMTGショップにて動画スタッフとして勤務し、MTGに関する動画をつくりまくってきた。しかしKAI-YOUに所属してからはアンダーグラウンドなストリートカルチャーの撮影・取材ばかりになってしまい、グレはじめてきている。現在はタトゥーへの興味が尽きない。好きな色は青黒(ディミーア)。好きなカードは《暗黒の儀式/Dark Ritual》《リッチの熟達/Lich's Mastery》。わたはる
KAI-YOUのデザイナー/ディレクター。開発やクリエイティブ周りのことを一通り取り仕切る。なんでも手を出す性格と社内のMTG熱に影響され、最近『MTGアリーナ(MTGA)』をはじめた。しかし『MTGA』には初心者の鬼門「カラーチャレンジ」があり、突破できてないという噂。とりあえず手を出す反面、やるやる詐欺も多いので、本当にプレイしているのかもわからない。好きな色は赤、好きなカードは「これから探して行きたい」。小林
KAI-YOUの編集者/Webディレクター見習い。新卒世代なのに、社内の誰よりもオールド・オタクであることを誇示する。漫画やアニメはもちろんだが、特にボードゲームやTRPG、マーダーミステリーといった非電源ゲームに精通し、その一環でMTGも「教養」として通ってきている。尊敬するオタクとして平野耕太を挙げ、曰く「彼をロールモデルにしている」。好きな色は緑、好きなカードは《辺境地の巨人/Outland Colossus》《野生の魂、アシャヤ / Ashaya, Soul of the Wild》。『ストリクスヘイヴン:魔法学院』座談会・本編
みんな! 事件発生や!
どうしました!?(就業時間終わってるんだが)
ウィザーズ・オブ・ザ・コーストから『ストリクスヘイヴン:魔法学院』のカードプレビューの依頼が届いたんだよ!
ウィザーズ……? 失礼ながら存じ上げないです。
ええ!まじすか。『MTG』の開発会社ですよ! 世界企業ですよ! これはヤバい。このヤバさが伝わって欲しい。
たしか『デュエマ』とかもやってますよね。
『MTG』は知ってます。最近『MTGA』をやり始めました。まだ4時間くらいしかできてないけど……。
僕も非電源ゲーマーの端くれとして、もちろん『MTGA』はインスコしてプレイしてます。『MTGA』はオンラインゲームだけど。
古代魔法としての《原初の命令/Primal Command》
これは事件ですよ。めっちゃヤバい。世界中の『MTG』ファンがKAI-YOUの記事に飛んでくるよこれ。人生でいつかは新カードのプレビューやってみたかったんです。早速やっていきましょプレビュー。
まずはこれです。《原初の命令/Primal Command》。
お~~(わからん)。
これ、『ストリクスヘイヴン:魔法学院』の特殊枠のカードですよね。
特殊枠ってなんすか?
最近の『MTG』に多い傾向なんだけど、通常のカードのデザインと違った特殊な枠のカードが目玉として収録されるんです。今回のデザインは「ミスティカルアーカイブ・カード」と呼ぶらしい!
たしかにふつうのカードより荘厳というか派手というか。かっこいい感じがする。
今回の新セットが「魔法の大学」を舞台にしてるんです。で、この特殊枠の「ミスティカルアーカイブ」は、古(いにしえ)のすげえ強い呪文が大学の図書館に所蔵されていた! みたいなテーマで開発されたらしいです。つまり、マジでヤバい呪文ってことです。
マジでヤバい呪文……! 実際これはどんくらい強いんでしょうか?
《原初の命令/Primal Command》はいわゆる「命令サイクル」だよね。これがスタンダードリーガルだった当時は『MTG』から離れてたから、実際のところは正直わからんっす……!
2007年に発売された『ローウィン』初収録の「命令サイクル」ですね。青の命令《謎めいた命令/Cryptic Command》が一番有名です。僕もそのときはやってないです。
《謎めいた命令》は今でも使われ続けているマジで強いカード! 「ミスティカルアーカイブ」は一部を除いてヒストリック(『MTGA』で遊べるレギュレーション)でも使えるんだもんね。ぱっと見だと、《原初の命令》はふつうにスゥルタイのランプ/コントロールとかに入っても悪くないような性能をしていると思う。
(スゥルタイ・・・?)初心者の目線からすると、ライフポイントを7点ゲインするって相当大きいような気が。『MTG』の初期ライフは20点だから、かなりの割合を回復できるような。
たしかに回復量は大きいけど、『MTG』って結局はライフゲインしても勝てないから、基本的には「回復する」っていうテキスト自体が弱く評価されがち。盤面を固められてたら7点回復しても追いつかないというか。
でも「クリーチャーでないパーマネントをデッキに戻す」っていうのは汎用性が高いし良いですね。脅威になるようなパーマネントを疑似的に除去しつつ、同時にライフゲインできると考えれば、テンポ的には相当良いです。やっぱり妨害とか重いカードがたくさん入ったヘビーなデッキで活躍してくれそう。4つの選択式の効果があるんですけど、どれも意地悪めな効果ですし。
まだ『MTGA』をプレイして日が浅いせいか、能力の強さは全然わかんないけど、絵はめっちゃ綺麗だなあと思いました!
