ところで、小説は紙派? 電子派?──それとも入浴剤派ですか? 今回紹介するのは、すべての読書好きに勧めたい「文学入浴剤」です。
読書時は、できるだけリラックスできる場で真正面から向かい合いたいものです。お風呂場は最たる例ですが、本が湿気る、タブレットが壊れそうと危惧している方も多いかと。
「文学入浴剤」は湯船に浸かり、文学作品を掌で堪能するための本です。最高の読書タイムが訪れること間違いなし。
今回、そんな「文学入浴剤」を手がけた今村昼寝さんに話を聞きました。
「文学入浴剤」気になる販売、読める作品は?
まず気になるのが、これは販売しているものなのか、誰の何の作品を読めるのかという点。残念ながら、「文学入浴剤」は販売していないとのこと。しかし、予想以上の反響から販売も考えているそうです。
「まず、今回の発信でみなさまからいただいたフィードバックを元に改善をしたいと思います」と前向きなコメントをくれた今村昼寝さん。
未来圏から吹いて来る、透明な風を感じますね。
現段階で「文学入浴剤」にピックアップされた文学作品は『触覚の世界』『永遠の感覚』。どちらも明治から昭和にかけて活躍した詩人/彫刻家・高村光太郎さんの作品です。
高村光太郎さんを選んだ理由は、今村昼寝さん趣味だそうで、「私がお風呂で読みたかったものをチョイスしました。」とのことです。
両手で水を掬うように大切に本と向き合える「文学入浴剤」
静かな場所で一人で本と向き合うことが好きだという制作者・今村昼寝さん。制作のきっかけは、「いろんな意味で一番一人になれるお風呂で、両手で水を掬うように大切に本と向き合えたらどんな体験になるのか」と興味を抱いたからだと言います。
コメントからすでに、文学への並々ならぬ想いを感じます。加えて、この作品に至るまでのアイデアに、電子書籍が関係したことも教えてくれました。
今村昼寝さんはコロナ禍により電子書籍を利用するようになり、本の表紙の横で他人のレビューと星の数が大きく主張していることに違和感を感じたそうです。
ついには、試し読みで面白そうだと思っても星の数が3つだと「面白そうだけどなんで星3つなんだろう…」「星3つの理由がどこかにあるよね…」と作品を素直に楽しめなくなり、寂しさを憶えるように。
今村昼寝さんは、どうやったら他人のレビューや評価に左右されずに、一対一で本と向きあえるか、新しい本との出会い方を模索するようになりました。
そして、それらのアイデアを形にして誕生したのが「文学入浴剤」です。
こだわりは「作者の息遣いを感じられる」ような形
お風呂で掌におさまる文学──まるで魔法のような「文学入浴剤」ですが、どのように制作したのか気になるところ。やはり簡単にできた作品ではなく、「アイデアを絵に描き考えをまとめることからはじめた」と今村昼寝さんは言います。
その後の開発段階では、排水溝に流れなかったり、肌に触れると痛かったりと壁が立ちふさがります。素材や大きさの検討、どの作品のどの部分を引用するかなど、実験しながらこだわりを持って試行錯誤を重ねることに。
こうして辿り着いた結果が、文字の印刷にOHPフィルムという素材を使い、高村光太郎さんの作品を引用した「文学入浴剤」です。 実はこの「文学入浴剤」ですが、水中で文字だけが浮いてるように見えますが、お湯に溶けるわけではなく使用後も物として残ります。
この理由について「作者の息遣いを感じられる、ある程度まとまった文章と向き合えた方が私は嬉しいと感じるので、文章の形は保ちたくこのような形にしています」と語ってくれました。
みなさまの暖かいご感想、大変嬉しくて励みになります。元々は自分や本好きの友人のために作ったものですが、有難いことに使ってみたいという声をいただいておりますので、販売も考えています。
— 今村昼寝 (@nanchakuriku02) June 30, 2021
こちらのアカウントで引き続き発信をしていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします🙏
文学をいろんな角度から・今村昼寝
文学と入浴剤という意外すぎる組み合わせで、素敵な作品を生み出した今村昼寝さん。このほかにも、ゆっくり現れたり、消えたりする書き出しを眺める「雨降りと文学」というサイトや、小説の一文を一輪挿しに挿したり花と一緒に飾ったりすることで、文を「うつくしむ」ことができる「生け文(いけふみ)」など、既存の文学作品を新たな角度から堪能できる作品を世に放っています。
ゆっくり現れたり消えたりする書き出しを眺める「雨降りと文学」というサイトを作りました。
— 今村昼寝 (@nanchakuriku02) June 27, 2021
気になる書き出しがあれば、クリックすると飛んだ先で続きを読むことができます。https://t.co/CjYsB789eq pic.twitter.com/HI2ZSO7ICz
小説の一文を一輪挿しに挿したり、花と一緒に飾ることができる「生け文(いけふみ)」を制作しています。読むでも眺めるでも無いその中間の行為で、文を「うつくしむ」ためのものです。 pic.twitter.com/MozLwypX7f
— 今村昼寝 (@nanchakuriku02) July 1, 2021
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