【調査】カードゲームの9割は5年以内にサ終する──30年に及ぶTCG史を分析する

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Jey.P.
【調査】カードゲームの9割は5年以内にサ終する──30年に及ぶTCG史を分析する
【調査】カードゲームの9割は5年以内にサ終する──30年に及ぶTCG史を分析する

世はまさに大TCG時代! ゲーム業界に不況の波が押し寄せるなか、2023年度のカードゲーム・トレーディングカードゲーム(TCGの国内売上は、希望小売価格ベースで2774億円(日本玩具協会調べ)であり、2020年度の1222億円から、わずか2年で倍増。TCG業界は現在、空前のバブル景気を迎えている。

2023年の家庭用ゲームソフトの市場規模は3865億円で、これと比較しても、TCGはゲーム産業のなかで大きな存在と言えるだろう。

さて、今まさにホットなTCGの世界だが、その歴史はすでに30年以上の積み重ねがあることをご存じだろうか?

ポケモンカードゲーム』『遊☆戯☆王オフィシャルカードゲーム』『デュエル・マスターズ』といった大ヒットタイトルや、元祖TCG『Magic: The Gathering』、近年のヒット作『ONE PIECEカードゲーム』などの名前を聞いたことがある人は多いかもしれない。しかし、30年以上続くTCGの歴史の中で生まれた推定1000以上のタイトルを熟知している人は稀だろう。

さまざまなタイトルに目を向けると、TCGの「歴史の流れ」が見えてくる。歴史を振り返れば、現代の状況を正確に理解し、未来を予測できるかもしれない。

筆者はゲームデザイナーとしてTCGの開発・運営に携わる一方で、古今東西のTCGを観察・分析してきた。この記事では、TCGの歴史やトレンドを概観し、TCGの未来に起こり得る変化について述べていく。

また、KAI-YOU Premiumでは、より専門的な話に興味のある方向けに、本記事に登場したタイトルのルールを横断的に分析し、ゲームデザインの方針を類型化する。さらに、TCG全体に共通する基本構造についても論じる。

これらの記事が、読者の皆さんにとって大TCG時代の羅針盤となれば幸いだ。


TCGの誕生を告げた『Magic: The Gathering』は何が画期的だったのか?

トレーディングカードゲーム(TCG)というジャンルが誕生したのは、1993年のことだ。数学者でゲームデザイナーのリチャード・ガーフィールドは、ロールプレイングゲーム(紙やサイコロを使って遊ぶアナログゲーム。国内ではデジタルゲームと区別してTRPGとも呼ばれる)の出版を行っていた新興企業Wizards of the Coastに、『RoboRally』というゲームを提案していた。

Wizards of the Coastは、持ち運びやすく短時間で遊べるゲームを求めたため、ガーフィールドはベースボールカードのコレクション性とカードゲームを組み合わせたゲームを提案。このゲームが『Magic: The Gathering』として発売されることになる。

『Magic: The Gathering』(1993)

『Magic: The Gathering』は1993年の発売直後、ロールプレイングゲームのコミュニティに熱狂的に迎えられ、瞬く間に大ヒットした。

日本でも、『Magic: The Gathering』にいち早く反応したのは、ロールプレイングゲームの関連企業やコミュニティだ。アナログゲームの開発・販売を手がけていたホビージャパンは、雑誌『RPGマガジン』で1994年から『Magic: The Gathering』を特集し、黎明期の普及に貢献。1996年4月からは販売代理店として、日本語版の取り扱いを開始した。

『Magic: The Gathering』が画期的だったのは、「プレイヤーが試合に使うデッキを、各自準備すること」だ。『Baseball Card Game』(1951)など、公式の「遊び方」が定められたトレーディングカード、つまりゲームでもあるトレーディングカードは、『Magic: The Gathering』以前にも存在していた。しかし、これらの多くは、両プレイヤーが持ち寄ったカードを共有の山札にする形式で、各自が専用の山札(デッキ)を事前に準備するゲームは少なかった。

『Magic: The Gathering』のカードは、それまでのトレーディングカードと同様に、ランダムなカードが封入されたパックとして販売されている。プレイヤーは、自分の所有するカードの中から、試合で使いたいカードを一定のルールに沿って組み合わせる。このカードの組み合わせを「デッキ」と呼び、試合では、あらかじめ準備した自分のデッキを専用の山札として用いる。

プレイヤーがデッキを事前に準備するルールは、ゲームに大きな影響をもたらした。まず、プレイヤーは試合で有利になるために、強力なカードを求めるようになる。従来のカードゲームと異なり、自分のカードを使うのは自分だけのため、強いカードを持っていれば対戦相手より優位に立てる。

さらに、カードの組み合わせを自由に編成できるため、さまざまなカードの中から最良の組み合わせを探す楽しみも加わった。

一方、あらゆる状況で強力なカードがあれば、その有無で勝敗が決まりやすくなり、デッキ構築や試合の楽しみが損なわれる恐れがある。そのため、開発者はカード間の強さの差を抑えつつ、試合状況や組み合わせによって有効性が変化するゲームを設計しなければならない。ルールやカードは複雑になり、どのカードが強力なのか判別しにくくなった。

「プレイヤーがデッキをあらかじめ構築する」ルールの導入によって、トレーディングカードは高度な戦略や技術が要求される複雑なゲームへと変化したのだ。

また、「プレイヤーが自分の所有するカードの中から、デッキを事前に構築する」ことは、「カードの所有」が試合に影響すること、すなわち、交換・収集などの試合外の行為が試合と結びつくことを意味する。交換(トレーディング)とゲームが結びついた新たなジャンル「トレーディングカードゲーム(TCG)」の誕生である。

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