美術を齧らせていただいている僕の目線からすると、このカードのイラストレーターさんはめっちゃ絵が上手いです。Olena Richardsさんって言うんですけど、2019年から『MTG』のイラストに参加したばかりで。プレイヤー/コレクターとして印象深いところでいうと「Secret Lair Drop Series」の《苦花/Bitterblossom》も描かれています。
あのイラストと同じ人か! あまりのかっこよさに「Secret Lair Drop Series」の《苦花/Bitterblossom》は4セット購入しました。
もちろん僕も4セット買いました。深夜で時間限定販売なんで大変だった……。あの《苦花/Bitterblossom》は本当に素晴らしいイラスト。Olena Richardsさんは特殊枠のカードイラストに中心的に採用されていますね。『エルドレインの王権』に収録された《夜の死神/Reaper of Night》のショーケース版が初イラストです。
なるほど、イラストのかっこよさでもカードを買ったりするんですね~。たしかに紙で欲しくなるデザインだ。
ミノタウロスじゃない《立腹/Infuriate》
続いてはこちら。《立腹/Infuriate》。
お~~。これは能力がシンプルだから、どういう用途のカードなのか僕でもわかる。
これは私でもわかる。クリーチャーを強くしてくれるカード! さっきのも良いけど、これもイラストがめちゃくちゃ良い。パキっとしてる。
超攻撃的なカードですね。序盤にクリーチャーで速攻で殴り倒すデッキ向け。
あんまりトーナメントで使う人は少ないけど、結構基本的なカード。僕はイゼットが好きなんで果敢デッキとかに入れてました。
(イゼット・・・?)イラストの話しましょう。
今調べた感じなんですけど、このイラストを担当されたBenjamin Eeさんは、『MTG』初参加っぽいです。
初参加! 新規のイラストレーターさんもいるんだ。
Benjamin Eeさんの過去作品をTwitterとかWebサイトで拝見したんですけど、実は写実的なイラストを描かれている。今回は枠のデザインに合わせて、あえてパキっとポップな作風に合わせてる感じがしますね。他のカードを手がけたときにどんなテイストになるか、楽しみっす。
『MTG』らしからぬというか、かなりグラフィカルなイラストだよね。
いままでの《立腹》って、ミノタウロスが暴れてたり激怒してるイメージだったんですけど、今回のはオシャレな感じがします。
《立腹》=ミノタウロス という定説に終止符が打たれたと。
『ストリクスヘイヴン:魔法学院』の世界観のよもやま話
さっきもちょろっと話しましたけど、新セット『ストリクスヘイヴン:魔法学院』の舞台は魔法の大学なんです。いわゆる●リー●ッター的な。5つあるそれぞれの学校には、熱心で真面目な研究者が集まったり、魔法は最高の自己表現だ!って熱狂してる人たちがいたり、自然の神秘や原理を研究をしたり。
めちゃくちゃ細かい設定がありそうですね。
学校の特徴ごとに色分けされてる感じだね。僕は青赤カラーの学校に入りたいです。「プリズマリ」という学校らしい。
あ~~好きな色があると『MTG』の世界観と連動して没入できるのか。
『MTG』は新セットごとに新しい舞台──というか新しい次元に毎回来訪するんですよ。そこで新しい物語が紡がれていく。しかも世界観の設定とかがめちゃくちゃ細かくて楽しい。ちょっと調べるだけでワクワクします。
新しいストーリーが展開されるといっても、実は裏であの話とあの話が繋がってる! みたいな伏線を考える感じで。というか、『MTG』は25年以上続く長大な物語になっていて、凄まじい情報量の一大サーガになってます。主人公チームがほぼ全滅したりとかもあったけど、続いてる。主人公は死んだけど、裏のボスはまだ暗躍してて……とか。
TCGよくわかんないよ~って人も骨太な物語を持ったファンタジーって考えると興味を持ってもらえるかも。
『MTGA』もっと真面目にやりたくなりました。というか、紙でもやりたくなりました。
とりあえず今日紹介させてもらったカードは手に入れたいすね~。
『Magic: The Gathering』の世界をもっと知る
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その時々のエンタメ業界に現れた覇権コンテンツについて編集部が議論する連載。コンテンツ自体はもちろん、そのコンテンツが出てきた背景や同時代性、消費のされかたにも目を向け、ネタバレ全開で思ったことをぶつけ合っていきます。
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